ゴールドフィンガー

ゴッドハンド輝
週刊少年マガジンで連載中の同名漫画を原作としたTBSのドラマ。


自分もかつて週刊少年マガジンの読者であった。毎週マガジンを買っていたのだが5年くらい前に「もうあんま読むとこない」という理由で購入をやめた。今では毎週数本の連載を立ち読みする程度であるが、そんな自分がマガジンを購入している時から「ゴッドハンド輝」(通称「ゴッ輝」)は連載していたし、未だに立ち読みで毎週読んでいるマンガでもある。


だからドラマ化に関して、毎度のように「原作未読ゆえ、ドラマとしての評価は」というスタンスではなく、完全に「原作のファンとして」の視点になる。自分にしては非常に珍しいパターン。


なもんで、初回を期待半分不安半分で見てみたものの、出来としては「原作に割と忠実で出来はまあまあ」という感じでした。マンガの表現だとさほど気にならなくても、ドラマにしてみれば荒唐無稽でウソくささが目立ってしまう部分が多少あったものの(さすがに新米の外科医があんな大それた手術をやり遂げてしまうのはマンガだわな)、なんとか原作の面白さを伝えようとしているのは伝わってきた。ただ少しその面白さの方向性を間違えているような気がしないでもない。


輝の胸の痣はマンガでは最初は「本人が思いもよらないような潜在能力が発揮される」みたいな感じで出てくるんだけど、段々と「訓練や勉強によって蓄積された内在している力を引き出すときの契機になる」程度に落ち着いてくるわけで、あまり特殊能力というわけでもない。けどドラマの初回を見ると明らかに「んなバカな」な特殊能力になってしまってるわけで、原作を知っている人ならばいいけど、知らない人が見ると「特殊能力で全て解決」みたいな短絡的なイメージを持たれて敬遠されてしまうかもしれない。


でも胸の痣を特殊能力のように描こうとしているのも多少同情すべき点がある。それはこのドラマが全6話であり、そんなに悠長にテルの成長を描くことが出来ないからだ。せめて10話もあればテルだってそれなりに成長できるのだろうが、6話じゃそんな余裕もない。じゃあなぜ6話なのかといえば、エピソードが短いからではなく(原作は現在単行本で45巻まで発売中)、この後にキムタクが主演するドラマ「MR.BRAIN」が控えているからだ。いわばこのドラマはキムタクドラマが始まるまでの場つなぎなのである。だから中途半端な話数にさせられてしまった。


なもんで、原作に忠実に描きつつ、ライバルの四宮慧を妹の梢に差し替え、しかも原作ではヒロインである看護師の綾乃さんを差し置いて(ドラマには存在するにも関わらず)ヒロインの座に据えてしまうことも「仕方ない」と言わざるを得ない。どう考えても無理無理な展開ではあるんだけど。


しかも不幸なことに主題歌として予定されていた「Aroud ザ World 少年」という珍奇なタイトルの曲を歌うはずだった「ONE OK ROCK」(「ワンオクロック」と読む)のドラマーがあろうことに痴漢で逮捕され(それこそゴッドハンド炸裂と言わんばかりに)、主題歌が未定のままドラマが始まってしまった。ちなみにこのバンドのボーカルはかつてNEWSに在籍していた森進一の息子である。かつて自分の不祥事でNEWSからひっそりといなくなったことがあるだけに、今回のドラマーの不祥事に対してどんなリアクションを取ったのか気になるところではあるが、それはどうでもいい。


ドラマの存在そのものが場つなぎで展開が厳しく、主題歌はポシャるといいとこがまるでない「ゴッドハンド輝」。今後も原作ファンでなければ特段見所もないような気がします。ただ主演の平岡佑太は「ミスター子分(子分役が超似合う)」であるにも関わらずそこそこいい演技してますし、安田院長を演じている渡部篤郎は非常に原作の感じが出ていたりと、役者陣は割といいのが非常に勿体無い。まだ初回が始まったに過ぎないんだけど、もう今から「せめて9話あればもっといい出来だったろうに……」と言っておきましょう。