火のないところに紫煙は立たぬ

映画「風立ちぬ」のタバコの描写に対して、日本禁煙学会が苦言を呈したとか。


風立ちぬは昭和の戦中が舞台である。現代の基準に照らし合わせれば「必要以上に多い」と感じられるかもしれないし、未成年の喫煙シーンはあまり好ましいものではないということも理解できる。ただ、その一方で当時の喫煙事情を考慮すれば「表現の自由」の範囲内と言われても仕方ない部分ではあろう。もちろん当時はOKだったからといって、今の事情を無視するわけにはいかないので、正直自分には「どっちもどっち」感がある。


普通に考えれば「そんな指摘くだらない」で済ませてしまいたくなる事象であるが、自分はこの件に関して実は日本禁煙学会に同情的な立場である。


「日本禁煙学会」という名前からは「この世からタバコをなくしてやろう」という、ある意味ファシズムを感じる学会名ではある。しかしだからと言って何でもかんでも「喫煙は悪」という態度を取っているとも自分は思えない。もしそうであるならば「しょうもねえ」で終わりはするんだが、一応そうではないという前提で話を進める。


日本禁煙学会だって、「こんなこと言ったら叩かれるんだろうな」と思いつつ、今回の要望を出したような気がするんです。ここまで人気になっている映画に一言物申したら、叩かれるのは自分たちだと分かっていたはず。にも関わらず一言物申したのは、個人的には「公正な態度」だとは思うのですよ。もし自分が日本禁煙学会の人間なら「何も自ら叩かれて自分たちの立場を悪くすることはない」という打算が間違いなく働きますもの。けど、彼らは一言物申した。それは「相手が誰だろうが、言うものは言うよ」という公正な態度、もしくはただのアホってことになるだろう。


日本中のガキどもお子様が見るジブリアニメ。内容は大人向けだとはいえやっぱり子供もたくさん見る。それがジブリアニメだとはいえ、いやジブリアニメだからこそ、批判覚悟でケンカを売ったのだとすれば、自分は「正しいなあ」とは思うのです。もちろんこの件に関する是非はともかく*1


言いたくなくても言わなきゃいけないこともある。オッサンになるとそういう場面に出くわすわけで、こういう同情的な文章を書いてしまうこと自体「老けたな」と思うんだよなあ。10年前の自分なら「バカじゃねえの」の一言で切り捨てていたんじゃないだろうか。

*1:是非で言えばやっぱり「非」ですけど