「安売り」の共犯

今気になるCMといえばサントリーの缶コーヒー「BOSS」のファーストクラスという商品のCM。


大地真央西川史子、そして佐々木希という3人がCAに扮し、ドリフターズの往年の名曲「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」の替え歌を歌い踊る「コミカル」なCM、ということに一応なっている。


「全席ファーストクラス」という触れ込みのファーストクラス航空だったが、乗ってみたらBOSSのファーストクラスを渡されるだけの狭い席。そんな上手い話があるわけない、と言わんばかりに3人のCMが聞こえないフリをしたりして踊るわけだ。まあぱっと見コミカルですわね。


しかし自分にはこのCMがBOSSの誇大広告気味の商品名の安っぽさと、CMにおける西川史子が放っている安っぽさが互いに依存している関係がいやらしくて仕方なく感じる。


以前ここでも取り上げたが、西川史子が演じている「高慢なオンナ」というのはキャラで本当はいい人を演じている、というその二重構造そのものがなんか面倒くさい。しかも西川がこちら側がそのキャラで振舞うことを望んでいるという勘違いと、それを知りつつもこちらも西川のキャラに付き合わなければならないのは本当に面倒くさい。


このCMにしたって「西川がいることでゴージャス感を出しているつもりだけども、その実西川の親しみやすいキャラがこのCMのコミカルさに一役買っている」というやっぱり言い訳めいた起用のように自分は思える。面倒くさい。本当は「西川史子という芸能人はこの缶コーヒーのように誇大広告気味でしかない」と言ってるに過ぎない。大地真央佐々木希に誇大広告気味の要素が見当たらないだけに、尚更である。


本来ならばこんな起用の仕方をするサントリーは思いっきり西川をバカにしていることになる。ただ、なんとなくではあるがこのCMは西川を起用することでサントリー側が商品の実態を的確に表現する意図があるわけではなく、どちらかといえばサントリー側が西川の安さに歩み寄ったような印象を受ける。誇大広告気味の商品名を誤魔化すために、西川の安っぽさに寄りかかったとでも言うべきだろうか。西川あってこそのファーストクラスという商品名が引き立つ感じ。


西川からすれば「ファーストクラス」という名前に相応しい人選だとうそぶいておきながら、その実120円で買える誇大広告気味の安っぽい缶コーヒーがお似合いだという、キャラに忠実な起用のされ方でCMに依存しており、またサントリーからすれば西川を起用することで商品の安っぽさを半ば押し付ける形で肩代わりさせるという依存。どちらが悪いということでなく、両方とも両方の安さに依存している。これは気持ち悪くないだろうか。少なくとも自分には気持ち悪い。


ま、BOSSのCMってこの商品に限らずゴージャス感を出そうとしているものに関して全て安っぽい気はするけども。言うなれば西川はその安さの犠牲者かもしれない。同情はしないけど合掌。