オバマが当選すればバカ騒ぎ

世間の人は小浜市の人たちをバカにしてるんだろうが、個人的には小浜市の人たちの気持ちが分からんではない、という話。


アメリカ大統領選挙予備選挙民主党の候補争いをしているヒラリーとオバマ。どちらが民主党の候補に選ばれるかは最後まで分からないというデッドヒートを繰り広げているらしいが、オバマ候補と名前が同じというだけの福井県小浜市が「オバマ氏を勝手に応援する会」を発足させ、何かにつけて大盛り上がりしている様子がニュースで度々放送されている。


特に先日オバマ氏から直筆のサインとともに「応援してくれてありがちょんまげ」(意訳)という手紙が届いたもんだから小浜市は狂喜乱舞。調子に乗ったマスコミも「これでオバマ氏公認」とか言い始めるし、アメリカからは極東の小都市が本来何の関係もないのに勝手に応援している様を滑稽に思ったのか取材にまでくる始末。オバマ氏がハワイのホノルル生まれということで、フラダンスを踊る女性たちを「オバマガールズ」と名付けているのには日本国民なら失笑せずにはいられない。


小浜市民がみな盛り上がっているかのような報道をしているが、実際そんなことはあるわけがなく一部の人たちが盛り上がっているんだろう。マトモな(と書いたらやっぱり失礼なんだろうが)小浜市民はいい迷惑だろう。実際自分が小浜市民なら住民票を移動させることを考えるだろうし。


マスコミは「アホだなあこいつら」というスタンスで取り上げているのは明白であるし、またこのニュースを見る人たちも「日本は平和だなあ」と明らかに見下したスタンスだろう。こんなのニュースで取り上げるな、という意見であればマスコミを批判出来るし、そもそもこんなバカなことやるなよという意見であれば小浜市の人たちを批判できる。いずれにせよこのニュースは格好の批判対象であり、批判しておけば安全な物件である。


しかし自分は小浜市の人たちの気持ちが分からんではないのである。この現象は「勢いで言ってみたものの、なんだか後には引けない」という典型ではないだろうか。


マスコミの報道を見ると、「オバマ氏を勝手に応援する会」の人たちがさも真剣にオバマ氏を応援しているように見えるが、絶対にそんなことはないと思う。絶対最初は会を発足させたうちの一人が冗談で「ここ小浜市だから、いっちょオバマ氏でも応援してみるか(笑)」と言ったのだ。そのニュアンスは間違いなく「(笑)」であり、誰も真剣にオバマ氏を応援する気なんかない。


でもって「オバマ氏を勝手に応援する会」なんて名前をつけて、ちょっとでも町おこしになれば儲けもの、という安直な考えに安直に乗っかったのがマスコミで、しかも結構頻繁に報道され、ついにはオバマ氏陣営から直筆サイン入りの手紙まで来てしまった日には、いくら冗談だったとはいえさすがにもう後には引けないというところだろう。


そもそも冗談であったものが、いざ初めてみると、これがなかなか本気になってしまうということは珍しくないのではないだろうか。実は、自分にとっての小川麻琴がこれに当たる。


このサイトを長いこと読んでくださっている方はご存知だろうが、当方かつてはモーヲタであり(現在はヲタというほどの熱量も持ち合わせておらず、「ただのハロプロに詳しい人」に降格しました)、中でも元メンバーの小川麻琴を推していた。正直なところ人気があったメンバーではない。顔もアイドルとしてはそれほど可愛いほうではない。そして顔も自分の好みではなかったりする。


ではなぜそんな小川を推すようになったかといえば、友人宅でたまたま見ていた娘。のDVDのジャケットに映っていた小川の顔があまりにブサイクで、友人(当時石川推し)と大笑いしながら「この小川の顔関脇みたいじゃねえか」と話していた。横綱大関ほど貫禄があるわけでもないブサイク。はっきりいって貶し言葉である。調子に乗った自分は「俺今日から小川のファンになるわ」と完全に勢いだけでそう言い放ったのだった。


しかし完全に勢いだけで言い放った言葉だったとはいえ、なんか一旦宣言してしまうとそれからなぜか小川のことが気になりだし始め、いつのまにか自分は本当に小川麻琴のファンになってしまったのだった。別に誰に強制されていたわけでもないのに、自発的にそうなった。そんな発言友人ですら気にしていなかったのに、なぜか引っ込みがつかなくなってしまったのである。


「そんな理由で?」とお思いかもしれないが、きっかけなんてものはそんなものである。以降自分はさほど好みでもない顔のアイドルをずっと応援し続ける。写真集も「自分が買わねば誰が買う」という勢いでもって発売された2冊は今も手元にある。発端は冗談で、心の中ではずっと冗談と分かっていてもいつのまにか本気になってしまう。周囲からバカにされるのが分かっていても、引っ込みがつかない。きっと小浜市の人たちもこの気持ちに近いんじゃないだろうか。


冷静に考えればこれほどバカらしいこともない。自分の小川麻琴推しだって冷静に考えればバカバカしいことではあるが、だからといって推したことを後悔しているかといばそうではなく、むしろ良かったと思っている。だから小浜市で応援している人たちだって、どこか冷めた目で「ただ名前が同じだけでこんなに盛り上がるのはバカらしい」と思っているはずだ。けど、ここまで何か知らない間に盛り上がってしまったものを今更引っ込めるわけにもいかないし、どうせ盛り上がるならいけるところまで盛り上がってしまえという気持ちで盛り上がっているんだろう。そんな誰にでも、いや少なくとも自分には起こりうる心理状態を自分がどうしてバカに出来ようか。


だからといって小浜市の盛り上がりを全国ニュースで報道すべき話ではないと思うが、このニュースを見て「小浜市の人たちは平和だなあ」とバカにしている人は、自分の胸に手を当てて考えてみたほうがよい。あなたの過去を振り返ったとき、そして今、「勢いで言ったものの後には引けないこと」はなかっただろうか。案外多くの人が「ある」んじゃないだろうか。心当たりのある人は、バカにしたい気持ちをぐっとこらえてせいぜい苦笑いするに留めておくべきだ。