“正解”は10年後

「クイズ☆正解は一年後」が面白くて、そして苦虫を噛み潰した顔になりました。


もうね、面白かった部分は「矢口真里の扱い」です。1年前(2014年1月)に「年内に矢口真里は復帰するのか」という出題がなされ、ご存じのとおり正解はマル。これを受けて矢口がスタジオに登場する。スタジオにいた芸人は一斉に「バラエティ復帰待ってました!」と言わんばかりの手荒い歓迎。有吉の「お前の禊はまだ終わっていない!」とか「これほど厚顔無恥だとは思わなかった」とか、今の矢口にぶつけたら面白い言葉でしかない最高の毒づきかた。こんなもんもう笑うしかないです。


矢口の復帰に関しては面白ければ全然よかったと思うんです。しかし「ミヤネ屋」はじめとして、どこも奥歯に物が挟まったような扱いで、そりゃ見ているほうも、当然共演しているほうも歯痒い感じ。それを有吉・おぎやはぎ東野幸治ら超一流のバラエティ猛者が全力でイジることで、今までの鬱憤を全て吹き飛ばす爆発力。


番組によれば、MC田村淳は既に1月収録の段階から矢口にオファーを出しており、もし年内に復帰していたら、年末に出演してほしいという旨まで本人に伝えていたという。淳が復帰前に矢口に会っている、というのはこの番組が裏で暗躍していたということだ。この点に関しては本当に田村淳という人間の「下準備力」に脱帽する。


オファーを出した時点では、矢口が復帰しているかどうかも、そして矢口がどんな扱いをされているかも未知数なわけで、今回奇しくも「本格的にイジられる」のがこの番組で解禁されたのは、ある意味矢口が淳に義理を立てた形になった。

「ヤラせろ(有吉・矢作)」
「何断ってるんだよ!(矢作)」
「条件付きでヤラせる女じゃない(淳)」
「淳は本当にヤってないのか(ケンコバ)」
「やぐっちゃんは、本当に、淳と、ヤってないんですか(東野、矢口の目を見ながら)」
「お尻触ってください(東野)」
「みんな矢口のこと軽い女だと思ってるんじゃないんですか?(淳)」
「性欲モンスターや!(藤本)」

というくだりは、バラエティ史に残ると思います。本当に。


ここまでは本当に面白かったんですよ。ここまでは。ここから余計なことがねえ。なぜ「アイスバケツチャレンジ」をやってしまったのか。


この番組お馴染みの「サンダーライガーによる罰」は今回も登場し、その罰の中に「氷水を浴びせる」というものが入っていた。番組側が何も言わずに「氷水」なら、もちろん想起はさせるけども、ニヤニヤしながら見れたのかもしれない。けどライガーが自ら3人を指名したり、淳が自ら「アイスバケツチャレンジやってすげえ批判浴びた」と言ってしまってからの、この罰扱いはどうなんだろう。自分はここらへんから少し「?」が付き始めた。


そして罰VTRが明けてスタジオへ。やはり氷水が用意されており、そこで矢口が氷水をかぶることに。ここから自分が死んだ魚のような目になるわけです。ただこれに関しては矢口を擁護しておきたい。あの流れで、矢口ほどのバラエティスキル、そして「今なら何でもやる」という意識があれば、そりゃ当然かぶりますよ。逆にあそこで「かぶらない」という選択肢は矢口にはないですよね。つまりは、矢口に仕向けられたスタッフの罠です。それが分かっていても、矢口が氷水をかぶるという映像には、この二文字しか出てこないですよ。


嫌 悪


思わず呟いてしまったくらいですが、本当にもう、「嫌悪」という言葉にこれほど真正面から向き合ったことはない、というくらいの圧倒的な嫌悪。


一年の総括とはいえ、アイスバケツチャレンジを罰という「かなり安易な形」でイジるにはちょっと早すぎたんじゃないかと思うのです。しかも割と渦中で叩かれた淳が中心でやっているとすれば、これは何となく「批判に対する意趣返し」なんだろうなと思えてくる。「批判していたけども、こうすれば面白いでしょ?」みたいな挑発。10年後なら面白いかもしれんが、今はまだ早い。少なくとも今の自分にはこれが面白いとは思えない。


また、矢口が氷水をかぶるのは有吉ではないが「禊」的な意味も持ってしまう。もちろんアイスバケツチャレンジにそんな意図はないわけで、もう「氷水をかぶる」という行為さえあれば何でもいいことになってしまっている。もちろん従来通りの意味しか持たない氷水であれば、矢口がかぶったところで「あざといが、仕方あるまい」とは思ったんだろうが、2014年末における氷水はそれでは済まないですよね。きっと矢口はALSって言えないし、下手すりゃ知らないと思います。


結果自分は今回の番組おいて「氷水をかぶる」という行為で何をしたかったのか全然わからなかった。淳は番組中で「流行った」とか言ってしまっていた。批判的な立場から「流行った」と揶揄を込めて言うならわかるんだが、淳はどういうつもりで「流行った」と言ったのか。あれほど慎重に根回しできる男でも、不用意にこんな発言するもんなのか。自分の理解がそこまで及ばない。


あとは随所にあふれる、淳の「極楽山本復帰してほしい」感ね。前にも書きましたが、復帰してもいいけど、復帰して受け入れられるかどうかはまた別の話。あえて極楽ならぬ極悪な言い方をするならば、淳が矢口に手を差し伸べたのは「山本復帰への実験と踏み台」だったんじゃないかとすら思える。もちろん矢口が復帰することも望んでいたとは思うが、その裏に見えるのは「矢口が復帰できるなら、山本も復帰できるんじゃないか」という下地感。してもいいけど、さ。こっちはそんなに乗り気じゃないですよと改めて表明しておきたい。


伊集院はラジオで「アイスバケツチャレンジを行った奴らに、『いったい何の病気のキャンペーンだったでしょうか?』と聞いてまわりたい。やらないけど」と言っていた。現時点におけるアイスバケツチャレンジの立ち位置って、まだこういう段階だと思うんです。なんでやったかなあ。優秀な制作陣なのに、解せない。解せない。




2015年も例年同様、こんな感じです。お好きな方だけ、末永く。