木村拓哉が読んでいる。だから?

ラジオ「あなたがいるから矢口真里」を聴いてたら漫画の話題になって、矢口が最近になって「ONE PIECE」を読み始めたという話をしていた。「ワンピース」といえば現在の週刊少年ジャンプの看板漫画であり、初版刷りの最高部数記録を塗り替えた漫画(だったはず)である。まあ漫画好きの人なら知らない人はいないというくらい超がつくほど有名な漫画なので特に説明不要であろう。ていうか自分は読んだ事ないのでこれ以上説明できない。

そいでまあ、矢口が話の途中に「この漫画は唯一木村拓哉さんが読んでいる漫画だそうです」という話を始めた。この話はたぶん本当で、木村がこの漫画が好きだというのは、以前「SMAP×SMAP」の番組内で見た記憶がある。

で、疑問なのだが、「木村拓哉が唯一読んでいる漫画」というのは、何の価値があるのだろうか。

木村拓哉が日本を代表するアイドルであり男前であることは分かる。ただ、その人間が「唯一読んでいる」ことに関して何の意味をもたらすのかがわからないのだ。仮に「キムタクが読んでいるから面白い」という命題を正しいと考えてみても、絶対に結論にはたどりつかない。

例えば木村がかつて漫画の世界を極めた男で、その木村が唯一認める漫画だから面白い、という話であれば別である。それは間違いなく面白いような気がする。しかし、ただ単にアイドル木村拓哉といういち人間が読んでいるだけの話であって、そこに漫画に関する「権威」などあるわけがない。

しかし、なぜかこのような「木村拓哉が唯一読んでいるマンガ」という触れ込みは案外すんなり受け入れられるのだ。木村が読んでいることがステータスに直結する。もちろん作者の尾田栄一郎氏は木村がファンだということに関しては光栄なのかもしれないが、その事とマンガのクオリティに関しては一切結びつかない。矢口がどのような意図で発言をしたのかは知らないが、このような言説がまかり通ってしまうのかは大いに疑問である。

これがもし「木村拓哉が愛用しているジーンズ」とかいうなら話は別である。芸能人と同じブランドを愛用するというのはファン心理として真っ当であるし、キムタクが着用しているならオシャレとしても信用できる、という解釈は成立する。しかし、キムタクが読んでいる漫画が面白いという保証も信用も本来ならば発生しない。にも関わらず、こういう言説が通用するのは木村拓哉が万物の尺度になっているからに違いない。
ある物事に関して芸能人を指針にするのは悪いことではないが、何もかも尺度にしてしまうのは問題がある。そもそも他に漫画を読まない木村が読んだからといって面白いとは限らない。そりゃワンピースつう漫画が面白いのは世間の人が知る部分であるからこんな説明はいらないが、もし仮に木村が唯一読んでいる漫画としてマイナーな漫画が紹介されたら、その漫画は流行ってしまうのだろうか。それを考えるとちょっと恐ろしい。

まあ、今回矢口が木村の名前を引き合いに出したのは「普段漫画を読まない木村拓哉が読むほど面白い」ということなのだろうけど、やっぱりちょっと安易だと思う。むしろワンピースの魅力を語る上では余計ではないか。

もし仮にそのような推薦の仕方をするのであれば、こう説明すべきだ。

芸能界のマンガ通東野幸治も薦める「ONE PIECE」


この説明のほうが説得力があるだろ。東野が推すんだから、みたいなね。

それにしても、「ONE PIECE」という超有名マンガを紹介するのにこんな説明いらない、というのが本音だけどね。むしろそんな紹介の仕方しか出来ないほうが恥ずかしいつうわけで。