ジャパニーズ・ドッキリ

「ロンドンハーツ」に唸る。


「ロンハーにも出てくれるハーフタレント発掘オーディション」と称して、3人のハーフタレントをドッキリにかけるというもの。定期的に「新人」を発掘する番組のフォーマットに乗っかっているので新しさはないけども、既存のバラエティタレントに埋もれている「人材」を発掘するその姿勢は当然ながら買い。やはり横綱相撲が出来る番組にはこういう余裕があるから素晴らしい。新人を発掘することに関し、「ロンハーに向いている」タレントを外部から持ってくるよりは自分たちで探してしまうほうが理に適っているんだろう。


んで、そのオーディションの最後に行われた「3段ドッキリ」が恐ろしくよくできている。一人目は普通に騙して落とし穴に落とさせる。そして最初に落とされた人は次の人が落とされるのを見学させる。ここまででも「いったいどういうリアクションをするのだろうか」という心理を追いかけることになる。この心理描写含めての「ドッキリ」だ。


そして3人目には「ドッキリで落とし穴が仕掛けられている」ことを予めマネージャーを通じて伝えておく。しかし落ちない。最初に落とされた二人は「落ちると思っている」し、3人目は自分が落ちると思っているのに落ちない。しかもステージには「あからさまに落とし穴」らしき場所があるのに、だ。一旦スタジオから出るとともに、またマネージャーに「どうやら落とし穴は作動しないようだ」という情報を仕込んでおき、そして次ステージに行ったら、今度は本当に落ちる、というもの。落ちた本人は何が起きているか分からないし、最初に落とされた二人も混乱する。見ているこちらはもうただただ感心するしかない。


今までロンハーのドッキリに対しては何度も言及しているのだけども、もう本当にこの番組と田村淳はドッキリに関してマラソンで10キロ以上離してぶっちぎるぐらいに他の追随を許していない。特に今回のような「心理的にグラグラするドッキリ」は海外にはとても真似できないだろう。あったらごめんなさい。


いわゆる「ドッキリ」というのは海外でも非常にメジャーなコンテンツだ。自分は当然に日本在住なので海外のドッキリ番組をたくさん知っているわけではないんだけど、「世界まる見え」なんかで目にするドッキリ番組といえば、本当に単純に人を「ドッキリ」させる番組が殆どだ。もちろん今の日本ではとてもコンプライアンス的に無理なものがまだまだ存在しているので、それだけでも「海外のドッキリはおおらかだなあ」とか思えてしまう。特に素人に対するドッキリがまだまだ文化として寛容に許されている。


しかし今の日本では許可のない素人は顔をボカされるような時代である。素人にドッキリを仕掛けることができなければ自ずとその対象は芸能人となり、ドッキリが仕掛けられすぎている芸人はもはや本当の意味でドッキリしない。だからこそ日本のドッキリは「単純に驚かせる」ものから、独自の進化を遂げているのだ。ガラケーならぬガラドキだろう。


その最終進化系が「ロンハードッキリ」だ。単純に心拍数が上がるのではなく、心拍数を「狂わせる」精神的にグラグラするドッキリ。これってホラーの構造とよく似てる。血がドバーっと出るようなホラーは描けないが、心理的に追い詰められる貞子のような恐怖を提供する。ジャパニーズ・ホラーならぬジャパニーズ・ドッキリ。世界に誇るコンテンツになる。かもしれない。


同時進行ドッキリ、テイク2ドッキリ、長期間大掛かりドッキリ、彼らが発明し世に送り出したドッキリは数知れない。今回のように小技が効いた心理ドッキリも、地味なんだけどジワジワ、そしてゾクゾクくる。


ま、そんな裏でギバちゃんが応援団やってるのも結構ジワジワ、ゾクゾクくるんだけど。

リアル・ジャパニーズ・ホラー

NHKアナの住吉美紀は放送しちゃいけないレベルで精神が不安定だと思うんですよ。


NHK「プロフェッショナル」でお馴染みだった住吉アナだが、NHKを退社後鳴り物入りでフジの情報番組「知りたがり!」を担当するも1年で終了。その後ぱっとしないわけだけども、それがモロに悪い影響が出ている感じ。以前に「さんま御殿」で号泣したり文句言っているときに「あ、これはリアルでヤバい人だな」と思ったが、今放送している「今夜くらべてみました」で確認して改めてヤバかった。


とにかく、感情の起伏がおかしい。カラオケで急に泣き出したかと思えばノリノリで歌ったりするし、テンションが常軌を逸しているように思う。もちろん取材が入っているので多少オーバーに表現しているところもあるんだろうが、なんかそういう次元ではない危うさを画面の中からヒシヒシと感じる。貞子が出てくる直前のテレビもたぶんこんな感じなんだと思う。以前の華原朋美に対する「腫物感」に似ている。


同じヤバめの人でも脊山麻理子アナのほうがまだ全然安全だ。グラビアやって酒飲んでは酔って、とかなりやりたい放題やっているけども、脊山アナの場合はまだ自我を保っている感じがする。住吉アナはもう自制が効いてないもんなあ。


オセロ中島の時にも書いたけど、本人が平気で、そしてこういう番組のように「面白いこと」として処理できる、してもらえるのであればそれは芸能人の生き方の一つとしてアリなんだとは思う。「アウトデラックス」や「有吉反省会」のように、ダメな部分にスポットライトを当てて番組にするという発見が出来たからこそ、こういう機会が与えられるのは作る側も出る側にもそれなりのメリットはあるんだろう。


けど一人の人間レベルで考えたら、もう今回の放送なんて(以前に放送された「さんま御殿」なんてのは特にだけど)確実に「どうかしてる」レベルである。笑うのが難しくなってくるレベル。人間が精神的にジワジワやられている様をバラエティとして放送する。これが日本が誇る「ジャパニーズ・ホラー」である。蒸し暑い夜にゾクゾクしますね。こっちは本当に。ギバちゃんどころじゃない。そこらへんの境界線が曖昧になってきていることが、実は一番怖いのかもしれない。