エムワンダイバー

ハチワンダイバー」を見る。


柴田ヨクサルヤングジャンプで連載している漫画が原作。「このマンガがすごい!」の2008年版で1位を取った作品でもある。毎度の如く自分は原作を読んでおらず比較の感想は言えないのだが、原作ファンの友人曰く「あれは原作レイプだ」とのこと。


それはともかく自分は毎度の如くドラマ単品での感想を述べさせてもらうと、とりあえず指摘したいのは「サンドウィッチマンの壮大なコントの赴きが強い」である。


サンドウィッチマンの二人に限らず、登場人物の殆どがドラマオリジナルキャラのようなので、サンドウィッチマンだけがコントをしているわけではないんだろうが、好意的に解釈しても「サンドウィッチマンのコントDVDに豪華役者陣が登場」くらいなもんか。こんな書き方をするとサンドウィッチマンが相当目立ってたかのような印象を受けるかもしれないけど、それも違う。なんだか無駄に彼らのインパクトが強いのだ。


コワモテの伊達がそのまんまのチンピラ役で登場し、しかも風貌に関してツッコミを入れるという構図がサンドウィッチマンの漫才のやりとりそのもの。多分意図的にやってるんだろうが、その意図が自分には不明。さらに富澤が伊達の兄貴分としてちょっと偉い怖い人として登場し、そこそこ普通に演技しちゃってるのが自分にはおかしくてたまらない。どこで富澤がボケるんだろうボケるんだろうと期待していたのに、一切ボケなし。スカシである。


溝端が名前を聞かれ「ハチワンダイバーだ」と名乗ったときに「ちょっと何言ってるかわからないんですけど」と富澤が受け、伊達が突っ込んたら120点だったのに。実際いきなり「ハチワンダイバーだ」とか名乗られたらそう思わないだろうか。ま、第1話の最大の見せ場でこれをやったら物語ぶち壊して完全にコントであるが、既にコントにしか見えなかった自分には逆に物足りなく思えてしまった。


でまあ、なんでこんなしょうもない感想になってしまったかといえば、将棋を扱ったドラマなのに将棋及び真剣勝負に関しての描写がかなり薄っぺらく、特筆すべき点がないから。将棋を知らない人にも楽しめるようにというのはあるんだろうけど、あんなに将棋そのものの描写が蔑ろにされてしまえば、なぜ主人公がそこまで将棋に打ち込むのかも、そしてどれだけ凄い手を打ったのかも分からない。「とにかく凄い」という雰囲気だけで押し通そうとしている感じ。


主人公である溝端が指した将棋の駒に陽炎のようなCGがついたり、迫力に気圧され椅子から転げ落ちた富澤の描写なんかは「ミスター味っ子みてえだな」と思ってしまった。漫画原作なので迫力を出すための漫画的描写が原作にはあるんだろうが、それを今の時代ドラマでCGでやるととんでもなくチープだ。原作の面白さって対局の描写の凄さにあるはずだろうに、と原作を読んでない自分にすらそう思わせるほどチープ。少なくとも自分には溝端がどれだけ凄い手を打ってどれだけ強いのかは微塵も伝わってこなかった。


褒めるところがあるなら、「アキバの受け師」を演じている仲 里依紗(なかりいさ)が無理やり谷間を作っている感じがしてよろしいです。昨年「冗談じゃない!」で見たときはこんな谷間を出すような子じゃなかったのになあ、とか場違いな感想。溝端淳平の演技もそんなに悪くはなかった。この枠の役者をやや先取りして選ぶセンスは相変わらず悪くない。


ライアーゲーム」にしろ「ライフ」にしろ、ターゲットはこれらの原作漫画を読んでいる中高生であり彼らに向けて作られてはいたが、決して中高生だからといって雰囲気だけで誤魔化そうという印象はなかった。しかし「ハチワンダイバー」はなんとなく雰囲気で誤魔化そうとしている印象が強く、あまりいただけない。


それとも単に45分という短い放送時間に伴うドラマのテンポは、熟孝を重ねる将棋の雰囲気に合わないだけだろうか。それだけのような気がしてきた。