「キンブオブコント2014」を見ました。
今回から決勝の審査方法が変わっています。最初は2組×5の一騎打ち方式。勝ち抜けた5組が決勝としてまた、勝ち抜き方式で最後まで残ったほうが優勝。決勝で勝ちきるには「1対1で勝ちきるだけの強いネタ」と「最後まで勝ちきることのできるインパクトの強いネタ」を用意しなければいけません。今までより如実にコントの出し方に「戦略」が求められるようになったと思います。
これは毎年書いている話ではありますが、審査員が準決勝まで残った芸人なので、必ず「事務所ひいき」という話が出てきます。今年はさらにそんな意見が出そうな一部結果もありましたけども、自分は全然そのように感じません。こういう事を言う人は単に「自分の思ったのと違う結果が気に食わない」だけですから、ただワガママなだけです。耳を貸す必要はありません。
自慢じゃありませんが、という書き出しは大抵自慢なのですけども、改めて自慢ではありませんが、今回の芸人による投票結果を自分は全て正確に当てています。大まかな投票数もあってました。これは「自分がお笑い通であるゆえの読み」なんて話では全然なくて、単に「このネタのウケ方と芸歴と事務所であれば、まあこんな風に流れるだろうなあ」という見通しが立つわけです。言い方を変えれば、素人である自分でも大まかな読みができるくらいには「公平」だったんじゃないかと思うのです。つまりは、「そこらへんの事情を含めての審査方法と大会である」と。何度も言ってることなんですけどね。今回ルールが変わってより顕著に、如実にそこらへんの傾向が出たかと。
大まかな感想を書いておきます。
1回戦
シソンヌ
くさいラーメン。「くさいラーメン」が「うまいラーメン」という言葉で笑わせておきながら、圧倒的な演技の巧さ。あの短時間で世界に引き込むことがいかに難しいかを芸人は知っているわけで、大きな笑いどころがなくてもそりゃ高評価されます。
巨匠
レベルの低いオッサンを作るオッサン。とても面白かった。奇しくもオッサン題材というネタのかぶり方はしたものの、アプローチの仕方は全然違うし、何より「自分より下を作ることで自分を優位に立たせるためだけにオッサンを作る」という発想が素晴らしい。対戦相手によっては十分勝ち残れたと思うんだけど、シソンヌと当たったことが悪かった。1組目にして本日一番の僅差の戦いになった。実質これが決勝だったのかもしれないくらいの名勝負。
ラバーガール
子供服。いつものラバーガール。安心して面白い。他に言うことがない。そりゃ一騎打ちなら勝てます。ただ、ラバーガールのネタは爆笑が起こりにくいので、勝ちきるのが難しい。賞レース向きじゃない、としか言い様がない。でも面白い。間違いなく面白い。
リンゴスター
裏切り者。ツッコミが若いなあと思った。4年目のコントかと思えば充分に面白いんだけど、ラバーガール相手ではさすがに分が悪い。それでいいと思う。
バンビーノ
狩猟民族。音ネタ、リズムネタの爆発力をいかんなく発揮したように思う。分かってるんだけど笑ってしまう。
さらば青春の光
下ネタ嫌いのオッサン。これもいいネタだった。森田のツッコミがガンガン冴えわたっていた。ストレートな下ネタから「うんこ」など小学生レベルの下ネタまで織り込んでいて、下ネタなのに繊細なつくりだったのになあ。インパクト勝負で負けた感じ。もちろんバンビーノのネタが面白かったことは間違いないけど、勢いにやられた感はある。
ラブレターズ
野球選手。カリスマリスナーとして非常にいいネタだと思った。犬の心に大差で負けた事に関する詳細は次で述べるとして、紹介VTRで「いじめられた過去」を持ってくるあたりが「あざといな」と思ったよ。ああいうの乗っけなくてもよかったんじゃないかな、とはちょっと思った。でも2本目も見たかったかな。
犬の心
マジック。間違いなく面白かったのだけど、7対94で勝つほどのネタだったのか、というのは議論のあるところでしょう。もちろん番組で松本がフォローしていたように「点数差が面白さの指標なのではなく、単にどちらかといえばこっち、という数字に過ぎない」ことを踏まえたにしても、あそこまで差がつくものなのか、ということだろう。
結論から言えば、犬の心のネタが圧倒的に面白かったわけではないと自分は思う。ただ、ラブレターズのネタとの比較になれば、犬の心のネタのほうが面白かったことが「わかりやすかった」ので、遠慮なく票を入れやすかったというのはあるだろう。あとはやっぱり煽りVTRと芸歴の「温情票」は多少あるんだろうけど、それはそういう大会なのだから別に問題ない。自分は20対80くらいかと思ったのだけど、思った以上に差が開いた感はありました。だからといってこの結果に何の疑問も感じることはありません。むしろラブレターズ(およびアルピー)はラジオでいいネタになったと思うべき。
チョコレートプラネット
開封。芸人も視聴者も納得させる「仕上がっているネタ」とはまさにこのこと。ネタの発想、運び方、オチ、どれをとってもパーフェクト。逆にこのネタから20票もぎとったアキナのネタを称賛したいくらい。個人的な好みを除いて今日イチのネタを選ぶなら間違いなくこれ。素晴らしいの一言。
チョコレートプラネット
カラオケ。今回の審査方法では1本目はチャラになるんだけど、1本目の勢いを持ち込んだ感アリ。1回戦が最後の組で、決勝のネタ順が最初だったのが功を奏した。もちろん2本目のネタ単独でも十分に面白いのだけど、このネタでアキナに勝てたか、と言われれば自分は「うーむ」と悩むところ。決勝に1本目やってたら勝負は分からなかった。
バンビーノ
謎のゲーム。やっぱり決勝でやるネタではないと思うんだけど、やりたいことの「よくわからなさ」はちゃんと伝わってきて、ちゃんと面白い。本人たちもこのネタで一騎打ちが勝てないことも分かっていたし、優勝するのが難しいことも分かっていると思うんだけど、それを承知でこのネタをかけてきたことに意気込みは感じた。そして書いておく。偉そうだな自分。
犬の心
妹。1本目の圧勝があったことによる期待値が上がりすぎた。2本目も面白かったけども、そこまでの爆発力じゃなかったもんなあ。本人たちの「ラブレターズの怨念」ではないが、1本目の自分たちに負けた感はある。このネタならやっぱりチョコプラに票を入れる。
ラバーガール
美容室。こちらもいつものラバーガール。前述の通り、いつも通り面白く、そして淡々と進むので爆発力がない。けど芸人は面白いことをちゃんと分かっている。そこをどう評価するか、という難しさだけ。61対40という数字に芸人の「どう評価すべきか」という苦悩が見て取れる。何度も言うけど面白い。
シソンヌ
タクシー。チョコプラは面白かったんだけど、2本目のネタが優勝しきるネタなのか、という芸人側の悶々とした感情を晴れやかにするコントだったように思う。このネタならば、シソンヌに「入れやすい」ですよね。もちろんシソンヌが面白かったこと前提での話なんだけども、以前「R-1」で中山功太が優勝したときのメカニズムと若干似たような感じはありました。もちろん、それが悪いだなんて少しも思わない。自分が審査員芸人としてあの場にいたらどう投票するか、と考えれば、これはごく自然な流れ。
なにはともあれ、面白いコントが見れたからそれでいい。来年どんな形式になるかわかりませんが、与えられたルールで優勝すればいいんです。たぶんシソンヌの優勝で一番得したのはフジの「オモクリ監督」だろうな。なにはともあれ、おめでとうございます。