コンプライアンスの罠

「クイズ☆正解は一年後」が年内最後の問題作に。


クイズ☆タレント名鑑」「テベ・コンヒーロ」のスタッフが集結し、今年起こるであろうことをクイズの題材に今年の1月に収録しておき、それを年末「答え合わせ」という形で放送するもの。VTRと生放送の2元構成であった。
MCのロンブー淳枡田アナをはじめとしてFUJIWARAおぎやはぎらタレント名鑑のレギュラーメンバーが多数。有吉がいなかったのが悔やまれる。


番組の中身はよっぽど「タレント名鑑」「テベコン」よりもクイズらしく、「今年結婚した有名人」「離婚した有名人」「流行語大賞のノミネート」など、本当に年内をおさらいしながらも中身に若干の悪意含みで楽しい。矢口の離婚を予想していたサバンナ高橋の素晴らしさが光っていた。


ただまあ自分はこの番組が「番組として成立していること」なんてのはどうでもいいのである。タレント名鑑のスタッフが集まって普通の番組を作る意味なんかない。そこに凡人では到底思いつかないような「頭のおかしい番組」が見たいのである。大勝軒の山岸一雄を平気で選択肢にぶちこんでくるあの頭のおかしさを。そして年内最後に間に合いました。


話は「今年のプロ野球日本シリーズの勝者はセリーグか、パリーグか」という問題から始まる。正解は楽天なのでパリーグ。まあ2択だし当たったところで大して盛り上がるわけでもない。ましてやスポーツ番組でもないわけだし、このお題そのものにさほど意味なんかなかったのである。


正解チームには10ポイントだが、不正解チームには「ちょっとした罰」が待っているというもの。これが「テベコン」時代にちょっとだけ流行った「獣神サンダーライガーにひっぱたかれる」という、ガチでただの「罰」なのだが、これが本当に面白い。だって、リアクションどうこうの問題ではなく、ガチでひっぱたかれて痛いだけ。罰ゲームの「リアクション芸」に飽き飽きしているバラエティに本当の罰は新鮮すぎたのだ。


それを今回は負けチームの代表者が不意打ちで喰らう、という内容だったのだが、正直ここも問題ではなかった。いやもちろん実際に罰を受けたオードリー春日のリアクション含め笑いどころは満載だったわけだが、ピークはここではない。では何が一番自分を笑わせたのかといえば、「罰ゲームを受ける人物を春日に決める方法」であった。


前置きとして「今はやらせ問題がうるさい」「そういうことをやるとすぐコンプライアンスにひっかかる」という旨をロンブー淳枡田アナが真剣に語り出すのだ。そして「一切ヤラセはありません!」と断言しておいて、罰ゲームを受ける人物を決める手段として登場したのが「コックリさん」だったのだ。笑い過ぎて死ぬかと思った。


コックリさん。漢字で書くと「狐狗狸」だ。これを読んでいるあなたも小学生、あるいは10代の頃に一度はやったことがあるんじゃないだろうか。ひらがなの50音と「はい」「いいえ」、さらには鳥居が描かれた紙の上に十円玉を一枚置き、参加するメンバー全員がその上に指を置き、「コックリさん」に質問をするわけだ。そしてその質問に対してコックリさんが「はい」「いいえ」、もしくは50音で一字ずつ答えてくれるというもの。誰が動かしているわけでもないのにちゃんと十円玉が動くことに戦慄を覚えた小学生も少なくないだろう。


コックリさんは小中学生の頃、クラスで一度は必ず起こる「心霊ブーム」のさなかに行われることが多い。だからこそ小学生は霊的な何か(というかコックリさん)が動かしているように思ってしまうが、結局のところ「誰かが(あるいは自分が)動かしている」ことに他ならないわけで、全然霊的なものとは関係がないのだけど、「自分じゃない誰かが代弁している」というのは、誰かにとって都合がいい場合があるからゆえ、あるいは単純に面白がって行われるんだろう。


そんないわば「小学生の他愛のない遊び」が、まさかこの2013年末に「コンプライアンス遵守」という名目でテレビで堂々と放送されるとは思わなかった。ちゃんとひらがなで「か」「す」「が」って動いてやんの。それはもう、全然100%やらせじゃなくて霊の仕業か淳の仕業だもんな。まさに発想の転換。「こんな手があったのか!」と今年最後の大笑いをさせてもらった。やっぱり頭おかしいこのスタッフ。


テレビでの、バラエティ番組での笑いってもう殆どやり尽くされたような気がしてるけど、まだまだ全然尽きてない。だって、コックリさんという昔からある他愛のない遊びひとつでここまで面白くなるんだから。最終的にモノを言うのは圧倒的な発想力である。ネットが便利で都合よく面白いとはいえ、この発想が生まれることはないだろう。「コンプライアンス」という制約を逆手にできる面白さ。テレビは、バラエティはまだまだもっと面白くなる。そんな希望を最後に見た気がする2013年でした。来年もそんな番組にひとつでもいいから出会えればいいな、と思う。