訴えてまで欲しい肩書

女子アナの内定を取り消されたことで女子大生が日テレを提訴したとか。


詳細な説明は面倒くさいので省くが、大雑把に言うと「水商売でバイトをしていたことが内定取り消しにつながった」というもの。法律の争いになると「それが内定取り消しの理由になるのか」ということになるんだろう。


自分はテレビ大好きな人間ですが、女子アナという職業に少しも魅力を感じておらず、先に本音を言ってしまえば「どうでもいいわい」なのですが、もう少し話を引き延ばしてみよう。


女子アナつうのは、まあ女性からしたら、男性からしてもかもしれないが、憧れの職業ということになるのでしょうか。見た目華やかな仕事ですし、何より世間の注目を浴びまくる。「才色兼備」で芸能人ヅラできるというのが素晴らしいんでしょうな。まさに勝ち組。


だからこそ、まだ入社もしていない会社に対して「入社は有効だ」と訴訟を起こす。そこには「訴訟してでも入りたい会社」というのではなく、「訴訟してでもなりたい女子アナ」という、自分にはなかなか理解しがたい世界が繰り広げられているのだ。


女子アナになるような人たちは「大学のミスコンを制す」とか「アナウンス学校に通う」とか、「FIRST CLASS」も真っ青なマウンティングのど真ん中にいるのでしょうから、それを単純に「醜い女どもの争い」と片づけることも可能ですが、「目的遂行のために努力を惜しまない人たち」と捉えれば、なかなか見上げたもんであります。


ただ、そうとはいえ「女子アナという肩書が欲しくて、裁判に勝てば働くことになる会社を相手に訴訟を起こす」という発想はなかなか出てこない。もし仮に女子アナになったとして、そんな腫れ物扱いの女子アナを番組に起用するのか、という疑問は誰でも容易にたどり着く。けれども、最大の目的は「日テレで働く」ではなく、「女子アナとして働きプロ野球選手と結婚する」なのだから、多少最初の会社で不遇であっても「女子アナ」という肩書がもらえればそれでいいんだろう。とっととセントフォースでも行くつもりなんだろうな。ある意味「人生をかけている」点は尊敬に値するのだが、それが職業意識からくるものではなく、詰まるところ玉の輿。やっぱり最終的に近寄りたくはない。そしてそんなに女子アナになりたいくせに水商売でバイトしているという瑕疵を作るんだから、最終的に脇が甘いんだろう。


一方で日テレの対応はどうなのか。もちろん批判はあるだろうが、個人的には「まあそうだろうな」と思う。女子アナとしてデビューさせてから、あるいはする前から週刊誌やワイドショーを賑わすような恰好の材料を持っているような人間をわざわざ女子アナにしてどうする、という判断になる。もちろん水商売自体が悪いわけではないのだろうが、それを口実になんやかや言う人間がいるとするならば、「面倒な事は面倒になる前に回避する」というリスクマネージメントが行き届いた結果じゃなかろうか、と。


それと同時に、日テレが女子アナというものを「会社が育て、守っていく」という、いち会社員としてではなく「あくまで使い勝手のいい専属タレントであり、イメージが悪くなるような厄介事は避ける」というスタンスであることを隠そうとしていない。アナウンサーという職業がかなり特殊ではあっても「会社員」として考えるならば、水商売をしていた過去があろうとも「優秀な人間だから社員として採用したわけで、たとえ外野から何を言われても守る」という姿勢を見せても不思議ではない。けど日テレはかつて夏目三久を干した過去からも、女子アナのイメージ悪化を極端に嫌う。だからこそあんなに優秀な夏目を干したのだ。そういう意味で日テレはブレてはいないが、何も学んでいないことにもなる。それとも見る目がないからこの女子大生に採用を出したのだろうか。どちらも正しい気がする。


ただまあ日テレがそういう考えになるのも分からんではないのである。能力を見込んで採用したところで、入ってくるほうがタレント気取りなんだからそういう扱いにもなる。丁寧に育てても、育ったところであっさり独立してフリーになったり結婚して退社したり、では投資に対する資本の回収もできたもんではない。だったら最初からタレント扱いしておいて、適度にキャッチ&リリースしているほうが楽だもんな。DORAなんてやってたくらいだし。でもなんでだろう。合理的だし正しいんだけど自分はこの姿勢は好きになれないなあ。


結局この争いから見えてくることは、女子アナの肩書が欲しいだけの欲にまみれた女子大生と、専属タレントとして良いイメージのキレイな女性が欲しいだけのテレビ局の、双方のどうしようもない側面だけである。「血で血を洗う」ならぬ「糞で糞を拭う」闘いだ。自分はこの女子大生は女子アナ使い捨ての日テレに入らないほうがいいと思うし、日テレはしょうもないこの女子大生を採用しないほうがいいと思う。実はwinwinの結果に既になっているのに、そこをほじくり返すだけの不毛な争いをこれから始めるのだ。実に当事者以外、みな「どうでもいい」と思っているであろう争いをこれから始める裁判官や弁護士はいったいどんな気分なんだろう。


もし裁判の末、この女子大生が女子アナとして入社した際には「行列」でスタジオアナに抜擢した挙句、事の顛末を1時間延々と喋らせてから干せばいいと思う。それくらいしか良い解決策が思いつかない。