今年は「流行語“隠蔽”大賞」

毎年12月アタマに発表される「新語・流行語大賞」であるが、またケチのつけがいがある大賞となった。

例年は「流行語“偽造”大賞」であるが(第一「ブッチホン」なんてこれ受賞したあとにマスコミが使うようになったじゃねえか)、今年はどうやら「流行語“隠蔽”大賞」である。

今年に限っていえば珍しく「知らない言葉」がない。これって流行語なんだから当然なんだけど、例年どうもそういう感じではなかった。必ず「それは流行してない」という言葉がひとつふたつ混じっている。そしてどうも「流行語」の定義から外れた言葉が受賞しているなんてケースも珍しくない。審査員のせいだとハナっから決め付けているので当方それについて議論をするという耳を持たない。

しかも今年はどうやら「ユーキャン」というスポンサーと業務提携したらしく、その理由として

「全ての人に知る、学ぶ、喜びを提供することで、社会、文化に役立ちたい」という共通点から今回の同意に至り連携の運びとなりました。

と公式HPで発表している。名目は立派かもしれんが、単に権威がハナにつくようになってきただけだ。もともといち出版社が雑誌(「現代用語の基礎知識」)の企画ではじめたお遊び企画のような感覚だと自分では思っているのだが、なまじ20年も続けたせいか、そこに「権威」がつくようになってきたのでその権威を確固たるものにしておきたいというどうもイヤらしい感じを受ける。そこに遊び心は見えない。

しかも、今回の選考された言葉を考えてみるとある「妙なバランス理論」に気づく。

毒まんじゅう」(政治)「マニフェスト」(政治)
「なんでだろ〜」(芸能スポーツ)「勝ちたいんや!」(芸能スポーツ)
「コメ泥棒」(事件)「SARS」(事件:つうか流行病)
「年収300万」(本)「バカの壁」(本)
ビフォーアフター」(テレビ番組)「へぇ〜」(テレビ番組)

強引なくくりもあるが自分の中では「各ジャンルからふたつづつ」みたいな選考基準で選んだんじゃないか、と思う。そうすれば収まりがいいし、「幅広く世の中を評価している」という「流行語大賞」の評価につながるんであろう。

この「強引なバランス理論」が今回の悲劇を呼んだ。

「ゲッツ」がない。

間違いなく「ゲッツ」は流行った。ダンディを擁護するつもりはないが、流行ったということだけは事実である。しかし今回トップ10に選ばれなかった。それは「なんでだろ〜」とジャンルが被っているからだろう。そうでないとこの「なんでだろ〜」一人勝ち現象を説明するのは難しい。紅白にダンディが出場できなかった理由は察しがつくが、流行語大賞に関していえばそうでも考えないと不自然で仕方がない。

今回、流行語大賞は「流行語」と自称しているのに「流行語」を自らの手で「隠蔽」したのである。これが隠蔽でなければ何なのであろうか。

バランスが取れたものというのは得てして評価を受けやすいのだが、実際問題世の中などバランスが取れていないのが実情である。流行語だって本当に流行した言葉が沢山ある年も、そうでない年だってあるだろう。今年は思いのほか流行語が豊作だったこともあり、その選考に苦労したのかもしれない。しかし、だからといってバランス感覚を保つために都合よく流行語の基準を捻じ曲げ、それを隠蔽していいという理由にはならない。

あと、毎年受賞者もおかしい。「コメ泥棒」の受賞者は実際逮捕されたやつに、「SARS」は感染した疑いがあるのに観光をした台湾人医師にでもあげろ。それが筋ってもんだ。

下手にマスコミが持ち上げるからいけないのであり、もう来年からほかの「流行語アワード」みたいなのを立ち上げたほうが健全ではなかろうか。