この世の全ては

とんねるずのみなさんのおかげでした」が最終回。


めちゃイケ」「おかげでした」の長寿バラエティを終わらせることを発表してから約半年。遂にこの日がきてしまった。「めちゃイケ」の最終回は5時間半の超拡大枠で放送されるのに対し、「おかげでした」は通常枠での最終回。あまりにあっさりとした終了は寂しい気もするが、とんねるずらしいともいえる。


最終回は「さいごのうたばん」と称して、番組を支えてきた音楽の歴史を一挙に紹介。まだまだ放送したい素材はあっただろうが、1時間では流せるものは限られてくるわけで、もうそれは今更ウダウダ言っても仕方ない。野猿のVTRも懐かしすぎて本当に。CA老けたよ。そりゃ自分も老ける。


松田聖子登場と最終回のスペシャル感を醸し出しつつも、最後に流れたのはとんねるずの生歌による「情けねえ」だった。とんねるずの代表曲のひとつであり、発売当時勃発していた湾岸戦争を揶揄するメッセージ性の強い曲。いまやアイドルの曲ばっか書いている秋元康はこういう歌詞も書いているわけだ。


とんねるず自身による熱唱はそれだけで心を打つものがあったが、さらに視聴者の、全てのテレビ関係者の心を熱くするメッセージがあった。歌詞中の「この国」の部分をそれぞれ「バラエティ」「フジテレビ」に置き換え、「バラエティを滅ぼすなよ」「フジテレビをおちょくるなよ」と歌い上げたのだ。これは紛れもなくとんねるずからの本音であろう。


もちろん自分もこの熱唱を、この歌詞を見てこみ上げてくるものがあった。しかし同時に自分は替え歌にされていないある歌詞の部分に強く共感するところがあった。

この世の全てはパロディなのか?

この歌詞は元々歌われているものであり、今回のメッセージにひっかけた部分ではない。湾岸戦争に対する及び腰の日本の姿勢を「パロディのようだ」と揶揄したものだ。しかし、今この歌詞がとんねるずによって歌われることで自分は改めてこう思ったわけだ。


とんねるずの全てはパロディだったんだよな」と。


今日の放送はとんねるずの音楽の歴史を振り返るものであったが、とんねるずの音楽の歴史はパロディそのものである。今のようにYouTubeで海外のアーティストのPVが誰でも見られるわけではない時代に、海外のアーティストのPVを完全にパロディとして放送してしまう。当時の自分は「これがパロディである」ことすら分からずに見ていたのだ。だけども面白かったんだもの。


「ほんとのうたばん」はコーナー名自体が既にパロディであり、アーティストのモノマネ(と言っていいのかもかなり微妙な線ではある)ももちろんパロディ。大ヒットを飛ばした野猿ですら「ジャニーズシニア」という「ジャニーズJr」のパロディが前身となっているのは最終回で放送された通り。「仮面ノリダー」「ちょっと北の国から」「太陽にほえるな!」などのコントにしろ音楽にしろ、思えば「おかげです」「おかげでした」を支えていたのは膨大な数のパロディだったのだ。そういや30周年のときも「いいとも」のパロディだったもんなあ。それを踏まえて番組の最後に「この世の全てはパロディなのか?」と問いかけられたこちらは


「全くもってその通り!」


と叫ぶしかないだろう。


来週我々はとんねるずのパロディを見ることは出来ない。しかしきっと彼らは「おかげでしたの最終回」のパロディをどこかで披露してくれるんじゃないか。そんな気がしてる。そしてそれを放送するのはフジテレビであってほしいな、と自分は思っている。