残酷な現実が二人を引き裂けば

ラスト・フレンズ」が一応最終回。一応と書いたのは来週も再編集を加えた「特別編」が放送されるため。


山場は最終回目前の第10回で宗佑(錦戸亮)が自殺したところであり、最終回は広げた風呂敷をまとめるだけの慌しい印象。美知留(長澤まさみ)と瑠可(上野樹里)とタケル(瑛太)の3人がシェアハウスに戻って子どもの親代わりとなるという結論であるが、何も無理やりハッピーエンドらしき方向にまとめなくても良かったのでは、とは思う。


色々書いておきたいことはあるんだけど、とりあえず来週の特別編を見てからまとめたほうがいいような気がするので保留しておきます。


その代わりと言ってはなんですが、「TVチャンピオン」の「引越し屋さん王選手権」が抜群に面白かったのでそちらについて熱く書いてみたいと思います。タイトルとは裏腹に最初からそのつもりだったんですけど。


過去2回放送された「引越し屋さん王選手権」。そのどちらも優勝したマツモト引越しセンターが1回戦で姿を消すという波乱の幕開け。とは言ってもマツモト引越しセンターが1回戦で敗れたこと(およびマツモト引越しセンターの実力)がどの程度の波乱なのかはこれを読んだだけの人にはいまいちピンと来ないとは思う。かくいう自分も「波乱だ」とか書いておいてピンと来ない。でも波乱。


そんな1回戦は1チームのメンバー4人がそれぞれ役割を分担された200M×4リレー。第一走者がタンス、第二走者がダンボールを10個積んだ台車、第三走者が棚やぬいぐるみを高く積んでバランスよく走り、アンカーが重さ70キロの冷蔵庫を担いで走るという過酷なもの。どの走者も名人芸ともいえる走りをしていたが、やはり壮絶だったのはアンカーの70キロ冷蔵庫。誰の手も借りずに一人で冷蔵庫を担ごうと勢いよく背負うさまを見て「この人潰されて死んでしまうんじゃないか」と思ってしまった。冷静に考えればやっていることは相当にくだらないのに、見ていて自分でも信じられないくらい熱くなってしまった。アーク、ハート、アリさんの上位3チームが次のステージへ。


2回戦はダブルベッドを地上から5階まで搬入するタイムを競う。どのチームも同じ方法で吊り上げていたのだが、アリさんチームの手際のよさが光っていた。引越しとはチームワークの産物であることをここで再確認。いや、正確にいえば人生において今までちゃんと確認したことはないので再確認ではない。アリさんとアークが決勝進出。


決勝は実際にまるまる1世帯の引越しを実際に行い、そのサービスやテクニックを競う。とはいっても、細かく点数が決められているわけではなく、審査員の一般主婦(とは言っても芸能事務所に所属しているセミプロのようなおばさんだろうが。ひとり一青窈を20歳くらい老けさせたようなオバサンがいたのは気になった)15名が一連の引越し作業を見て、どちらの会社で引越ししたいかを決めるだけ。要は印象勝負でしかなかった。ここが勿体無い。どんなものでも適当にコメントを挟むことが出来るやくみつるあたりのような審査員も組み込んでおくべきだったと個人的に思った。


各社から選抜されてきた精鋭4名の引越し作業は実に見事。「顧客満足度NO.1」や「お客様指名度NO.1」の人がいたが、だてにその称号を得ていないなという働きっぷり。また「そこまでするのか本当に?」というようなきめの細かい(あるいは過剰とも言うが)サービスが次々と繰り広げられる様は圧巻。引越し屋という職業が肉体労働であると同時にサービス業であることを思い知らされた。この激戦を制したのはアーク引越しセンターだった。素直におめでとうと言いたい。


自分が思う「良いTVチャンピオンの条件」とは「誰も競わせようと思わないことを競わせてみる」ことと「その競わせ方が大真面目に考えたであろうのに結果としてバカっぽい」こと。そのジャンルにおいてのエキスパートが、彼らの持っている素晴らしい力を実にもったいない感じで浪費しているのが面白くて仕方ない。70キロの冷蔵庫を担いで200メートル運ぶことは引越し屋さんでもまずありえない。けど担いで走る。名人芸の素晴らしさによる感動と、行為そのものを客観視したときのバカさ。感動とバカが同居している。最高としか言えないだろ。


来週放送される「ラスト・フレンズ特別編」も楽しみではあるんだが、自分の根っこの部分で楽しみにしているのは「TVチャンピオン」のような番組だったりする。あー面白かった。そして来週こそはちゃんとラスフレについて書きます。