綺麗ア・ラ・モード

新年一発目は景気のいいこと書くべきなんでしょうが、このサイトの悪い癖で新年一発目は「誰も読んでないだろう」という決めつけのもと、大概暗いこととか批判めいたことをしかも長々と書くことになってます。今年もそうさせていただきます。


「アメトーーーーーク」SPを見た。家電芸人と中学イケてない芸人。中学イケてない芸人は年明け一発目に完全版を放送するということで不完全燃焼な部分もあるだろうが、それでも充分に面白かった。やはり暗黒時代を送っている人間じゃないと面白いことって考え付かないよなあ、と。素養の問題であります。


家電芸人のほうは、うん、ダメでした。番組ミシュランのほうにも書いたのですが、企画が進むにつれて「単なる自慢大会」に堕している気がする。そもそも家電なんてそうそう買い換えるもんではないわけで、稼いでいる芸能人がポンポン家電を買い換えるのとは訳が違う。


家電自慢と鬱陶しいオセロ松嶋に終始ぐったりした感じだったが、一番温度差を感じたのは地上波デジタルのくだり。ブルーレイの美麗さを力説する家電芸人らに対し、会場のお客さんのブルーレイ普及率はゼロ。アナログ受信をしている人も多く、録画にVHSを使っているお客さんは半数以上にのぼり、テレビデオを使っているお客さんも1割ほどいた。


これに対し家電芸人は「信じられない」だの「笑点の客」だの言って時代遅れだと指摘。品川はVHS映像の綺麗さを1だとしたら、DVDが50でブルーレイが100だと説明し、「いやでもVHSからいきなりブルーレイに行く人はその上がり方が違うから羨ましい」みたいなことを平気でいいやがる。完全にDVDを経ている自分に優越感を持った発言だ。やはりこいつはおしゃべりクソ野郎だ。


そりゃアナログ放送は2011年7月24日に終了するわけで、デジタル放送及びデジタル対応の録画機器にしなければならない。けどまだ2年半もあるのだ。これから技術が進めばまだまだ安くなる可能性は大なわけで、今のものがダメになったり金に余裕がない限りは、そうそう買い換えるものではない。家電というのは値段上そういう性質のものだ。


だからこの数字だって2011年までには大幅に改善するだろう。ただ、一番危惧すべきことは「デジタル放送を契機にテレビから離れること」だろう。


はっきり言って、現在のテレビは完全に「惰性で見るもの」と化している。「とりあえずつけている」ことが最大の目的と化し、自分のように目的をもって能動的にテレビを見ている人間はほんの一握りだろう。だからこそ今の放送が見れなくなれば「じゃ、もういいや」となって今よりさらにテレビ離れが加速するということは大いに考えられる。


にも関わらず、VHSやアナログ放送をバカにするっていうのは完全に危機感が欠如しているだろう。「時代遅れ」だなんて言ってるほうがどうかしてる。この人たちが丸々デジタル放送に移行すると思っているほうがおかしい。


まだ時間があるしお金も潤沢ではない。何よりまだ使える。だから買い換えない。これがおそらく一番の理由だろう。しかしその裏側には「何も買い換えてまで見るべきものなんてない」という心理が介在してないだろうか。


本当に必要であれば換える。「綺麗なことが必要である」としてこの大前提に立ち戻れば、キレイなテレビもキレイな録画機器ももっと売れていても不思議じゃない。けど会場のお客さんの普及率はイマイチ。一応番組の観覧に来るくらいだからテレビもそこそこ見ている人たちのはず。けどあんまり普及してない。これはつまり「キレイに見れるテレビはさほど必要とされてない」ってことじゃないのか。


いやそりゃ画面が粗いのと綺麗なのでは綺麗なほうがいいには決まっている。かといってテレビに必ずしも「綺麗であること」を求めている人はあまりいないのではないだろうか。綺麗であることは嬉しいけども、そんなに綺麗じゃなくていいよ、と。


何しろ家のテレビでそんなに綺麗だからって何の得があるというのか。家電芸人を放送している「アメトーーーーーク」だって、綺麗な画面で見たから「何?」という話でしかない。なにしろながらでテレビを見ている人にそこまでの「綺麗」は必要ない。何せちゃんと見てないんだから。


そして現在の地上波放送の番組に、デジタル放送の必要がある番組がどれだけあるというのか?まあ映像が売りの映画やスポーツ観戦なんてのは美麗なほうがいいんだろうが、少なくともバラエティ番組にその必要はないだろう。ドラマも不要だ。出演者の顔のアラが目立ってしまう。


にも関わらず、テレビに出ている人間たちが「テレビがキレイなのは最高!」と言ったところで何の説得力もない。なんでオマエラの顔を美麗な画面で見なければならないのか。そんなに自信あるのか。芸人なんて特にアナログ放送の画質でVHS録画したものを見るだけで充分だ。


自分には、会場のお客さんのアナログ率を嘆く姿が「ああ、こいつら分かってねえな」と素直に思えた。信じられないのは家電芸人のほうである。お客さんが時代遅れなのではなく、「おまえらごときを見るのに美麗な映像なんて必要ねえよ」と間接的に言われているのに気付かない。もちろん時代遅れの指摘を重ねるのばバラエティの手法であるので芸人たちがどこまで本気かは分からないけども。


綺麗なテレビや録画再生機器を普及させるのであれば、それ相応に価値があるソフトがないとダメだ。現在の地上波の番組にそれらを必要とする番組はバラエティには存在しない。にも関わらずバラエティ番組でキレイであることの素晴らしさを力説する家電芸人に「それでアメトーーーーーク見てなんか違うの?面白くなるの?」と聞いてやりたい。


単に面白い番組はアナログでも面白い。それだけの話じゃねえのか。普及率の低さを嘆くなら、あんたらが「綺麗な映像でなおかつ面白い番組」を作ってくれよ。そしたら買う。