傷だらけ

札幌競馬場に加藤ローサを見に行った。


今年は札幌競馬場のイメージキャラクターがおらず地元札幌の芸能事務所オフィスキューの連中が札幌競馬を盛り上げるという発表があった時点でファッキンJRAだなと一人嘆いていたわけでありますが、クイーンSに合わせて加藤ローサが札幌競馬場に登場するというもんだから涎を垂らしながら駆けつけた。オレが行かねば誰が行く。そう、俺が行く。


とまあ無駄に高いテンションのまま札幌競馬場に行ったわけだけども、さほど興味があるわけでもない加藤ローサに対してなぜ自分はこんなに盛り上がったのか実はよく分からない。でも「加藤ローサが生で見られる」と言われたら、よほど加藤ローサを嫌っている(たとえば過去加藤ローサに牛糞を投げつけられたことがある)わけではない限り、「あ、見に行こう」と思わないだろうか。熱狂的ファンがいるような感じもしないが、かといって積極的に嫌う人もいない感じ。それが加藤ローサ


よくよく考えたら加藤ローサって不思議なポジションの女優だと思う。注目されたのはゼクシィのCMで、それからとんとん拍子に活躍している印象だけはあるんだけど、その一方で「加藤ローサってどんなドラマ出てた?」と聞くと「えーと……」と詰まるような感じ。ちょっとドラマ見ている人だったら「女帝に主演してたよね」とか「CHANGE出てた」とか言えるのだろうが、そうでなければやっぱり詰まる。取り立てた代表作はないけどそこそこ認知度のある人気者。不思議。


というわけで札幌競馬場は入場無料や好天も手伝ってかなかなかの賑わい。毎年のことだが加藤ローサ見たさにおおよそ競馬場に似つかわしくないもっさい男たちも散見されるが、まあ基本的には競馬も楽しみつつ加藤ローサも見たいという人たちであふれていた。


細かいことは省略して、さっそく加藤ローサ登場。競馬場にちなんだのかポニーテールだ。そして顔が小さい。過去数年に渡って札幌競馬場に来た芸能人を見てきたが、加藤ローサの顔の小ささは特筆ものである。決して体とのバランスが悪いわけでなく、小さい体に小さい頭が乗っかっていた。小倉優子のときは本当に華奢で人形みたいだったが、加藤ローサはバランスよく美しかった。


そんなトークショーが行われているステージに物を投げ込む行為は本来禁止されている。当然だ。変態紳士かつチキン野郎である自分はマナー違反となるような行為は普段なら絶対にしない。しかし今回自分はあることを確かめたくて、イベント中止及び警備員に捕まるのを覚悟であるモノを投げ込む用意をしていた。


フライドチキン。


加藤ローサといえばドラマの代表作は思い浮かばなくとも、彼女が出ているCMといえば「ゼクシィ」と並んで「ケンタッキーフライドチキン」だろう。「♪ むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」という曲をBGMにフライドチキンを頬張るローサ。「はなまるマーケット」において薬丸が「あれは「むーしゃ」と「ろーさ」を掛けているんですよね?」と思わず聞いてしまうほど気になるCMである。あんなに美味しそうにフライドチキンを頬張っているローサは本当にフライドチキンが好きなのだろう。


しかしある筋の情報で、「加藤ローサは本当はフライドチキンなんて好きじゃない」と知らされた。ショックだった。あんなに美味しそうにフライドチキンを頬張っているローサの笑顔が偽物だなんて。自分は信じたかった。だから試そうと思った。トークショー中にフライドチキンが飛んできたら、ローサはそれを笑顔で頬張るのか。フライドチキンが嫌いなら見向きもしないはずだが、本当に好きならばトークショー中でもフライドチキンを食べるはずだ、と。


というわけで自分はフライドチキンをカバンに忍ばせていた。地元で買った正真正銘ケンタッキーのフライドチキン。ローサが目の前に登場する。上がる会場のボルテージ。まだ暖かさを保ったフライドチキンに力を込める自分。笑うローサ。自分に握られ歪むフライドチキン。警備員の目が自分から離れたその間隙を自分は見逃さなかった。


「今しかない」


カバンから素早く取り出すやいなや、立ち上がって自分はローサに向かってフライドチキンを投げつける。いち早く異変を察知し近寄る警備員、宙を舞うフライドチキン、それに気付く加藤ローサ、既に取り押さえられる自分。そしてチキンは無事ローサの元へ。


「ありがとうございます」


ローサは笑顔でチキンを食べた。むしゃむしゃ。そこにはCMと変わらずにフライドチキンを頬張る加藤ローサがそこにいた。警備員に羽交い絞めされ引きずられながらも、その光景を見て自分は泣いた。ローサはフライドチキンが大好きだったんだ。ローサがむーしゃむーしゃ食べる姿を見て、幸せだ。ありがとうローサ。



その後自分は国家反逆罪の罪を着せられ長時間に渡る拷問(チェキッ娘とAKB48を交互に記憶)を受けたあと、先ほどようやく解放された。札幌競馬場との永久出入り禁止と加藤ローサの半径30メートル以内には近寄れなくなったが、自分はこれで満足だ。明日死んでもいい。