ドキュメント番組がマトモに見れない病気

アメトーーク」がなかったのでたまたま「NEWS ZERO」を観ていたら、遅発性統合失調症になったと思われる女性を追いかけたドキュメントを放送していた。子どもが親離れをした後で離婚し一人になった女性が、他人から電磁波で攻撃されるという妄想に追い詰められているという症状。


最初からきちんと見ていないので正確なところは分からないけども、そういうのを専門に扱うプロがその女性につきっきりで症状を把握。その女性の身内(今回は娘)に状態を把握させ、入院の措置を取らせるまでを追いかけていた。


VTRを見る限りでは、女性の言動や行動は次第にエスカレートしていき、このままでは全く関係ない他人に危害を加えかねない状態にまでなっていた。事情を知っていながら見ているからまだ「こりゃ大変だ」と思えるけども、何も知らない状態でこの女性を見ていれば「あの人は関わらないほうがいいな」と普通に思ってしまう。


詳しいことははっきりしていないが、遅発性統合失調症の原因のひとつではないかと言われているのが「孤独」だという。この女性も離婚したことで一人暮らしになった寂しさが少なからず発症に関与しているのではという話だ。だからこそ、こういう危ない人こそ本当は「避けてはならない人」なのかもしれない。とはいえ、普段の生活でこういう人を見かけたらなかなか積極的に関わるのは難しい。


とまあ、マジメな感想を手慰みに書いてみたけども、こんなものはウソっぱちであります。自分はここ数年でマトモにドキュメントを見ることが出来なくなった。


もともとドキュメンタリーとは「番組を作る側が意図をもって編集した内容を提供されている」ものであり、そこに真実が介在しているとは限らないものである。言い方を換えれば、「制作側が伝えたいものは必ずしも真実とは限らない」ということ。


この考えを発展させたのが自分も虜になった「放送禁止」シリーズである。「事実を積み重ねることが真実とは限らない。あなたには真実が見えましたか?」というシリーズの煽り文句は、珠玉の一文だ。


なもんで、今回のドキュメントも見ている間自分は「どこにトリックが隠されているんだろう?」とおおよそ見当違いなことを思いながら見ていた。実は遅発性の統合失調症を患っているのは女性のほうではなく、その症状を見極めている男性のほうなのかもしれないとか(こんな内容の話が綾辻行人の小説にあるんだけど)、どこかにヒントが隠されているかもとか、まあ完全に「放送禁止」の見方になっている。


そうでなくても、ドキュメント番組がそもそも持つ「独特の雰囲気」が自分にはもう面白のスイッチに含まれているため、ひどくシリアスな内容であっても変な面白みを感じてしまうようになっている。葬式でお坊さんが読経しているときほど笑いたくなるのと同じような感覚。


こんな自分もおそらく一種の病気なんだと思う。「ドキュメント番組をマトモに見れない病」ですよ。いつか自分も今回見たドキュメントのようにカメラに密着で取材され、自分がドキュメント番組をマトモに見れないことを自覚させられ、そしてその改善のために家族が泣いたり説得されたりするんだろう。そしてそんな自分を見て、自分と同じような「ドキュメント番組をマトモに見れない病」の人が大笑いしてるんだろうな。飽くなき無限ループである。そんなことを考えている状態がやっぱり病気で……