やっぱそうじゃねえかよ

自分がテレビを長いこと見ていてずっと腑に落ちないもののひとつに「中年のオジサンやオバサンが若者の流行や文化を学ぶ」番組やコーナーがある。

 

昔「クイズ!年の差なんて」という番組があった。ヤングチームとアダルトチームに分かれて、それぞれの世代には常識である知識を出題しあうという内容。この番組の良いところは互いの立場で「こんなことも知らないのか」と言えるところ。どちらか一方を時代遅れとか常識知らずと揶揄するのではなく、世代が違えば常識も違うという「ごく当たり前のこと」を知らせてくれるものだった。若者に鶏肉が何の肉かを聞いてバカにするようなことはないのである。もっとも今は単なる芸能人格付けチェックになってしまったけども、それは今はあまり関係がない。

 

若者世代の流行や常識を学ぶ番組は、基本的に中年世代が若者のことを「学ぶ」わけですから、若者世代が「教える立場=偉い」になるわけで、本来であれば目上である中年たちが「教わる立場=目下」になるのが滑稽だったりする。普段は偉ぶっている大人が「そんなことも知らないのか」になるわけですね。

 

自分はこれがずーっと「なんかイヤだなあ」と思っていました。

 

自分も20年くらい前には「若者」だったわけですが、当時流行っていることとして扱われる内容も「本当に流行っているのかよ」と思うことが多かったですし(まあ実際に東京のほうでは流行っていたのでしょうけども)、それを大人たちが学ぶということに関し「わざわざ大人がすり寄ってこなくていいよ」と思っていました。大人たちが若者に「媚びている」ようで、全然面白くなかったのですね。けどこういうのがあることで大人たちが若者文化を学ぶ「需要」があるのかなあ、とかうっすら思っていたわけです。

 

時は流れ、自分もいいオッサンになりました。そしてオッサンになった今、YouTube発信の流行のコンテンツを若者が紹介し、それを自分と同世代の芸人とかが「全然分からない」とか言いながらヘラヘラして教わっている姿を見ると「あああああああああ」と思います。情けない。なんで若者に媚びながらわざわざオッサンが教わらなければ(そしてそれをテレビで見なければ)ならないのか。そりゃあ流行の先端なのかもしれないけど、それを知ることが必要なオッサンやオバサンはそれほど多くなく(仕事で必要な人はもうそれなりにしっかり知っている)、中途半端な知識をかじったオッサンが職場の若者にその知識を披露した結果、いいことなんてひとつもないことは明らかだ。結論として「学ぶ必要はない」である。

 

てことは、自分が若者だったときに当時のオッサンやオバサンは当然同じことを思っていたんじゃないか。若者のときに「オッサンには需要がある」と思っていた自分がオッサンになったとき、全くオッサンとしての需要を感じていなかった。じゃあ誰が必要なのこれ。

 

今テレビの視聴者が高齢化していて、若者をテレビに呼び戻すことを各局が模索しているという話は聞く。「噂の東京マガジン」が堅調な視聴率をたたき出していたにも関わらずBSに移行したのも、今後必要になってくる若者の数字が取れていないからだ(そんなもん当たり前だろ、とは思うけど)という話を聞いた。だからなんとか若者が見るような企画を、若者にフィットした番組をと考えるのは間違ってはいないだろう。かといって若者文化を扱うことが若者の視聴に繋がるのかはよく分からん。そういうデータでもあるんだろうか。

 

若いときに感じた「これ、オッサンになったときに必要になるのかなあ」は、オッサンになった今「いやあ、なんで若者文化をオッサンになって教えられなきゃいかんのよ」となった。結局自分は若者でもオッサンでも、この手の番組を必要としていなかった。やっぱそうじゃねえかよ。じゃあなんで廃れないの?っていうシンプルな疑問は「流行扱っておけばいいだろ」っていうテレビ局の悪しき怠慢だと自分は思いますけど、どうなんでしょうね。