理系の出番はない

アメトーーク」の勉強大好き芸人が3週に渡って細切れで放送。こういうやり方は本当に好きじゃないんだけど、まあ仕方ないわな。登場する芸人が勉強方法について語る。これは結構面白い。受験生ひとりひとりにやはり勉強方法というものがあり、どれが自分のスタイルに合っているかを見極めるのが、勉強ができるようになるコツである。単に他人がやっている勉強方法を真似れば勉強ができるようになるわけではない。そこんところを勘違いすると結局勉強はできないし、要領の悪いことになる。今回(というか3週に渡って)紹介された勉強方法はみな独自だ。もちろんすべてが目新しいのではないが「こんなやり方もあるんだな」という意味では興味深い。もちろん自分が勉強するにあたって真似をするかといわれればそれはまったく別。


その最たるものがパンサー向井の勉強方法。徳川15代将軍をツッコミで覚えるという方法。これが聞けば聞くほどぜんぜん効率的じゃない。その後に披露された小島よしおのミスチルの「クロスロード」に乗せて覚えるほうがよっぽど覚えやすい。しかしパンサー向井が悪い(効率が悪い)ということでは全くなく、大事なのは「自分で工夫を凝らして覚えること」なのだ。向井のようにちょっとでも自分が覚えられるように努力をすれば、その方法が効率的か否かに関わらず記憶には定着する。それだけで十分だ。それが分かってない人間に限って「何か効率的な覚え方はないですか」と言ったりする。んなもん自分で考えないと覚えられるわけないだろ。記憶の定着はまず考えるところから始まる。他人の設えた記憶方法よりも、自分の設えた不恰好な記憶方法のほうがよっぽど分かりやすい。それが本質だ。


結局光浦の地学の年代にしろ、笑い飯哲夫の「そこは逆」にしろ、ポン村上による表情をつけた英単語にしろ、自分なりに覚え方を開発している(もちろんその記憶方法が何か他の影響を受けている可能性は十分にあるが)ことに意味があり、その覚え方そのものに効率の良さがあるわけではない。もしこれを読んでいる受験生がいたら(いないと思うが)参考にしていただきたい。もっともこんな文章読んでいる時点で受験が危ないとは思うが。


さて受験勉強に対する一家言はどうでもよく(なにせ大して勉強もせず一浪した身でもあるので)、触れておきたいのは今回の「勉強大好き芸人」には理系の人間が含まれていなかったこと。これはいったいどういうことなのだろう。もちろんキャストを選んでいくとたまたま文系の人間だけだった、ということもあるんだろうし、トークができるできないの話にもなってはくるので大して疑問に思うようなことでもないのかもしれない。しかしこれだけ芸人がいればもっと理系の芸人がいてもいいんじゃないかとは思うのだ。


一時期勉強クイズブームが勃発したときに、「東大卒芸人」として話題になった田畑藤本の藤本は最近この手の番組でもとんと姿を見ることはなくなった。これに関しては宇治原という確固たるポジションを築き上げた先輩芸人がいて、そこに食い込むことができなかった、あるいは同じ事務所の同じポジションの芸人は必要とされていなかったという理由で声がかからなかったというのも仕方のない話だ。


しかし自分は単にそれだけの問題だとは思っていない。一番重要なのは「藤本が理系であること」なんじゃないかと思っている。当たり前すぎてなのかあまり言及されないことのように思うのだが、昨今の勉強クイズブームの根幹を成すのは圧倒的に文系の知識である。翻れば理系の知識はほとんど要求されてこない。つまり、理系の人間が理系として活躍できる場面は実はほとんどなかったりする。もちろん理系の人間だって文系教科は勉強しているわけだから、分からないわけではない。しかし理系にはやはり理系の覚えること、覚えておくべきことがあり、それは文系のものとは違う次元の話になってくる。理系の知識がクイズで活躍する場面といえば、せいぜい「生物」くらいしか思いつかない。でも理系教科でも生物は文系選択が多かったりするわけだ。


なぜテレビは理系教科を優先的に取り扱わないのか、といえばそれはもうひとえに「視聴者がついていけない」からだろう。専門的な知識や公式を必要とするものはクイズにそぐわない。最近の高校生クイズでは計算問題が出題されるが、あんなものは視聴者からすれば見ていて何も面白くないのは言うまでもない。結局のところ難読漢字であるとか、地理歴史のことであるとか、誰しもが一度は触れていて、なんとなく覚えていたりそうでなかったりする「手の届く問題」が好まれる。当たり前だ。


