反対が悪ではない

児童ポルノの単純所持を違法とする内容を盛り込んだ法案が可決されそうだとか。


改正(改悪)の内容だけを冷静に検討すれば、「持ってるだけで違法」つうのは色々と問題ありますわな。嫌いなヤツの家に毎日のように写真を送りつければそれだけで捕まえることが出来る。メールで指一本でも可能だ。可能性として濫用が予測される法律は、いかに正義(ここでは思想的な意味は除く)に適っていようとも成立させてはいかんだろう。この問題の根幹はここでしかない。倫理的な問題以前の「悪法」となる可能性が恐いのだ。


しかしこれが「児童ポルノ」という、世間的には嫌悪の目でもって避けられる対象であるからこそ、大手を振って反対すると「じゃああんたは児童ポルノが見たいのか」と言われてしまう。ロリコンであると開き直っていない男性であれば、特にこのような言説には躊躇するだろう。そしてこの法律に賛成する人間は反対派のこの点を突いてくる。でもこれって悪質なやり方だとは思いませんか。


やってることは「裏ビデオの通販」と同じだろう。今でこそネット上に無修正のアダルト映像なんて溢れているものの、VHSが普及しはじめアダルトビデオが世に出回った頃、いわゆるモザイクのない「裏ビデオ」の通信販売の広告が世に多く出回った。そしてその多くが偽物だったり、ただのクズAVだったりした詐欺が横行した時代があった。


日本の法律では無修正のアダルト映像を販売するのは違法である。よって売るほうはもちろん、買うほうも「違法なものを買っている」という後ろめたさから、完全に騙されて高額を支払ったにも関わらず意中の品物を手に入れることが出来ず、そしてこれを訴えることも出来ずに泣き寝入るケースが80年代には多発した。でも実は、購入したほうは厳密な意味で違法ではないのである。だから警察に訴えれば損害を取り返すことも可能ではあったはずだ。つまりは、「それはそれ、これはこれ」ということ。裏AVを買おうとした後ろめたさは認めるけども、だからといって詐欺まで泣き寝入る必要があるかといえばそれは別の話。


今回の議論も、児童ポルノに興味があるかどうかはともかく、我々の生活が不当に侵害される恐れのある法律は成立させるべきではない、と堂々と言えるべきなのだ。自分がロリコンかどうか、そして児童ポルノに関してどう思っているかは全く別の話である。児童ポルノの否定とこの法律のもつ危うさの否定は背反しない。改正賛成派(特に女性)は相手のレッテルしか貼らないし、一方で反対派(特に男性)は「表現の自由」とか「線引きの問題」とか、意図があるかどうかはともかく今ある児童ポルノまがいのものを守ろうとするかのような発言で応対するのがいけない。


児童ポルノも認めないし、この改正案も認めない。もっと違うやり方がある。」こうやって力強く断言出来る人、とりわけ女性が出てこない限り話は平行線のままでしょう。不毛である。