0点

「テレビ千鳥」って本当にくだらなくて面白いのですけど、好きな企画のひとつとして「一周だけバイキング」というのがあります。

 

様々な誘惑にかられるバイキング(今やビュッフェと呼ぶほうが正しいのだろうが)において、いかにスマートに盛り付けて自分の食べたいものを食べることができるか、という企画。バイキングに一家言ある博多華丸が審査員となり、様々な芸能人のバイキングの様を見るというもの。本当に分かりやすく性格や嗜好が出て見ているだけでも面白い。

 

バイキングは目先の欲望にとらわれてしまうと、その後に登場するさらなる欲望との折り合いがつかなくなり、皿やお盆がてんこ盛りになってしまい非常にみっともない。しかしデキる大人はそんなへまは犯さずに、見事な配膳ができる。だってもう、自分もそこそこいい年なんだもの。

 

自分には驕りしかなかった。

 

本日、柄にもなくランチビュッフェに行ったのですよ。友人と昼飯を食べることになり、「ホテルのランチバイキングでも優雅に決め込もう」という話になり、はせ参じたわけです。そもそも外食をする機会が少なく、はたまた他人との付き合いも少ない自分に自発的にホテルのランチビュッフェに行くなんて機会などないわけで、さすがにランチビュッフェ童貞ではないのだけど、実に十数年ぶりのランチビュッフェ。冷静でいられるはずがない。

 

席に案内され、そこから「もう好きなもの食べればいいじゃん」というホテル側からの無言の圧力。そこには「お前みたいなもんはどうせ皿でもてんこ盛りにするんだろ」という軽蔑すら感じる。完全にただの被害妄想だ。ははーん、さては自分が「テレビ千鳥」の「一周だけバイキング」を食い入るように見ていることも知らないな?(知るわけがない)。

 

番組の企画では「一周だけ」だから、そこに様子見は存在しない。しかし自分はプライベートの久々のランチビュッフェ。もうそれは余裕たっぷりに「見」(けん)から入ってやろうじゃないの。そして見事な配膳とバランスを決め込み「お主、なかなかやるではないか」とホテル従業員から一目置かれる。そんな未来はすぐ目の前に。

 

 

 

 

そんな意識で一周したのち、自分のお盆の上に乗っていたのはカレーとステーキと白飯だった。席に戻って茫然自失。紛れもない0点である。今日び小学生でもこんな腕白ダサ配膳しない。久々のビュッフェに抑えきれない食欲と興奮が自分の判断を狂わせ、気が付いたらカレーをもりもりよそっていた。ビュッフェでのカレーは敗北への片道切符。安西先生に言われるまでもなく試合終了だ。でも自分の理性を押さえて本能がこう囁いていた。

 

「ホテルのカレーは、美味いよ」

 

カレーは敗北の味がした。そして美味かった。ならいいじゃないかとは思う。

 

その後友人と自分は、ひたすら食べたいものをバカみたいに食べ続け、あっさりと満腹。ビュッフェにおける最下層の人間であることを痛感させられる。なぜ優雅に余裕をもって会話と食事を楽しむことができないのか。ただ食べ続けていた。自分の右斜め前にはサラダをこじゃれた感じで配膳し、会話を楽しむ2人組のマダムがいた。自分はあそこまでの余裕は持てなくても、せめて自分の年齢相応のスマートさでもってビュッフェを制するはずだったのに。何故だ。何故こうなった。自分の目の前には腕白に盛り付けられたサラダの山。食べたことないロマネスコ、そして食べたことあるブロッコリーを、よく分からないドレッシングでいただく。ロマネスコブロッコリーもほぼ同じ。そしてドレッシングが美味いのかどうかも分からない。自分は何を食べているのか。

 

そんな自分を尻目に、完全にビュッフェを制している中年がいた。見た目は現在朝ドラ「舞い上がれ!」にも出ている古館寛治のようなオジサン。自分は心の中でずっと「古館師匠」と呼んでいた。古館師匠は一人でビュッフェを楽しんでいる。他に何をするわけでもなく、ただひたすら食事を楽しんでいる。

 

古館師匠は一人でよく食べる。まるで全て計算しているかのように、お盆に皿を複数枚セットしては、隈なく歩いて様々なものをテーブルにもってきては、キレイに平らげる。決してスマートな配膳ではなかったが、無駄と隙、そしてためらいがない。自分のようなビュッフェほぼ童貞の自分にはない貫禄がそこにある。羨ましい。羨ましいのか?

 

自分がコーヒーマシンの使い方が分からずに苦戦していると(ただタッチパネルを操作するだけなのだけど、そもそもタッチパネル式だということに気づいていなかった)、隣のマシンでさも当然のようにマシンを操作する古館師匠。手にはたくさん盛り付けられた皿とお盆。一度の行動で最大限の配膳を済ます師匠。自分も1時間前まではこういう振る舞いができると思っていました。完全なる驕り。

 

古館師匠は余すところなくビュッフェを堪能していた。自分たちのほうが先に出てしまったので、最終的にどう締めたのかまでは把握できなかったが、自分たちが出る直前まではデザートのジェラート8種を何度かに分けて食べまくっていた。さすがである。

 

というわけで久々のホテルビュッフェは紛れもない0点という大敗北で幕を閉じた。反省である。テレビ見ることにかまけすぎて、ビュッフェで最初にカレーを取ってしまう人間になっていた。今年の目標が遅ればせながら決まった。ちゃんとブログ更新もして、ホテルビュッフェで恥ずかしくない人間になることだ。たぶんどちらも果たされない。

 

一応今年最初の更新なのに、もうテレビとか全然関係ないのな。「鬼レンチャン」の感想とか書けよ。遅れましたけど今年もお暇な方はお付き合いください。