文脈の笑いはウソでいい

めちゃイケ」SPにて中居ナイナイ日本一周。


ナイナイと中居の縁は切っても切れないもので、それは今年の27時間テレビが証明する以前から、このめちゃイケでの日本一周が核となっているのはこの両者に少しでも興味のある人間ならば知らない話ではない。


めちゃイケにとってもこの日本一周の企画は大ネタであり、毎回爆笑させられること必至である。そもそも、両者とも忙しいスケジュールのなかで、これだけアホくさいことをやるのだから面白さが保証されていないとやる気にもならんだろうけど。


今年は前段としての27時間テレビがあったため、仕掛けの点で若干の変化球といえる。27時間テレビがあれだけの支持をされているからさほど問題ではないだろうが、同番組におけるサマージャンボバカ決定戦における濃いキャラ3人を今回起用してきたのは、たとえ地方を絡めた演出だとしてもそうそう出来ない手ではある。この3人の起用に関して賛否があるのだろうが、個人的感想を述べれば美人秘書松井さんがあまりに出来る人なので個人的には満足。


さて、勝手に27時間テレビの実況をした身としては、こちらの27時間テレビ打ち上げ日本一周も分析したくなるというもの。ただ、27時間テレビのように万全の体制をもって視聴していたわけでなく、ワイン飲みながら酔っ払い状態で見ていたので、見落とし部分その他事実誤認があるかもしれませんがそこはご勘弁いただきたい。


はじまりはナニワ金融道。導入部分は恒例行事として楽しめればいいのではないでしょうか。打ち上げ1次会&2次会場は北海道。お約束のオープンカーカラオケで始まり、マイナスの世界でビールをかけられる中居。この扱いはいつものことなので安心して見ていられる。でもってバリーだのガリー(明松D)だの中嶋APだの、めちゃイケでは御馴染みの顔ぶれ。それにしても中居、よく殴られる。


流鏑馬で中居の希望商品プラズマテレビが打ち抜かれるというオチ。もちろんプラズマテレビは偽物だけど、序盤からプラズマテレビが矢で打ち抜かれるというのは映像に力がある。もっともこれが大オチに繋がるわけだから、序盤の伏線としては十分。


3次会は広島。27時間テレビに出てきた「こち亀」の両津に似ている寺田のオッサン登場。お好み焼き屋でただ単に酒飲んで盛り上がるオッサン。ただ単に酔っ払いのオッサンのキャラが濃いだけで、めちゃイケの持つ面白さとはちょっと違う部分かもしれないけど、これも27時間の延長線上にあると捉えればアリか。ただ単に下ネタを連発するだけのオッサンが好きか嫌いか、によると思うが。自分は遠くで見ている分には面白いので好き。


ただ、それのせいで中居が吊られて焼きそばを焼くという「ザ・芸人」ともいえる部分をカットしてしまうのは惜しい。いくら後日放送があるといっても、ここ をカットするのは番組全体の流れから考えても勿体無い。いくら年明けの番宣のためとはいえ、本編とはさほど関係のないこの後のナニワ金融道の収録模様を流すのであれば、中居の焼きそばが見たかった気がする。


そしてこの「おそらく4次会」がカットされたせいで、当初伝えられていた「11次会」のクレジットはいつのまにか10次会になっていた。終盤の沖縄でテロップは「9次会」となっていたのに、岡村ははっきりと「10次会」と言っていたことからも窺える。別にカットしたぶんをお蔵入りにするわけではないのだから、4次会を詰める必要はなかったのではないか。*1


とりあえず幻の4次会は置いておき、大阪上陸。4次会としてナニワ金融道6の収録。ひとつのコントとしては見れなくもないけど、日本一周の流れでいけばあまりスムーズな流れとはいえず、余計。あとフォロー解説を入れておけば、池脇千鶴ASAYAN出身なのは本当だが、岡村の妹オーディションではなく、三井のリハウスのCMリハウスガールのオーディションの優勝者である。同じオーディションに加藤あいがいたのは有名な話だろう。


5次会は中居の「喫茶店」の一言から喫茶∞に連れて行かれ数取団。ゲストは関ジャニ∞(エイト)。これも正直余計だったなー。一応数取のていは取っているものの、実際に数取として放送されたのは2勝負。ただ単に関ジャニを挟んでみようという試みだけしか印象として残らず、しかもあまり面白くないという始末。日本一周の大前提は「中居が虐げられる」であって、その線は外れていないんだけど、関ジャニを持ち上げつつ、中居をさげつつ、なおかつ中居と関ジャニの関係性を考えてどうこう、という話にしたかったようだが、いまいち消化しきれず。ファンしか楽しめなかったのでは。*2


6次会はフロ。美人秘書こと松井さん登場。ここは彼女に尽きる。松井さんについては他所でも絶賛されているだろうから、ここでは「ダンス上手い」という感想を述べるにとどめておきます。