芸能界にも理系出身者は少なからず存在する。アンガールズの田中、菊川怜あたりは有名か。菊川怜はご存知東大出身。しかし菊川はクイズ番組で思ったほど活躍していなかったりする。アンガールズでも田中(理系)より相方の山根(文系)のほうがクイズでは目立つ。要するにテレビの世界においては「勉強できる」=「文系」なのである。個人的には負い目も含めて理系のほうがキレる印象があるんだが、テレビの需要でいけば圧倒的に文系だ。


それが今回の「アメトーーク」でも如実に現れている。文系の記憶術や勉強法を披露されたが、理系の勉強法には一切触れられない。宇治原の数学ノートは公開されたけども(たしか積分だったはず)、「すげえ」というだけで終わっていた。自分は文系である宇治原がどのように数学を勉強していたか、ということこそ知りたいんだが。


テレビにおける理系は不遇だ。しかし完全に息絶えているわけではない。唯一今テレビでアツい理系番組といえば「たけしのコマ大数学科」だろう。今の芸能界で最も有名な理系であるビートたけしが完全に趣味の世界でやっている数学番組。この番組で扱われる数学は高校までの知識があれば解ける(実際に自分が解けるかどうかは別として)。なもんで数学好きの自分にとっては非常に面白い番組ではあるんだが、やっぱり深夜番組としてひっそりやるくらいのもんなのだろう。これがゴールデンタイムでエンタテインメントとして消化されるようになったら、芸能界の理系と文系の待遇格差は大きく是正されるんじゃないだろうか。


バリバリの理系が活躍できるエンタテインメント番組を作ることはできないもんなのか。そのためには理系の優秀な人間がテレビ局側にいる必要があるのだろうが、それがどんな理系の問題よりも難しい課題なのかもしれない。

世にも奇妙な物語'11秋〜'12秋

「世にも」に関してはずっと書き続けるつもりだったんだけども、つい1週間前まで昨年秋放送の「世にも」をまだ見ていないことに気づく。ずっとHDに眠ったままだった。つい先日今年の秋が放送されることにいよいよ危機感を覚え、この1週間で3回分の放送をまとめて観ました。というわけで3回分、15話の感想を矢継ぎ早に書いておこうと思うので、興味のある人は見てください。


11秋

憑かれる

松下奈緒主演。ホラー枠。話としては非現実的な安っぽいホラーであったが(ここ数年はホラーの傑作がないんだよなあ)、松下奈緒が恋愛小説を書いているいけすかない小説家(しかもパクリ)というのはけっこう好き。松下奈緒が嫌いなわけじゃないんだけど、イメージとしては割と合致してる。自分の中だけで。

JANKEN

三浦春馬主演。バカ。石橋蓮司に尽きると思う。あとオチで一大勝負を終えた後で、子供たちが無邪気にじゃんけんをして戯れるのを眺めていると首相が現れて「日本を救ってくれ」という「何いい話感出しちゃってるの」っぷりが笑える。こういうくだらない話を堂々と放送できるのが「世にも」であります。

ベビートークA錠

水川あさみ主演。王道。「もしも赤ちゃんと話せる薬があったら」ですよね。夢オチってのはあまりいただけませんが、まあキレイにまとまってると思います。それよりなにより水川あさみが「育児に疲れる主婦」に見えるということが驚き。年齢調べりゃもうアラサーだもんなあ。年相応なんだよね。そりゃ自分もオッサンになるわ。

耳かき

浅野忠信主演。ナンセンス。耳と鼻もつながってますが、目にもつながっているんで気を付けてね。なんだこの感想。

いじめられっこ

志田未来大後寿々花主演。「逆に」モノ。正しく言えば最初にいったん志田のほうがロボットと思わせておいて(自分だけか?)大後がロボットなのかと思いつつやっぱり志田がロボットという感じ。まあストーリーなんてどうでもよく、志田未来大後寿々花の共演がこのドラマの最大の見どころであったりする。劇中では童顔の志田に対して大人びた顔つき(昔から)の大後がずいぶん年上に見えるが、実際は同級生。ちなみに現在大後寿々花は慶応生らしい。「セクシーボイスアンドロボ」のときに天才だと思った女の子も大学生か……そりゃ自分も(以下略)




