携帯電話に非通知のワン切り着信がたまにあるんです。
ワン切りという行為は主に「着信の表示を残して、相手に電話をかけさせる」ことを目的としている。それは時に「おめえに費やす電話代はないから、そっちからかけてこい」という意思表示にもなり、または「この着信誰だろう？」と思わせてリダイヤルしたら悪徳業者に尻尾をつかまれてしまう。おそらくは後者の目的のワン切り着信は携帯電話を所持している人なら一度や二度経験したことがあるだろう。
それゆえ、折り返しの電話が出来ない「非通知のワン切り」というのは目的が分からない。ただ非通知の着信が残るだけでは何の意味もなさない。自分の携帯にも月に一度くらいのペースでこのような現象がある。時間帯もまちまちで、まったく統一性がないのだ。もしこれがしょっちゅうかかってきたり、時間帯など何か統一性があれば「誰かの仕業」という可能性もあるのだろうが、思い当たるフシもない。
必要最低限の人間にしか携帯の番号なんて教えていないし、見知らぬ人間からの非通知のワン切り着信など受けるいわれもない。自分が女性なら「ストーカーかも？」と疑ってしまうかもしれないが、生憎ストーカー犯に間違われることはあっても、ストーカー被害に遭う覚えもない。それゆえ不気味ではあるけども、特にどうという感想もなく放置していた。
それが先日、自分の誕生日にあったもんだからちょっと気になったのです。
誕生日だからといって友人からメールの一通が来るわけもない交友関係しか持たない人間ですから（まあ成人男性なんてそんなもんだと思いますけど）、誕生日に限らず携帯に着信があるなんてこともそうそうないのです。それが誕生日に携帯が鳴ったのだから驚いて。しかもすぐ切れるし。
ただ、そうはいっても一応それなりに生きているので、非通知とはいえ誕生日に電話をくれる人間がいてもおかしくない。かといってわざわざ誕生日に電話をかけてくる人間が非通知でワン切りするか？とも思う。どれだけひねくれた愛情の裏返しなんだろうと。そんなひねた愛情を受けるような記憶もないので、これも却下。となるとやっぱり不思議だ。
でまあ、いい機会だから「非通知ワン切り」の謎をネットで調べてみたわけです。すると案外簡単に答えらしきものが見つかりました。どうやら名簿作成業者が「使える携帯番号」をリサーチしているらしいのです。その電話回線がまだ生きているかを専用ソフトが自動的に電話を発信させ、繋がったら即切れるように設定してあるとのこと。繋がれば回線が生きているし、繋がらなければその回線は死んでいる。そうして「使える回線」の名簿が出来上がるようで。その繋がる電話回線の名簿が何に使われているかは知る由もありませんが、どうやらそういうカラクリがあるとのこと。機械任せだから着信の時間も24時間いつでも有り得るらしい。
つまりは月１ペースくらいで自分の携帯がまだ使われているかどうか調べられているようです。その情報がどのように使われているかを考えるとあまり気分のいいもんではないけども、実害を被っているわけではないからさほど気にもならない。イヤなら携帯持たなければいいだけの話だし。
ここまでの話、実に夢が無い。単に自分の電話回線が生きているかを月イチで機械によって調べられているだけ。気分もあまりよくない。
だから自分は前向きにこう考えることにした。
「月イチで堀北真希が自分に告白しようと思うけど、出来ない」
着信を残しているにも関わらず何故非通知なのか。それは相手に自分の正体を知らせることなく存在を示したいからでしょう。そうです。堀北真希さんは自分のような下賎な人間に連絡先も正体も知られてはいけませんが、何か理由があって電話をかけてきているんです。自分は堀北さんに借金をしていないので借金の督促ではないだろうし、彼女が医者だという情報も聞いたことがないのでガンの告知でもない。となると、あとは自分に電話をかけてくる用件といったらそれは愛の告白しかないでしょう。いつにも増してロジックがメチャクチャですが、それでいいんです。
「それだったらワン切りではなく長いことかけたらいいじゃないか」と思うでしょう。甘い。堀北さんは純情可憐な乙女ですから、いつも告白をしようと思って電話の発信ボタンに手をかけるけども、すぐに切ってしまうのです。これが多江さんのような人妻であったら少なくとも3回くらいはコールできるはずなので、この電話は多江さんではなく堀北さんなのです。なんとロジカルな推理でしょう。
毎月のように愛の告白を用意する堀北さん。しかし心の準備が出来ずにすぐに切ってしまうその乙女っぷり。そんな彼女という人間を如実に表現した行為が「非通知ワン切り」の正体だったわけです。
自分の場合は堀北さんでしたが、これは別人でも応用可能です。女性であればうぶな男性に置換してもＯＫであります。好みに合わせて「非通知ワン切り」の正体を設定することで、不気味な着信があっという間に「思われている電話」に早変わり。ドラマの主人公気取りで非通知ワン切りをやり過ごすのも、悪くない。