フロが崩れて、のオチは「生ダラ」からの引用だったのか。確かににしきのあきら*3がストライク取ったという記憶があるんだけど、引用として引っ張ってくるまでの文献なのだろうか、というのは少し疑問。誰しもが「ああ」というものではないだろう。むしろ大掛かりなセットの崩壊という点ではドリフに近いんじゃないかという気がしないでもない。*4ちなみに自分のフロ崩壊イメージは「THE鉄腕DASH」におけるDASH村のフロが城島の入浴中に崩壊したというのが記憶に新しい。あれはマジ崩壊だったし。*5


7次会で佐賀。佐賀牛を食う中居。今回唯一のマトモな中居接待。ひとつ分かったのは、いかに高級な牛であっても、肉塊を頬張る姿はあまり美味しそうには見えないということ。あれも狙いなんだろうか。


8次会は中居のサイコロ発言からスタンプ8に。放送では中居によって矢部と岡村がそれぞれハリセンでぶっ飛ばされる様子が放送されていた。あの時点ではサイコロに細工がされていなかったようなので(中居がサマージャンボバカの方に叩かれるときはサイコロに細工がしてあった。あの転がり方は錘がついてないとしない動き)全くサイコロの出目にまかせた収録を数本行い、そのうち矢部と岡村が叩かれた2本を立て続けに流したものと推測する。時間がどうこう、というくだりがあったけど、あれはおそらくウソではなく、なかなか岡村と矢部の出目がなかったために収録時間が押したのだろうという推測。


沖縄上陸で、9次会会場に移動途中でまたもオープンカーカラオケ大会。ただ、これは合成だと思う。これに限らず、北海道のも含め今まで全部合成だったのかもしれない。あまり注意深く見ていないから気づかなかっただけかもしれない。ただ、今回の沖縄に関して言えば間違いなく合成である。そもそも、運転している矢部のハンドルがあれだけ小刻みに動くのはおかしいですから。


この件に限らずプラズマテレビも含めて、今回のめちゃイケ日本一周はなんだか「ウソであることを隠そうとしていない」ような気がする。一応体裁だけは 整えているけども、いつものめちゃイケからすれば明らかに杜撰。これだけ杜撰だと、何か裏がありそうな気がしてならない。きっとこれはエンディングの「この番組はフィクションです」に関わる話なんだろう。後ほど書くけども、フィクションであることに関して肯定的であるというのだろうか。


9次会は沖縄のビーチ。七面鳥から松井のサインボール登場でAPだった中嶋がPに格上げ。これは単なる最後の伏線で、さほど意味があるわけではない。松井のサインボールも秘書の松井さんだというのも分かりやすい。


山上兄弟登場で、中居マジック。今回の自分のツボはまさしくここ。脱出マジック失敗。まあこのコントだけを切り取ってみても、それはそれで面白なのかもしれないが、自分はもっと深読みした点でのツボにはまった。


それは今年の正月、日テレでプリンセスアヤヤこと松浦亜弥が脱出マジックに失敗したとみせかけて無事脱出に成功している、というマジックをやった。しかし会場にいたモー娘。のメンバーはそのマジックに関して不慮の事故が起こったように見せかけた演出を本気で信じたようで、心配して涙を流すなど、おおよそ正月から悪趣味だとか言われ、モーヲタからさんざん叩かれたという事件があった。自分は割と擁護的に書いたのだけど、それでも悪趣味であるという批判は一理ある。


もっともこの「脱出失敗みせかけマジック」というのは日テレが昔からやっている手法であり*6、そのことを知っている人にとってはどうでもいいマジックなのである。よくよく考えると騙し前のマジックはちっともマジックじゃない内容だったりするし。


めちゃイケスタッフはこの「失敗マジック」がちゃんと笑いに繋がるかを試したのではないだろうか。マジックが失敗して煙ごうごうの中から灰まみれの中居が登場する。この事実だけを切り取れば、これもまさに古典とも言うべきドリフの手法なのである。*7特殊な新しいことをやっているわけではない。ただ、「マジックが失敗」という要因と「大掛かりな演出(爆発の炎)」という要因を用いたときにでも、同じように笑いが取れるということをただ単に証明したかっただけなのではないか。


それは裏を返せば「大掛かりなマジックが失敗したときに、脱出に失敗した人間が生命の危機にある状態になっているかもしれない」という、余計な心配をさせなくても、こうすればストレートに笑いに繋がるぞ、と言いたかったのではないか。中居の灰まみれメイクもわざとらしかったし。やはりここでも、「わざとらしい」ことは気にかかる。

2014追記:なんだか今も昔も偉そうに書いてますけど、今なら「正月の日テレの失敗、フジならこうやる」という意趣返しみたいなもんだろうと思えます。引田天功的演出が今はいろんな意味で通用しないから、もし脱出マジックで笑いを取るならこうするというフジなりの(模範)解答だったように思えます。


そして最後の10次会は中居の自宅。とはいうものの、間違いなく自宅ではない。指摘するまでもない。そもそも中居の自宅があんなにきれいな訳がない、という思い込みがそう断言させるだけで、あれが「中居の自宅ではない」と客観的に示す証拠はひとつもない。だけど本物の中居の家はロケに使いませんよね。だからこれも、ある意味で「わざとらしい」の一部に含まれているとしていいのではないか。


