客を選ぶ芸とか番組

おそらく世間は稲垣メンバー金田一とか石原さとみの太腿とかに釘付けになってるんでしょうが、自分はそれほどスターでもないスターたちに大感謝ですよ。

この番組も半年に一回ながら手を変え品を変え頑張っている。ミニマラソンはもはや恒例行事となっているし、休憩中も休憩ながらこれも立派なコーナーとして成立しているところが素晴らしい。

そんな「オールスター大感謝祭」であるが、今回「カラオケ大会」が行われた。ルールはカラオケについている採点機能で、出場者の誰が一番高得点であるかを競う至って単純なコーナーである。ただ、コーナーはシンプルでも出場者がシンプルではなかった。

その出場者は山田邦子(曲:「さよならだけどさよならじゃない」やまだかつてないWINK)、布川敏和(曲:「100%…SOかもね!」シブがき隊)、里見浩太郎(曲:「東京しぐれ」フランク永井)という、完全に10代はアウトな人選&選曲である。

山田邦子の「やまだかつてないWINK」は、かつて山田邦子が絶頂期の頃の番組「やまだかつてないTV」で結成したWINKのパロディユニットだったが、結構売れてしまったという記憶がある。ちなみにこのときの山田邦子の相方だった女性はその後ヌード写真集出したりしてますが、今は何やってんでしょうか。ここらへんは20代でギリギリセーフである。

布川敏和のシブがき隊は自分が説明するまでもなく80年代を代表するアイドルグループのひとつである。ただ、若者が彼らを「元ジャニーズ」と認識しているかは不明だが。カラオケでは布川とともに薬丸が一緒に踊っていてちょっとだけプレミアでした。シブがき隊がストライクゾーンになるのは30代である。

そして極めつけは里見浩太郎の「東京しぐれ」。実際、自分はこの曲について全く知識がないのでどう説明していいかわからない。結局50代とか60代とか、それくらいの年齢でないとわからないつうことになるだろう。

今回歌ったメンバーに年代差はあれど、一応20代であればなんとか「分かる」くらいのメンバー&曲だったはずだが、10代には全く分からなかったであろう。シブがき隊は聞いたことあるかもしれないが、東京しぐれは勿論、やまだかつてないWINKの存在すら知らないんだろうなー。


この説明で、今回のカラオケ大会が10代をおいてけぼりにする番組構成だったことがおわかり頂けたであろうか。それを分かっていただいた上で今回の話。

実は、自分はこのようなある程度客を限定した番組とか笑いというのが大好きである。だから今回のカラオケ大会も非常に満足である。どのくらいの10代が見ていたかどうかは分からないが、見ていた10代はこのカラオケ大会がつまらなかったであろう。それでいいのである。

最近、どうしても若者、もしくは万人に受けるようなものが良しとされているきらいがある。自分はそれが気に食わない。万人に受けるものがいいのはわかるが、万人に向けて作られていないものの価値も認めたい。

今回のカラオケ大会、バランスよく考えるならば若手の芸人にでも歌わせておくことだって可能だったのだ。それを敢えて年齢が高めの人間を配置することで若者無視ですよ。これがなんかこう痛快なのだ。「わからんなら別についてこなくていいよ」という、ある種大人の傲慢な部分が見えたりするわけね。

それと同じような「大人の傲慢さ」を感じる芸人が田上よしえユリオカ超特Qだ。田上は平気で20代以上がターゲットのWINKネタとかをやるし、ユリオカにしても年齢や趣味を選ぶマニアックなネタが多い。両者とも意図していないかもしれないが、確実に客を選ぶ芸風だ。だからこそ、田上はちょっと前まで女芸人を引っ張る立場にいたのにいつのまにか女性芸人ブームから一歩出遅れてしまった。ユリオカにしても、一向にブレイクする予感がない。これはやはり若者が食いついてこないからだ。ただ、自分はそれでいいと思う。

若者に受けることが必ずしも最上の笑いではないと思う。そんな信念があるかないかはわからないが、かたくなに客を選ぶ芸風を続ける彼らが自分は好きだ。もっとも、田上にしろユリオカにしろ「エンタの神様」に出演していたときのネタは万人受けするようなネタを選んでおり、牙のぬけたオオカミ並に平凡な笑いであった。あれじゃダメ。

誤解なきようにもう一度言うが、万人に受けるものが悪いとは言っていない。むしろそちらのほうが好ましいとさえ思う。ただ、そんな「万人受け」がスタンダードな現在のお笑いやテレビ番組のなかで、万人に受けないようなターゲットを絞った笑いや番組というものに自分は妙な痛快さを覚え、それがたまらなく好きだったりするわけで。