矢口の隣に座っていたのは岡田唯という人です。

さてM-1なんだけど、面白かったです。結果はNON STYLE優勝ですが、決勝の3組はどれも素晴らしく面白く、審査員が言うほどに圧勝ではなかったとは思う。ナイツが無票というのはちょっと気の毒。オードリーは充分すぎるほどにかき回してくれた。そしてノンスタの見事な技術に裏打ちされた笑いの連打を効かせた漫才が審査員の眼鏡にもしっかり適ったというところでしょう。但しオードリーの1本目のネタが最終決戦で披露されていたら圧勝だった気はするけど。あとナイツとオードリーに対する紳助の評価がやけに低いのは気になるが、途中で「好みの問題」と表明してしまっているので仕方のないこと。


上位3組の結果が順当であり妥当であったわけで、ここらへんに感動はあるけども驚きはなかった。今回一番の衝撃はオードリーの敗者復活でもノンスタの優勝でもなく、やはりキングコングがノンスタに引導を渡されたことだったように思う。


はっきり言うが自分はキングコングという漫才師そのものはそれほど好きではない。しかしネタは面白いと思っているし、いわゆる「メジャーな笑い」というものを追究しようとする姿勢はもっと褒められてもいいと思う。好きなことだけをやってキングオブコントの頂点にまで上り詰めたバッファロー吾郎と対局に位置するものだ。どちらがいい悪いではなく、バッファロー吾郎の姿勢が褒められるのであれば、キングコングだって褒められなければおかしいというだけの話。


今回キングコングが披露した「ヒーローインタビュー」というネタは結構有名なネタだろう。自分も以前に何度か見たことのあるネタであり、きっちり笑えるネタだと思う。キングコングが勝負ネタとして披露したことは別に不思議でもなんでもない。


しかし結果は惨敗と言ってもいいほどのもの。あまり演者に厳しいコメントを言わない中田カウスが「ネタの選択を失敗したのでは」という事を言っていたが、自分はそうは思わない。なぜならキングコングは「NON STYLEの後に漫才を披露する」という時点で8割がた何のネタを披露したところでこうなることになっただろうからだ。1割の確率でノンスタが失敗していたら分からなかったし、もう1割の確率でキングコングが物凄い確変を起こしたら回避できただろうけども、ノンスタが非常に完成度の高い漫才を披露したことでキングコングがああなったのは「仕方のないこと」だと片付けるより他ない。


色々な場所で指摘されていることだが、キングコングが目指そうとした到達点を体現したのがNON STYLEであり、それを先に披露された以上何を出しても評価は辛くなる。完成されたものと完成途上のもの(キングコング自身のネタが途上という意味ではない)ではそりゃ誰が見たって後者にアラが見える。


その証拠にオール巨人が「もっと(ボケの)一つ一つの間を詰めてテンポよくしてほしかった」という旨のコメントを述べていた。これって要するに先ほどノンスタが披露した漫才が脳裏に残っていてそれを基準に述べているからであり、決して昨年キングコングが決勝1回目に披露した服屋のネタと比較しての発言ではない。服屋のネタと比較したらボケのテンポにそうそう差はないはずだ。


キングコングにとって昨年の敗退も相当に悔しかったとは思う。サンドウィッチマンに大外から一気に差されて勝ちを逃したというのもショックがデカイだろうが、しかし一方で自分たちの漫才そのものが否定されたわけではなかった。だが今回はNON STYLEという自分たちと同じスタイルで一歩も二歩も上を行く漫才に完膚なきまでに叩きのめされたことになる。この精神的ダメージは相当に大きいはずだ。しかも全国放送でその姿を分かりやすい形で晒してしまった。


おそらくアンチキングコングは今回の放送を見て「キングコングつまらん」と鬼の首を取ったようにはしゃいでいるのでしょうが、自分は「いやいや、そこまで酷くはない。ただクジ運が最高に悪かっただけだ」とフォローしたい気持ちでいっぱいだ。あそこまで力の差を見せ付けられたらフォローしたくなるってのが人情だろ。


というわけでノンスタは優勝しようがしまいが、キングコングに引導を渡したというだけで今大会で最も世間にインパクトを与えたと言って差し支えないでしょう。優勝はオマケみたいなもんです。おめでとうございました。