棲み分けの問題

アッコにおまかせ!」で出川哲郎の車がイタズラされるという演出があったようで。見てないのですが。


芸人の自動車がどうにかなる、というのは「27時間テレビ」におけるたけしとさんまのやりとりをすぐに連想させるもので、フジテレビが輝いていた頃を思い出させてくれる。もはやそんなことをやる体力も覚悟もフジテレビには残っていないのだけども、それをTBSが奮起してやったというのであればそれなりに称賛できるのかもしれない。


けど、どうもそうにはならなかったようで。出川の車に施されたイタズラは「子供による落書き」「犬が車内でドッグフードを食べる」というもの。「たけしVSさんま」という構図が自動車の悲惨さを緩和している部分がなく、単に「スタッフの出川に対する悪ノリ」という一面しか見えてこない。コントとしてあんまり擁護できる部分がないという意味では、そもそもがとってもヘタクソです。


ただ自分はもういいオッサンですので、この「演出」で「出川可哀想」とか「不快だ」とかは思わないのですね。そもそも見てないし。最近は自分には関係ないくせにこういう切り取ったニュースだけを見て批判する人がいるわけですが(まあ、見てもいないのにこういう文章書いている自分も大概ですけども)、世の中偉くなったもんだと思います。そんな自分に関係のない怒りに震えているヒマがあったら、もっともっと規模が大きい世界の貧困でも救ってこいと。単に自分が偉ぶったつもりで分かり易く叩きやすい相手にムキになっているだけですからね。自分もちょっと前まではそっち側にいたような気がしますが、オッサンも歳をとるとこう丸くなってしまうものです。


それはさておき、出川の話。出川はリアクション界のレジェンドですから、このくらいの仕打ちは想定内です。屁でもありません。爆破されて完全に再起不能、弁償もしませんくらいでようやくフツフツと怒りがこみ上げるクラスです。だからレジェンドに対して我々一般人のものさしで「出川が可哀想」と言ってしまうのは、イチローに対して「なんで打てないかね。俺なら打てるね」くらいに滑稽な話であります。


だから今回のイタズラも、出川が抱く悲壮感を和らげるために「出川は芸人として特殊な訓練を受けています。一般人の方はするほうもされるほうもマネをしてはいけません」という、昨今のリアクション芸フォローテロップをひとつ入れておけば済む話だったんです。そもそもはあのテロップがボケだったような気もするのだけど(特殊な訓練ってなんだよ、つう)、最近の「フォローを入れとけば大丈夫」みたいな風潮に乗っかったテロップは割とアリだと思います。今回の件でも「仕込み含みですよ」という免罪符にもなるし。


昨今のバラエティは何をするにしても「言い訳」とか「説明」が必要で厄介なものです。難しいものです。「めちゃイケ」が散々煽って放送した「めちゃ日本女子プロレス」(コーナータイトルは「格闘女神MECHA」ですが)も、昔のコーナーであることを踏まえた「説明」が多すぎてバラエティとしては消化不良だった。AKB事件後だが、選挙前に流さなければ意味がないというジレンマを抱えた上なので仕方ない部分はあったが、それでもだ。「めちゃイケ」に関しては書きたいことが山ほどあるが、それはまた別の機会に。かといって和田アキ子のフォローが一番フォローになっておらず、誰も適切なフォローができない「アッコ」もキツい。


今回の件はただただ「アッコ」側がヘタクソだったというだけの話。ただ一つ言えることは、日頃「アッコにおまかせ!」を見ている人たちには「それでいい」わけだし、普段見ていない自分のような人間が外部からああだこうだ言うべき話ではないのです。言うならば幼稚園児向けの番組を大人が見て「くだらないね」と言うのと同じ話。自分の言いたいことの意図を汲んでいただければ幸いです。