知った気にさせてくれ

名曲探偵アマデウス
クラシックの名曲にまつわるエピソードを、探偵事務所に訪れる依頼者の相談と絡めながら紹介していく「クラシックミステリー」。というよりはちょっと変わった切り口の音楽教養番組といったところ。


元々はNHKBSで放送されている番組であるが、この度地上波でも放送されるようになった(但しエピソードの順番はまちまち)。BSで番組が始まった当初からちょっと気になっていたこの番組が見れるようになったので、とりあえず見てみました。で、思ったよりドラマ部分の比重が少なく、かなりがっちりとクラシックのエピソードを取り上げている印象。下手したら「題名のない音楽界」よりもガチガチかもしれない。


自分のクラシックに関する知識と言えば超有名曲の題名と作曲者の名前がなんとか一致するくらいであり、クイズ知識の枠を出ることはないし、音楽の素養もまるでない。だからクラシックに関する講釈を聞いたところで「はあ、そういうもんですか」くらいのリアクションしか取ることは出来ないのである。小学生に微分積分を説明しているのと同じ。


しかしNHKのこの手の番組は優秀なもので、クラシックに関する知識や素養がなくても、番組を見れば「なんとなく分かった気分にさせてくれる」のが素晴らしい。今回自分が見たのはリストの「ラ・カンパネラ」という楽曲について。この曲が2度リストの手によって書き直されたのには理由がある。その理由をドラマ部分のパートと絡めて丁寧に説明してくれる。しかも実際3つの譜面を弾き比べることで、その違いを強調していた。


漠然と3つの譜面を聞き比べても自分には「なんのこっちゃ」であるけども、丁寧な説明つきで聞き比べると「なんとなく分かった気分」にはなる。実際3つの譜面の違いを正確に聞き比べるにはそれこそ音大レベルの知識が必要なはずだが、そんなものを持っていなくても「分かった気分」にさせてくれるのは、地味に嬉しいものだ。


自分のテレビに関する座右の銘は「騙されてるんじゃない、騙されたいんだ」である。優れたテレビ番組にはウソがあってもいいしむしろそんなウソには積極的に騙されたいという意味で普段は用いているが、今回の「名曲探偵アマデウス」のように、専門知識を持っていないと理解出来ないようなことを「なんとなく分かった気にさせてくれる」という意味で上手い具合に誤魔化してくれる番組にも「そのまま上手く自分を騙して分かった気分にさせておいてくれ」と思う。