12春

スウィート・メモリー

仲間由紀恵主演。「逆に」モノ。ストーカーされていると思った主人公が実際はストーカー。まあありがちなパターンではあるんだが、自分の顔の記憶まで甘美なものに変えていた、というのはまあいいんじゃないでしょうか。しかし惜しむらくは仲間だと思っていた主人公の実際の顔は小雪のモノマネで一部にはおなじみのイーちゃん(マリア)だったわけだが、このオチのときに「そこはじゃあ小雪だろ!」とテレビの前でつぶやいた人は100万人を下らないだろう。まあ小雪にオファーしたけど断られたということにしておく。そのときちょうど妊娠中だったような気もするし。あと小雪にはこのオチを受け入れる度量はない。たぶん。

7歳になったら

鈴木福主演。王道。「もしも7歳でクローンと間引きされる制度があったら」。やっぱり夢オチで(もしもシリーズの夢オチはやめたほうがいいと思います)結末もなんとなくボカしてあるんだけども、こういうのははっきり結論、特に後味悪い感じでやったほうが面白いです。あとやっぱり鈴木福くんは芸達者だと思った。けど「コドモ警察」の映画化はやりすぎ。

家族(仮)

高橋克典主演。アホ。逆誘拐犯による「家族を誘拐してやる」は発想として面白いですよね。これを力技で物語にしてしまうところは好きです。けど現実として白石美帆がニセモノでも嫁さんになってくれるならそれでいいと思ったのは自分だけじゃないだろ。

試着室

忽那汐里主演。ファンタジー。「世にも」といえばホラーやミステリーというイメージが強いのかもしれないが、こういうのも結構やってます。とりあえず忽那汐里が可愛ければそれでいいという話でもあり、それが本質。オチは綺麗にまとまっています。

ワタ毛男

へいひの(濱田岳)主演。ある意味ファンタジーなんですが、分類としては「感動」に入るのかもしれません。「世にも」通はこういう話を望んでいるような気がします。自分はへいひのというだけで少し笑ってしまうんで、正しい判断が出来ないのがなんとも。いやいい役者ですよへいひの。



12秋

心霊アプリ

大島優子主演。ホラー。レベルとしては「本当にあった怖い話」でやってろ、という感じですか。大島優子の顔面の疲れ具合が霊っぽい、という皮肉なのかもしれない。もうちょい何かあるだろ。

来世不動産

高橋克実バカリズム主演。というか原作がバカリズム。エンドロール見るまで知らなかったのだが、そりゃ升野さん出るし、オチがコントっぽいわけだ。バカリズムのコントとみれば、この話は「なぜセミは全力であんなに鳴いているのか」ということだけが主眼ですよね。気持ちいいから。セックスの数百倍(だったっけか)。そりゃ鳴くよね。面白かった。

蛇口

伊藤英明主演。王道。「もしも生死が判断できる蛇口があったら」。オチまでは「奥さんにも蛇口が見えてるんじゃねえの」と思ったんだが、そうではなかった様子。単に見えた蛇口が本人の死を誘導するだけだったのね。この後の草ナギのもそうだが、伊藤英明の持っている「海猿」のイメージを逆手に取って、という感じがしないでもない。うまく機能しているとも思えないんだが。あと別荘にあんな細工したらすぐ旦那が逮捕されると思うんだが、それはいいのか。

相席の恋人

倉科カナ主演。ファンタジー宇津井健のああいう使い方は反則だよね。元気だったら大滝秀治だったんだろうか。んなこたあないか。結局倉科カナのような女性に「フラれる」という役をやらせること自体がファンタジーであり、絶望しか見いだせない自分のような人間にもちゃんとこんなファンタジーが訪れるのだろうか?と思うと蛇口が見えかねないですね。

ヘイトウイルス

草ナギ剛主演。んまあ…。なんかテーマだけが先行しすぎていて(原作があるものだけに仕方ない部分はあるが)、これを数十分のドラマで仕立てあげると物凄く安っぽい感じがして。草ナギの演技は演技で重苦しいし、バランスを失している気がしてならない。結局人は憎しみ合うのだよ。



以上15話ぶん。こういうのは一気にやるもんじゃないですね。もう「ヘイトウイルス」なんて書く気力が残ってないから感想もテキトーすぎる。とりあえずこの文章をアップしたら大後寿々花ツイッターをフォローすることに決めました。


あと「アメトーーク」の勉強大好き芸人と「ゴーイングマイホーム」について書く準備がありますが、いつ更新できるかは未定でありやす。