最後は極楽とんぼのケンカで締め。極楽のケンカがオチなのは過去の日本一周からのお決まりであり、これを面白いとか面白くないの次元で語るのはあまりに無意味。だって、極楽のケンカは前菜なわけで、このケンカが最終的に何をもたらすかが重要なのだから。今回でいえばニセプラズマテレビを壊す布石だったわけで。


北海道の2次会でプラズマテレビを壊したことがフリになっている。オチ方としては上手くまとまっているという感じだろうか。ただ自分が思うに、今回の本当の見せ所はプラズマテレビを壊すことそのものではなく、偽物のプラズマテレビを壊したあとに「この番組はフィクションです」という表記なのではないか。今回全編を、特に番組後半部分で特に感じた違和感はこの言葉に集約されていると言ってもいいだろう。


そう、全ては作られたフィクションなのだ。そもそも、中居が打ち上げと称した日本一周で虐げられていること、この前提から全てフィクションなのである。


我々視聴者はその前提を無意識的に当然に思っている。少なくとも自分はそう思って見ている。でないと、この番組での中居に対する扱いがあまりに不憫でバラエティとして見ることなんて出来ないからだ。無邪気に中居がいじめられているのを見て楽しむことができるほどバカではない。


そりゃ本物のプラズマテレビを壊したり、本物の中居の部屋で暴れたほうがいいのかもしれない。面白いのかもしれない。けども、それは結果的に「本物であるだけ」で、それ以上の話でも以下の話でもない。


プラズマテレビが壊されるという展開も、中居の自宅がメチャクチャにされるという展開も、それがどちらも「文脈として」その行為が行われるから面白いわけで、視聴者はただ単にプラズマテレビが壊されようと、本物の中居の自宅がメチャクチャにされようと、それだけでは面白くないのである。むしろ逆に、本物が壊されることによって嫌悪感を覚える人がいてもおかしくはない。ふつうに考えれば中居の近隣住民にとっては迷惑でしかない。


だけど、それが偽物だと分かるように作ってあるならば、その点に関しては誰も傷つかない。そこが重要なのではないか。めちゃイケにとって、プラズマテレビを壊すという行動も、中居の家で暴れ回るという行動も、笑いの文脈上にとって必要なものなだけで、実際にはそれが行われる必要がない。


めちゃイケは単に「物を破壊する」ことで笑わせようとしていないのだ。あくまで、中居を27時間テレビの打ち上げの接待としてナイナイが余計なことをする、という文脈で笑わせにかかっている。その文脈に適っていればいいわけで、それらを本当に実行するしないは関係がない。


もちろん、非常識だったり物を壊したりすることによって生まれる笑いはある。それを否定をするつもりはない。けども、今回めちゃイケはタブー破りの笑いを志向しているわけではなかろう。27時間本編を見ても、そして今回の放送を見てもわかるように、笑いの文脈を作り上げ、どうすれば笑いになるのかを練りに練って提供してくる。


だから、物を壊すという笑いは、記号として「モノが壊れ」ればいいわけで、本物を壊すことが笑いの必要条件ではない。あくまで今回の長丁場の笑いを構成する一部として機能すればいい。今回「プラズマテレビが壊される」というのは、北海道と中居の家の両方で同じ結末を迎えるという文脈において必要なだけ。それが記号として成立すれば十分だ。


同様に、中居の家が壊されることも「中居の家(とされている場所)が壊される」文脈が必要だったのだから、あれがセットであっても何も問題はない。さらに沖縄でのカラオケが合成なのも、法律に抵触する可能性があったり、時間の都合上撮影が困難だという事情なのだろう。これも、文脈として車でのカラオケというものが必要なだけだから、本物である必要もない。


ヤラセ肯定のように思われるかもしれないが、それも違う。そりゃ中居とナイナイは実際に日本を巡ってロケをしてはいるが、それが全てノンフィクションの世界での話ではなく、そもそも現実世界ではない「中居が虐げられる世界」での話だ。そこにいちいち「あれは偽物だ」「あれはヤラセだ」と言うことはナンセンスである。もっとも、それが分かっているからこそ、製作側もわざわざ「この番組はフィクションです」という丁寧な説明をしてくれているのだろう。言い訳半分、説明半分の「優しさ」と解釈したい。


最後の「フィクション」表記について、あなたはどう思っただろうか。がっかりしましたか?それとも大笑いしましたか?自分は視聴者全員がこのフィクション表記で笑える日が来ればいいなと思う。

*1:2014追記:今ならナレーションベースで「このくだりは後日完全版で!」とやるはず

*2:2014追記:今ならいざ知らず、当時の関ジャニ∞の扱いは関東(全国)では「誰だよ」レベルなのでこんな感想。

*3:2014追記:当時まだ錦野旦の芸名は平仮名表記

*4:2014追記:テレビ史として引用すべき文献だと今なら思う

*5:2014追記:確かにこの放送のちょっと前にDASH村の風呂が崩壊しました。これから数年後、あんなことになるとは当然つゆ知らず

*6:2014追記:日テレ、つうか引田天功マジックの基本だよなあ。ちょっと知ったかぶって書いているなこの頃は

*7:2014追記:だから天功ですね。ドリフじゃない