世にも奇妙な物語08秋

半年に一度あるもの。競馬の天皇賞オールスター感謝祭。そして世にも奇妙な物語。毎度の如く感想です。オチなし。

ボディレンタル

内田有紀主演。人生に絶望しネットで自殺サイトを探していた主人公。とある掲示板のサイトに導かれ連れてこられたのは、老女の待つ部屋。自殺するならその体をレンタルさせてほしいと言われ、3ヶ月4000万で体をレンタルすることに。老女の正体は有名IT企業の会長であり、昔別れた夫の会社のソフトを完成させるためだった。スパイによりソフトがウイルス感染するのを食い止めた直後に老女は逝ってしまう。主人公は人生に絶望するのをやめ、新たな人生を歩もうと決意する。


うーん、まあ、平凡な作品でしょう。会社に侵入したのが妨害工作ではなく別れた夫の手助けというのはミエミエだったしなあ。昨今自殺する人が多いんで、「自殺はいかんよ」という意味合いでしか褒められるところのない作品のような気がする。毎回感動系の話をどこに持ってくるかに腐心しているフシが見受けられるけども、一発目は肩透かしを食らうなあ。「あれ?これで終わり?」と思ってしまった。

どつきどつかれて生きるのさ

横山裕主演。10年前に独立した「大阪国」は婚姻制度とともに生涯のパートナーとなる「相方」制度を導入。ボケの相方に逃げられたツッコミの主人公は「ボケバー」なる店で好みのボケ西本(山崎樹範)を発見。コンビ結成を申し込むも、金持ちの社長(佐藤二朗)とコンビを組むために結成を断り店も辞めていた。しかし西本がコンビ結成を受けた理由は実家の工場の融資のためだった。西本の本心に気付いた主人公は、西本とコンビ結成するために結成式に乗り込んで相方を連れ去る。


面白かったです。結婚とは漫才の相方を探すようなものだ、というメタファーをそのまま物語にしたらこうなったという話。漫才師にもコンビ結成をめぐって恋愛にも似たアプローチがあったという話は珍しくないし。ボケが女性でツッコミが男性。劇中にも下ネタとして使われていたが、男が突っ込む、女が突っ込まれるという役割の隠喩でもありおおいに納得。物語そのものとしては名作古典映画「卒業」のパロディになっているわけで(サウンドオブサイレンスがまんま流れたのは笑った)、全体的にくだらなくてよろしいです。しっかし佐藤二朗はこんな役ばっかだな。似合うけど。

死後婚

深田恭子主演。死んだ姉の死者同士のお見合いに連れて行かれた主人公。その際に相手の死者の男性に惚れられてしまい、死を誘うかのような事象が多発。最終的には主人公を庇って婚約者が死んでしまう。なんとかしてもらおうとお見合いを取り仕切った霊媒師に話を聞きにいく。すると死後婚を成立させるために生きている人間の名前が書かれた絵馬がさげられた時に死は避けられないと聞く。しかし実際に主人公の死を狙っていたのは、死んだ息子のために死後婚を成立させようとする男性の母親の仕業だった。すんでのところで絵馬がさげられるのを防いだ主人公。ほっとするのも束の間、婚約者の母親から電話が。なんと婚約者の母親だった人が死後婚を成立させるために、主人公の名前を書いた絵馬をすでに提げてしまっていた。その直後、階段を踏み外した主人公は死んでしまう。


ストーリーを書くとえらく説明じみた話なのだが、それほど面白くはない。最初に霊の仕業(あるいは「死後婚」という制度の仕業)と思わせておいて、実際は生きている人間の仕業だったというオチまででも話としては成立している(但しそれが面白いかどうかはまた別)。それからさらに一捻りしてあって、筋立ては悪くないんだけどちょっと煩雑になった感じ。「死後婚」という制度が単なる風習に過ぎずやっぱり生きている人間が一番怖いという筋立てのほうがじっとり怖いような気がするのだけど、最終的に制度の実効ありというオカルトの方向に傾いてしまうとそんなに怖くはない。まあこれは好みなんでしょうけど。

行列のできる刑事

平岡祐太主演。なぜか知らないが幼少時より自分の後ろに行列が出来てしまう刑事に取材する。インタビュー、張り込み、別れた彼女、通っていた学校での思い出、そして犯人逮捕。様々なシチュエーションにて取材される刑事の後ろには常に行列が。逃走した犯人を追いかけ、先輩刑事(遠藤憲一)と挟み撃ち。最終的には先輩刑事も犯人も主人公の行列に取り込まれて無事逮捕。車に誘導し犯人を警察署まで護送する主人公を見送ったカメラマンも、最終的には行列に取り込まれその車を追って走り出す。


見事な出来です。元々は映画「タイヨウのうた」「ガチ☆ボーイ」の監督である小泉徳宏の自主制作映画のようだけども、本人がリメイクして作ったのがこの作品。フェイクドキュメンタリーの手法で、パラレルワールドの理不尽な世界を受け容れた上でそれをどう生かすかという発想に立ち、登場人物がみな淡々としているのがおかしくて仕方がない。刑事の逮捕オチは読めるけど、学生時代のサッカー(オフサイドになる)と陸上(みんな後ろにつくから1位)の話は思わず吹いてしまった。こういう作品がときに投げられるから「世にも」は油断できない。

推理タクシー

谷原章介佐野史郎主演。タクシーに乗り込んだ客(谷原)と運転手(佐野)が殺された女性キャスターの話を始める。話すたびに「話相手が犯人では?」という方向に傾く推理。しかし悉くその話は設定が覆され、タクシーは目的地へ到着。実は乗客は実際にタクシーに乗る前に全く別の殺人を犯していたのだけども……


事件の真相(誰が犯人か?)がどうこうではなく、谷原と佐野のやりとりを楽しむ作品でしょう。佐野が実は何者なのかも分からないし、最後に谷原が佐野を殺したのかも分からない。とにかく「世にも」な俳優佐野史郎が出てくるだけで、この作品の雰囲気が何百倍にも増すのだから素晴らしい。別の人だったらそんなに面白くはなかったと。



「行列」が頭ひとつ抜けて面白かったですが、「どつきどつかれて」も面白かったし「推理タクシー」は往年の雰囲気に溢れてますし、残り2作品も一定水準はクリアしている良作であり、全体的にも面白い部類に入る回ではなかったでしょうか。ご馳走様でした。