師匠にだって限界はある

笑点」はもう永遠に続くんじゃないかってくらい長寿番組であり、自分が物心ついた時から歌丸師匠は死ぬといわれていたが、まだ死んでない。一度入院したことはあったものの、それでもなおしぶとく生きている現状を見れば、まだまだ安泰のような気もする。

そんでまあ「笑点」の歴史を語るにおいては、自分の記憶のあるあたりから語ることしか出来ないゆえ、今回の話に何らかの齟齬があっても大目に見て欲しい。とか断るまでもなく自分の文章はいつでも何らかの齟齬があるようなものなので何を今更。

笑点メンバーにはみな何らかの「持ちネタ」がある。前述の歌丸師匠の「死にネタ」もそうだし、「奥さんの富士子ネタ」もある。楽太郎師匠ならば「腹黒ネタ」やら「インテリネタ(メンバー唯一の大学卒業)」や、こん平師匠の「大食いネタ」など、挙げればキリがない。

しかし、これらのネタは必ずしも昔からあるわけではなく、最近になって形成されたものもある。その分かりやすい例がこん平師匠の「1,2,3,チャラーン!」という、元々の持ちネタ「チャラーン!」の発展系である。また、喜久三師匠の「オチを先に言われる(ネタ:必ずしも本人が望んでいるわけではないのでネタと言い切れるかは微妙であるが)」も、最近目立つ。昔もオチを先に言われることがあったが、今では客が虎視眈々とその機会を窺っているようにさえ見える。

あぁ、本編導入までがちょっと長すぎた。

さて、ここからが本題。で、日曜に放送された「笑点」において、観客がオチを次々に答えてしまうという異例の事態が起きた。

お題は「森山良子のヒット曲『さとうきび畑』の耳に残るフレーズ『ざわわ・・・ざわわ・・・』の部分を変え、そのオチに繋がるように前フリをして答えなさい」というものだ。言葉で説明してもイマイチピンと来ないので実際に書いてみると

回答者「最近人気の犬です」
馬(円楽)「なんですか?」
回答者「チワワ・・・チワワ・・・」

面白いか面白くないかは別として、こういう流れである(言い訳じゃないけど、この回答は実際に放送されたのよ)。

で、実際にこの問題は答えを作るのが難しい。「ざわわ」の語感が「あああ」なので、ただ単に3文字で替えればいいというわけではなく、やはり「あ」の語感を上手く残して答えを作らざるを得ない。そうなれば導き出される単語は数がある程度限られるわけで、しかも前フリによってはもうこれしかねえだろというものがあまりに多く、結果的に観客がオチを次々と答えるということが可能となってしまい、先にオチを言われた人は座布団を次々に没収されていくという罰ゲームのような状態となった。

まあ、たまにはこういうのもあって悪くないとは思うんだけど、ちょっと疑問を挟みたくなる。

この問題自体、既に欠陥があるんじゃなかろか、と。

前述したがこの問題、ひねった答えを作るのは結構難しい。それは例題として考えた時に回答例をシミュレーションをしてみれば容易に想像がつくことである。おそらく問題だって3問を思いつきで作っているわけではなく、10問くらいの中から厳選して問題として使えるものを採用しているはずである。そうでなければ、もはやその時点で問題があると言わざるを得ない。

で、勿論そのようなことが行われているという前提で話を進めるが、そうであるならばこの問題の回答例を作り出す時点になって、ボツが出なかったのが不思議で仕方ない。もし自分がその仕事に携わっているならば、間違いなくNGを出すだろう。そりゃベテランの師匠にかかればこのようなヒネリを効かすのが難しい問題でもいとも簡単に仕上げるという可能性もあるんだろうが、だからといって師匠とて限界がある。やはり出来ないものは出来ないのであるから、これを問題として採用する裏方のほうに問題があったように自分は思うわけである。

大喜利のお題というのは、出演前にある程度聞かされているという話を聞いたことあるが、もし今回のお題を前もって聞かされていたならば、メンバー全員がこぞって「やりづらいなぁ」と感じたのではなかろうか。

最後に。好楽師匠がつまらんと思っている人は世間にどのくらいいるかわからないが、今日の好楽師匠がつまらなかったのは決して本人のせいではなく問題のせいだと言いたい。いや、自分は好楽師匠好きですけどね。つまらないのではない。地味なだけ。