「あいのり」と私

フジの人気番組「あいのり」が3月で終わるそうだ。「恋愛観察バラエティー」と銘打たれ、男女数名が「ラブワゴン」と呼ばれる番組が用意したワゴンに乗り込んで世界中を旅しながら恋愛を進め告白、カップル成立なるかという番組でした。テレビの歴史を紐解いても、恋愛(出会い)を番組にしたものは多く、古くは「パンチDEデート」「プロポーズ大作戦」「ねるとん紅鯨団」、今も続く「新婚さんいらっしゃい!」などジャンルとしては極めてポピュラーといえる。だが一方で他人の恋愛を覗き見るという意味では非常に下世話なジャンルでもある。


「あいのり」は「男女8人恋愛ツアー!TOKIOのな・り・ゆ・き!!」を前身に10年も放送が続いたらしい。どんな番組でも10年も続ければそれは立派と言わざるを得ない。言わざるを得ないが、やっぱり自分はこの番組が非常に苦手であった。もっとどストレートな言葉で書けば「嫌い」だ。モテない男である自分が、何が哀しくて他人の恋愛を見なければならないのかと。同時に他人の恋愛を嬉々として見守る奴らの気が知れない。


ただ、だからといって自分にとってこの番組の存在意義がなかったわけではない。なぜならこの番組を真剣に見ているヤツとテレビのことを真剣に語れるわけがないという自分の中でのルールが出来上がっていたからだ。この番組を毎週欠かさず見ているような人間と自分は根本的に嗜好及び思考のスタンスが違う。だから自分にはこの番組がリトマス試験紙のような扱いでもあった。


誤解なきように言っておけば、どちらがいい悪いの問題ではない。何度も言っているがテレビに限らず何事も「楽しめないよりは楽しめたほうがいい」に決まっているわけで、この番組が楽しい人はそれで全然OKなのだ。自分がこの番組が嫌いだったことに関し偉いわけでもなんでもない。むしろ自分の経験を言わせてもらえば、「あいのり」が好きだという人間は大方真っ当に生きている人間であり、自分を含め「あいのり」が苦手な人間は色んな意味で「ダメ」な人間ばかりだ。


それはともかく、「あいのり」を見ている人間と自分とでは心の底では通じ合わないということだけは紛れも無い真実である。もし自分が結婚相談所に登録することがあれば、条件として「あいのりを見ない人」と書こうと思っていたくらいだ。


そんな自分がいかに「あいのり」に対して興味がなかったかを表現するため、自分が持っている「あいのり」に関する「浅よくない」(深イイの真逆)エピソードを2つほど紹介しておきます。

エピソード1「大学のゼミの教官」

大学時代在籍していたゼミの教官の部屋に行ったときのこと。まだゼミに入りたてであり、ゼミの教官の人となりもまだよく把握出来ていなかった。大学の教官にしては若い先生だったので割と親近感を抱いていた。ただ、教官室であらゆる文献とともに置かれていた「あいのり」の単行本を発見。当時「あいのり」の単行本が出ていることすらも知らず、そんなものをあろうことか教官の部屋で見つけてしまった。


自分はこれ以降教官を「教官としては尊敬するが、人間としては尊敬しない」と決めた。

エピソード2「唯一見たあいのり」

自分が高校生だったか浪人生だったか大学生だったかは忘れてしまったが、試験勉強から逃避するようにテレビをつけたら、たまたま「あいのり」が放送されていた。普段なら絶対に見ない番組ではあるけども、試験勉強の逃避の時ってどんな番組でもとりあえず見てしまう癖があり、あろうことに「あいのり」を全部見てしまった。


当然前の週までのことなんて知らないので、番組が流す「先週までのあらすじ」みたいなのを漠然と見て「へー、世の中物好きがいるもんだな」と思っていた。するとその週はなんだか告白タイム(という呼称が用いられているかどうかは不明)があるとのことで、番組そのものが盛り上がっている模様。でまあ、結果は忘れてしまったが番組は恙無く終了。久本あたりがひとり盛り上がっていたような気がする。


ただこの時は知る由もなかったが、それから数ヵ月後、そこで告白をされていた(かしていたかは忘れたが)女性がAV女優としてデビューするという話題を目にして、「ああ、つまりはこういう番組なのね」と妙に達観したことは覚えている。有名だとは思うが、その時の女性とはこの人。この女優名も番組で用いられたあだ名だったりする。自分のエロに関する引きの強さだけは本物。



いやあ、書いてはみたもののおそろしく薄っぺらいエピソードです(笑)。まあ自分にとっての「あいのり」なんてこの程度のもんです。とはいえ10年間お疲れ様でしたとは言っておきましょう。蛇足ながら番組の結末を提案しておくと、最後は全員に何がしかの告白をさせ、カップルが成立しなかった男女をラブワゴンに乗せたままソマリアの海域に行き、海賊に襲われればいいと思います。