思い込み

先日見た「世にも奇妙な物語・秋の特別編」の感想を。

 

鍋蓋

杉咲花主演。ぱっとしないOLの主人公は、自分の端末に届く「おすすめプレミアム」というサイトから届くおすすめ商品を購入することで人生が好転していく。しかしその好転していた人生が同僚によって崩されていく。おすすめ商品に殺害をほのめかす商品が並べられ、主人公は包丁で殺害しようと実行に移るも相手に阻止される。その阻止した道具とは自分も最初にオススメされた鍋蓋だった。

 

これは「世にも」定番フルコースです。「世にも」ってどういう番組ですかと尋ねられれば「これ見て」と言える令和時代のスタンダード世にも。「世にも」の大定番である「日常から少しズレた現象」「自分だけかと思いきや相手も」「何か大きなものによる実験」というフルコースを満たしています。さらには監督の「杉咲花ちゃんに悪いことやらせたい」欲まで出ちゃってますから、もう贅沢すぎてお腹いっぱい。確かに杉咲花ちゃんには何か変わったことやらせたいですよね。

 

恋の記憶、止まらないで

斉藤由貴主演。かつての売れっ子も年齢を重ねヒット曲が出ない主人公。ライブをやっても昔の曲ばかりで誰も食いつかない。そんな中頭の中にふと浮かんだメロディと楽曲「恋の記憶」がちょっとしたヒットとなる。しかしその曲はかつて自分が出演した番組のCMとして流れたものの、出演していた歌手が亡くなったため一度放送されたっきりお蔵入りになったCMの楽曲そのものであった。罪の意識にさいなまれるも、誰もその音源を知らないことから無視することに決めた主人公。しかし自身もCMの撮影を行うときにその幻を見るようになる。そして自宅で流れるかつてのCMの幻影を見て、その歌手が亡くなった原因も「他人の曲を使用したことによるもの」だったことに気づく。「恋の記憶、止まらないで」の歌詞が「この曲、盗らないで」に聴こえて。

 

これも素晴らしい。「世にも」のホラーエッセンスが存分に注入された力作。他人の曲を知らずに使っていたものの、その盗用していた曲もまた盗用されていたものだった、という「自分も」系であり、かつホラー系の期待も裏切らない。また楽曲のタイトルがダブルミーニング(というか単なるダジャレ)になっているところもファン心をぐっと掴む。

 

コールドスリープ

ムロツヨシ主演。現代では治療法が確立されていない病気による余命2週間と宣告された剛腕社長の主人公。命が助かるには治療法が開発されるまでコールドスリープで眠るしかない、と言われコールドスリープに入ることに。体力的な問題から目を覚ますことが出来るのは4度まで。1度目は息子の結婚、2度目は息子の逮捕、そして3度目は息子が自分と同じ年齢になる誕生日。「そんなことで起こすな」と思った主人公だが、そこで知る事実とは。

 

これまたよく出来ている。ムロツヨシを主演に据え置き、そしてコールドスリープという「世にも」ではよくある設定からコメディに寄せてくるのかと思いきや、なんとまあ直球の感動作よ。スタッフロールの後ろでエピローグ的な展開が流れるのも泣かせる。

 

ソロキャンプ

板尾創路主演。大きな仕事が終わると自分を見つめるために誰もいない山奥でソロキャンプに興じる主人公。一人で山奥で過ごす至福の時間を邪魔するように突如現れた男。自分の話を喋ったあと、ナイフを盗んで自害する。するとまた次は女子高生、次は老婆と現れては死んでいく。医者である男が見ていたのは自分が見殺しにした患者たち。彼ら彼女らの幻影を見て谷底に落ちる。一命を取り留めたものの、手術室で聞こえてきた声は「たぶん無理だろう」との声。今まで自分がしてきた「命に真剣に向き合わない」ことに向き合うことになった。

 

ホラーでありながら「因果応報」を思わせる内容。昔の「世にも」はこういうの多かった気がしますよね。そして最後にちょっとだけ毒が効いているやつ。これも悪くなかった。

 

恵美論

白石聖主演。日本史、ならぬ主人公恵美の歴史や生い立ちが学ばれる「恵美論」があったら。そしてその「恵美論」を真面目に勉強する学生と恋におちたら

 

今回のコメディ担当。ただエンドロール後にもう一本やるのはあんまり好きじゃないなあ。中身は可もなく不可もなく。今回は他の4本が良すぎたのと最後にオマケのように入ってきたことがちょっともったいなかった。箸休め的に3本目くらいにあったら良かったのになあ。

 

………お気づきだとは思いますが、この感想は自分が先日見た「秋の特別編」の感想です。数日HDDに眠っていたのを先日見たもので、感想もついでに書いた次第です。みなさんの記憶が不安になったのであれば申し訳ない。ただ、それは「奇妙な世界」への扉の第一歩かもしれませんし、ただこれを書いている人間の性悪さかもしれません。それでは、ごきげんよう