QとW

今年の「高校生クイズ」の感想は「あんまよく覚えていない」である。

 

いや録画もしてあるし見返して何かしら書けばいいんだろうけど、そんな気がまるでしない。コロナ禍の影響で全参加者がリモートによる出場という事態は制作側も苦慮しただろう。特にここ2年のコンセプト「地頭力」は自ら体を張って行うものが多く、そこをスタジオにいる芸能人をアバターに仕立て上げて行わせるのは悪くなかった。

 

しかしそれ以外のことがまるで「良くない」のだ。3年1周期であるとされる高校生クイズは今年が「地頭力」の最終年。過去2年を踏襲しつつ、ではなく、ほぼほぼ同じようなことをやっていて、まるで目新しさがない。誰も正解できなかったクイズがまるまるカットされ、それらを含めて「完全版はhuluで」では「じゃあ最初から全部huluでやればいいじゃん」としか思わなかった。見せ方下手すぎないか?

 

今年は色々難しい部分があったことは承知の上で言うけど、全体的にあんまりやる気を感じなかった。来年はシリーズが更新されていよいよクイズノックの出番か。クイズノックが元気だったら、だけど。

 

一方で制作側のやる気を感じさせたのが「THE W」でした。

 

始まった当初は「これで大丈夫か…」的な側面しかなく、立ち消えても不思議じゃなかったくらいの番組。しかしそこは日テレ。数年かけて本気でビッグタイトルとして育てる覚悟があったのか、年を追うごとにレベルが向上。そして今年は「普通に面白い賞レースの番組」として成立していた。

 

要因は色々あると思うが、一番日テレ的で「上手い」と思うのが、「日テレの人気バラエティ番組出演権」だろう。優勝者の顔を売ることで人気者に仕立てることが可能となり、そして何より「THE W」からスターが出た、的な錯覚(と敢えて書く)を起こさせることで出場者の意識とレベルが上がるからだ。実に日テレらしい戦略だと思う。

 

もちろん番組のギミックだけで出場者のレベルが上がるわけではないので、大会も4年目を迎えて本腰を入れてきた女性芸人が増えてきたのだろう。山田邦子が「え?出場費取られるの?」と驚いて辞退したことがもはや懐かしい。

 

Aブロックも面白かったけども、やはり今年はBブロックが熾烈すぎた。ジャンルを問わない「THE W」でしか披露できない勝負ネタを持ってきたAマッソ、超ド級の頭おかしいネタで会場を荒れ場にしたゆりやん、その荒れ場を鎮めて勝負をひっくり返した吉住、着実に笑いのレベルが上がっているはなしょー、どう転んでも面白いぼる塾と、若手の女芸人の頂点を決めるに相応しいメンツが揃ったように思う。そこで勝ち抜いた吉住が優勝するのはこれ必然だろう。もちろんAブロックの勝者紅しょうがも充分に面白く、来年以降も期待できる。

 

特に今回シビれたのがBブロック初戦、Aマッソとゆりやんの勝負。Aマッソの着想とゆりやんのクレイジー加減はほぼ互角。あとは好みの問題というレベルで、審査員は相当悩んだだろう。6票めまでは3対3。アンガールズ田中の最後の1票がゆりやんに入り、勝者はゆりやんに。

 

アンガールズ田中とAマッソは事務所の先輩後輩であるが、ここには大きな繋がりがある。田中がYouTubeのAマッソチャンネルで「Aマッソが売れるにはどうすればいいか」を力説したことで、その的確な批評っぷりが買われ「ゴッドタン」の「勝手にお悩み先生」に繋がり、その評判が「THE W」の審査員にまで繋がったと田中本人が語っている。そのきっかけになったAマッソを「THE W」の舞台で審査しなければいけないという究極の状況だ(と自分は見ながら思っていた)。

 

だから自分はこの勝負、「田中が入れたほうの勝ち」だと思っていた。奇しくも田中の票が最後になったことで、田中の票が勝負を決することになったわけだが、そうでなくても「ここまでAマッソを見てきた田中が票を入れたほうが、実際の勝敗とは違ってもこの勝負の実質の勝者なんだろうな」と見ていた。後輩だからという理由で票を投じるはずがない、という信頼が田中にはあった。だから田中がゆりやんに票を投じたことが全てなのだ。

 

ただここで負けたAマッソは決して損していない。これで知名度は上がり、バラエティ番組に呼ばれる機会も増えるのではないか。なんなら田中とのセットで出演し、田中が票を投じなかったから負けたと吼えることで盛り上がるくだりはすでに「田中には」見えているはずだ。

 

損しなかった、という意味であれば、今回の出演者は誰も損していないように思える。皆それぞれの良さが出ていて、次が見えるような感じだ。笑い飯哲夫が「個人的に審査につけた点数」で100点をたたき出した、頭のおかしいネタをかましたオダウエダの出番が増えてくれればいいなと思う。あとはコロナで出場できなかったスパイクが報われてほしいな。

 

正直全然期待していなかった「THE W」であるが、来年はちょっと期待して見てもいいのかな、と思う。