めちゃイケの流儀

「プロフェッショナル」のパロディ「めちゃイケの流儀」は、近年稀に見る快作だったと思います。


表面上は単なるパロディ。いや、ヘタすりゃ「パロディとして作っている」ということを理解せずに、めちゃイケが大真面目にパロディ風のものを真剣に作っていると思って見た人もいるのかもしれない。そこらへんは視聴者のバラエティ熟練度による。分かりやすくパロディに傾いたかと思えば急にマジメに戻ったり、なかなか番組としての真意が見えにくいつくりではあった。


多少バラエティ慣れしている人であれば、あくまで「プロフェッショナル」という枠組みを借りて岡村が無茶をするというパロディだとしっかり理解できたはずだ。「BPO放送倫理・番組向上機構)から入った苦情」→「岡村が検証」という流れを視聴者に覚えさせつつも、苦情を逆手に取った検証で笑いを取る。このパターンが表面上の「バラエティとしてのめちゃイケ」を成立させていた。


しかし一方で、めちゃイケはここに「本当の無茶」を挟む。見た人ならば一発で何のことか分かると思うが、それはかつての放送で「チョコレートまみれになるのはいかがなもんか」という苦情が来たのに対し、岡村が図らずも(というのは当然ウソだが)コンクリートまみれになってしまうというもの。


前述のように「検証」という形は取らなかったが(それは「安全性を検証」という観点だと、確実にチョコレートよりも危ないから)、苦情に思い切り反発するようなコンクリートまみれ。これ普通に考えても結構危険かつ苦情の来そうなパターンのやつです。しかしめちゃイケとしてはこういうパロディの中で、あくまでここにそういう無茶を突っ込んでくる。なかなかの策士だ。


なぜ今「プロフェッショナル」のパロディでこんなことをしたのか、という疑問を考える。もちろん本家「プロフェッショナル」がこの3月で終わってしまうため、賞味期限が切れる前に早めにパロディにしておこうという腹積もりはあっただろうが、それと同時にフジテレビが3月1日付けで発表した「私たちのフジテレビバラエティ宣言」の発表に合わせたかったのだろう。どちらも昨年11月にBPOが発表したバラエティ番組への意見書に触れていた。


つまりは今回のめちゃイケは「プロフェッショナル」のパロディとしてBPOに来た苦情をおちょくりつつもネタにすると同時に、リアルに「BPOの提言したバラエティ番組の意見書に応える」という側面も確かに持っていたのだろう。そのひとつの大きな回答がキーワードとしても使われていた「萎縮しない」という言葉に即したコンクリートまみれだったのではないか。


最近のバラエティは萎縮している。そしてここ数年の「めちゃイケ」は「しりとり侍」が潰されたこともあり、萎縮というか「やりたくても出来ないですよ」という態度のもと「分かってるけど、やらない」という不貞腐れにも似た番組を作ってきたように自分は感じていた。しかし今回の放送を見て、何か少し安心した。


もちろん今までどおり出来ることと出来ないことの区別はある。しかし今回コンクリまみれの映像を流したその確信犯的態度。今後も「めちゃイケならば何かやってくれるかもしれない」という期待を抱かせるには充分だった。ともすれば言い訳にしかならない「BPOに対する回答」を、プロフェッショナルのパロディを通じてあくまでバラエティとして成立させつつも(しかも構成もかなりきっちりしていたと思う。むしろ最近の「日本一周」とかが雑すぎただけかもしれない)、自分たちの言いたいこと、やりたいことも表現していた。


パロディではあったが、めちゃイケのスタッフはバラエティのプロフェッショナルであることは間違いない。久々の感服。