I AM YOUR CHAMPION

「TVチャンピオン2」でゆるキャラ王選手権。


2年半前に開催された「ゆるキャラ王」。MJ(みうらじゅん)の悪ノリが遂に番組になったと大笑いしながら見た記憶があるし、ここに書いたような気もする。確か放送直後に第2回の募集をかけていたはずなのだが、今になってようやく放送された。


前回の放送時はまだ90分だった(正確にはまだ「TVチャンピオン」だった)のだが、今回は60分のなかで程よくまとまっていた印象。もっともこれだけユルい放送なのだから60分で充分だとは思う。書類審査を突破した20のゆるキャラが本戦に出場。審査委員長のMJと審査員の夏川純、そしてもうひとりの審査員だったリリーフランキーは1時間の遅刻。ゆるキャラ王選手権だからといって遅刻が許されるわけではないだろうが、別に審査員がいようがいまいがさほど関係がないので別によい。


今回は競技どうこうよりも、競技のなかで「いかにユルいか」を競う側面が強く、審査員のハートを鷲掴み(といってもユルくだが)したキャラが順当に勝ち残っていった。正直「ひこにゃん」は全然ユルくないと思うのだが(あれだけ完成された可愛さは全然ユルくない。勘違いしている人もいるだろうが「ユルさ」と「癒し」は全く別物である。この基準だったら北海道岩内町の「たら丸」はちっともユルくない。ユルさ極まって癒されるというのが正解)、ひこにゃんが持っている顧客吸引力(=視聴率)を考えれば早々に落とすわけにもいかず、なんだかんだで決勝まで残されていた。決勝の相撲ですぐ負けたが。


優勝したのは本州四国高速道のマスコットキャラである「わたる」。前回3位の実績をひっさげての優勝であるから文句なし。しかしやはり注目せざるをえなかったのは北海道岩内町のマスコット「たら丸」。前回今回と準優勝。足はそのまま中の人という動きやすさを武器に決勝の相撲では次々と他のゆるキャラをなぎ倒すというヒールっぷりを発揮するが、前回に引き続き今回も決勝で苦杯を舐めることに。


しかし自分は見抜いていた。たら丸はゆるキャラ界のヒールにして「デキる男」であることを。彼は勝とうと思えばいくらでも勝つ手段がある相撲において、前回も今回も「わざと負けた」のである。それは自分があくまで「ゆるキャラ王選手権」という枠組みのなかでヒールの役割であり、勝ってはいけないことを知っているのだ。彼の圧倒的な動きやすさで優勝すれば、企画そのものがどっちらけになることを彼はちゃんと見抜いている。だからこそ彼は決勝で「わたる」と真正面がっぷり四つで組み合い、そして投げ飛ばされるのである。


もし録画している物好きの方がいれば、最後の取組をもう一度見直してほしいと思う。たら丸がわたるに投げられるシーンで、わたるがたら丸を浴びせ倒そうとしている土俵際、あのまま倒れればたら丸よりもわたるが先に地面につきそうだったのをたら丸が察知して、自分の体を半分ひねって先に落ちようとしているではないか。これこそ悪役の美学。見せ場は作るが決して勝たない。その精神はちっともユルくない。よって自分はたら丸こそゆるキャラでありながらちっともゆるくない立派なナイスガイだと認定することにする。


というわけでユルいながらも最高に楽しい番組だった。



本来ならここで自分の文章も終わるはずだが、残念ながらここで終わるわけにはいかない。なぜなら、来週をもって「TVチャンピオン2」は最終回を迎えるからである。


92年より16年もの間続いた「TVチャンピオン」(「2」になってからは2年間だけど)が遂に終了する。この一報を知ったときはかなりショックだった。なぜならバラエティ番組としてこれほど懐の深く、そしてTVのよさを発揮している番組はなかったと思っているからだ。


誰もが唸る職人技を競ったり、なんでそんなバカバカしいことを真剣に競うのかと思うような競技を競ったり、はたまた「こんなものまで競えるのか?」という題材まで扱ったり、さらには「世の中にはこんなマニアもいるのか」ということを知らしめたり、今のバラエティの要素が全て含まれていると言っても過言じゃない。そして「TVチャンピオン」というブランド力。どんなに小さなことでも、「TVチャピオン」という称号があれば、それは立派なチャンピオンとなった。普段は日の目が当たらないような人にも光を当てる。それがTVチャンピオンの良さではなかっただろうか。


ここ数年の中で自分が面白かったのは、ここにも書いたが「滝通選手権」だった。滝マニアによるマニアのための放送。どう考えても視聴率の取れないような企画であるにも関わらず、それを堂々と放送するこの潔さ。そして滝マニアの方々のイキイキとした顔。自分は「これぞTVチャンピオン」と快哉を叫ばずにはいられなかった。


今回放送の「ゆるキャラ王」も含め、硬軟取り混ぜた企画全てのチャンピオンが「TVチャンピオン」と名乗れる。なんて素晴らしい番組なのだろうか。しかし、この「TVチャンピオン」の称号も、残すところ次週の「和菓子職人選手権」で終了だ。最近は放送していなかったが、最終回に相応しい企画として選ばれたのだろう。個人的には「手先が器用選手権」しかないと思うのだが、番組全盛期の人気企画だった和菓子職人でも異論はない。


「TVチャンピオン」終了後は、歴代チャンピオンたちによるお助け番組が始まるらしい。「愛の貧乏脱出大作戦」のTVチャンピオンバージョンとでも言うのだろうか。職人系のチャンピオンは存分に活躍出来るだろうが、前述の「滝通選手権」のチャンピオンは何かに活躍出来るのだろうか。そこが気になる。


というわけで、来週の「和菓子職人選手権」で、TVチャンピオンは16年の歴史に幕を閉じる。90年代を支えた番組の終了ということで、バラエティ番組の大きな歴史の区切りと言ってもいいだろう。そんな歴史的な番組の最後は日本全国が刮目しなければならないだろう。来週木曜の19時からは正座しながら「TVチャンピオン」をご覧頂きたい。