「安倍政権の支持率が下がっているじゃない。例の公文書書き換えが発覚したせいだよね。知ってるよね。」
「はあ」
「いや酷いもんだよね。役人が公文書を書き換えるなんてことが政治家や上司の指示だったとしても行われていたら、我々国民にとって不都合な情報がいくらでも書き換えられてしまうということだよ。怖いよね?」
「はあ」
「でもね、安倍政権はそんなに簡単に倒れないと思うのよ。なんでだと思う?」
「うーん、なんでですかね」
「もちろん支持率は下がっているよ。でもその支持率の調査方法って『安倍政権がいいか悪いか』という聞き方なわけよ。そんなもんいいか悪いかで聞かれたら『悪い』って答えるよねえ。結論ありきの質問というか」
「そんなもんですか」
「そうだよ。けどさ、考えてみてほしいんだ。マユミちゃん民主党政権の頃覚えてる?」
「まだ学生でしたから、あんまり」
「そっかー。いや酷いってもんじゃなかったよ。僕もまだ社会人としては駆け出しだったけど、景気が悪いってもんじゃなくてね。給料も全然上がらないわけよ。」
「はあ」
「その上東日本大震災の対応も杜撰だったでしょ?ま、自民党政権だったらどうかってのは仮定の話になっちゃうけどさ、少なくとも民主党政権よりはマシだったんじゃないかなあって思えちゃうんだよね」
「はあ」
「だからいくら今の安倍政権がダメだって分かっていても、日本人の大半は『(旧)民主党政権はもっとヤバい』って知ってるわけよ。だから支持率が下がっても、そんなに簡単に野党と政権交代が行われるとは思えないんだよね」
「そうなんですか」
「そう。『悪い』と『より悪い』なら、悪いことは分かっているけど『悪い』を選ぶんだよね。やっぱり少しでも最善手を打とうとするのが正しい判断だと思うんだ。そう思わない?」
「うーん、なんとなく分かりました」
「納得した?」
「まあ、はい」
「じゃあおっぱい触らせてほしいんだ」
「え?」
「おっぱいを触らせてほしいんだよね」
「はぁ?」
「だから、おっぱいを触らせてほしい」
「何言ってるんですか。ダメに決まっているじゃないですか」
「え、ダメなの?なんで?」
「『何で』って正気ですか。イヤですよ。何で触らせなきゃいけないんですか」
「わかった。じゃあこうしよう。セックスさせてよ」
「警察呼びますよ」
「待て待て、それは本意じゃない。落ち着こう」
「こっちは落ち着いてます」
「なんでどっちもイヤなの?」
「じゃあ言わせてもらいますけど、ハトヤさんタイプじゃないし。そもそもタイプだったとしてもそんなこと急に言われてキモいじゃないですか」
「キモいかー。まあキモいよな。そうだね。キモいね」
「分かってるなら話はおしまいです。通報しなかったことだけでも感謝してください」
「ちょっと待ってよ。まだ話は終わってない。聞いてほしい」
「いやです」
「おっぱいとセックス、どっちがイヤだ?」
「そりゃセックスですよ。なんでしなきゃいけないんですか」
「じゃあおっぱいは?」
「それもイヤです。当たり前じゃないですか」
「どっちもイヤなんだよね?けどどっちか選ばなきゃいけないんだよ」
「は?なんで二択なんですか。結論は『通報する』ですよ」
「いやいやいや。さっきマユミちゃん分かってくれたよね。『悪い』と『より悪い』なら、悪いことは分かっているけど『悪い』を選ぶのが最善手だって」
「いやいや、そうはならないですよね。『通報する』を選びますよ」
「じゃあマユミちゃんは選挙でちゃんと『第三の選択肢』に投票したのかい?」
「え?」
「だってそうじゃないか。『悪い』もイヤだ、『より悪い』もイヤだ、ってなったらその他の可能性を探るしかないじゃないか。今回の『通報する』はそれにあたるよね。元々提示されてないのだから。じゃあマユミちゃんは政権選択選挙となるさきの衆議院選挙においても、そういう判断をしたってことなんだよね?」
「いや、ちょっと何言ってるか分からないんですけど」
「じゃあ分かりやすくしようか。マユミちゃんは選挙の候補者として立候補している候補者および政党ではない、まったく別のものに投票したんですかと聞いてるの」
「してないです」
「じゃあおかしいね。なぜ我々の国民生活がかかっている大事な選挙ではいまマユミちゃんが提示したような『他の可能性』を選択しないのに、今さほど大事ではないぼくの質問に、マユミちゃんはそのような選択をしようとしているのか、ということだよ。あれもイヤだ、これもイヤだ、けど対案を選択しようとはしない。そんなのは考えが成熟していない子どものワガママだと思わないかい?」
「それは…」
「これで分かったでしょ。マユミちゃんは提示された選択肢において、新たな可能性を提示できるような人物ではないということ。そして『悪い』と『より悪い』であれば、『悪い』を選択することが最善手であることをマユミちゃんは先ほど理解したということ」
「うーん」
「ここからマユミちゃんが導くべき結論はただひとつ。そう、『おっぱいを触らせる』だね。『悪い』ことは分かってるんだ。けど選ぶのは最善手でしょ。ここはひとつ穏便におっぱいを触らせることで乗り切ってくれないか」
「お客さん、どうせ触るのにこのくだり必要ですか?」