鬼軍曹ミキティ

「ローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅」第6弾を見る。

 

前回第5弾の放送が「北海道が舞台」「アルピー平子が出ている」という条件が揃い、何となく見たらこれが想像以上に面白く、完全に「次あったら見よう」モードに。しかも今回は「ちゃんれに」(自分が勝手に呼んでいる)こと、ももいろクローバー高城れにが出演することもあり、マストで見なければいけない番組に。そしてこちらの上がった期待値を裏切らない面白さ。敬服。

 

番組の概要としては、バスチームと電車チームがそれぞれ路線を乗り継いでチェックポイントを巡り、そこで与えられたミッションをこなし、最終目的地に先にたどり着いたほうが勝ち。スマホでの路線検索は禁止されており聞き込みはOK。そして各チームとも1万円ぶんまでタクシーの使用が許可されており、このタクシーの使いどころがチームの勝敗を分けるカギとなる。とまあ細かいルールはあるのだが、基本的にはどっちが先に着くか、という単純明快な話。

 

バスチームを率いるのは「ローカル路線バスの旅」で盟友蛭子能収と様々な場所を巡った、バス旅のレジェンド太川陽介。この番組内でも如何なくそのリーダーっぷりを発揮し、「さすが太川陽介」と思わせてくれる。それに対して電車チームを率いるのが村井美樹。電車好きで知られる村井であるが、番組を見る前は正直「太川陽介のレジェンドっぷりに対して、村井は相手として弱いのではないか?」と思う部分はあった。ところがどっこい、この番組を見てどんどん好きになるのは村井さんである。番組中ではその厳しさから「鬼軍曹」と呼ばれる村井さん。今まで正直殆ど興味がなかった村井さんの良さがガンガンあふれてくる。

 

以下は「対決旅」の面白さとともに、「村井美樹推しポイント」も説明してみたい。

 

① 結局は体力勝負だ

「バスと電車を乗り継いで目的地に到着する」対決なので、基本的には「いかに上手いこと乗り継いで時間を短縮するか」が見どころのひとつになるのだと思うが、ローカル路線は本数が多いわけでもなく、またルートもある程度限られる(特に電車)ため、「いかに時間に間に合うか」が重要になってくる。また、チェックポイントによっては電車もバスもそうそう通ってないところもあり、そこは歩くしかない。なのでこの番組の大半は「乗り物に乗っている」より「ひたすら歩いている」のである。「乗り継ぎ」の知略を凝らした対決かと思いきや、ほぼほぼ体力勝負。ここらへんの泥臭さが素晴らしい。

 

場合によっては「〇キロ歩く」とか「〇分で〇キロを行かなければいけない」とか、体力と脚力にものを言わせる箇所が多い。今回は鉄道チームのパンクブーブー黒瀬が足を負傷し、電車の時間にギリギリ間に合わないというシーンがあった。その電車に乗れなかった時の村井軍曹の哀しそうな顔ときたらない。そう、いつだって村井軍曹は本気なのだ。その謎の本気さに惚れる。

 

②両チームとも本気だ

正確に言えば両チームのリーダーが本気だ、である。太川陽介も村井軍曹も、完全に本気。前回北海道編で太川チームが勝利し3連勝で対決成績を3勝2敗にした。そのエンディングで村井軍曹が涙したシーンは今回も挿入されている。こういう番組は「対決というていを成しながらも、全体的にはユルい旅番組」であることが多いが、この番組だけは本当にもう対決が主眼。旅番組でありがちなユルい観光や食事シーンは殆ど無く(一切ないわけではない)、常に気持ちが勝負に向いている。

 

だからこそ前回勝負に負けた村井軍曹は涙を流し、太川は本気で喜ぶ。最初はお気楽旅番組のつもりで来ていたゲストも、両リーダーに感化されるように本気になっていく。今回ちゃんれにが村井軍曹と意気投合していたが、これは「何にでも全力で取り組む姿勢」に惹かれあうところがあったのではないかと勝手に思っている(番組中では村井軍曹の趣味こけしに感化されたちゃんれにがサンタクロースの人形を持ってくるという謎の共感になっていたけども)。

 

よくよく考えればバカっぽい対決なのだが、このバカっぽいことを本気でやることにエンタテインメントの神髄を感じる。大袈裟。

 

③リーダー同士が互いに認め合っている

常に両リーダーは「気を抜いていると負ける」と思っている。バス旅のレジェンドである太川の実力を村井軍曹が認めているのはもちろんだが、そのレジェンド太川をもってしても油断ならないのが村井軍曹ということになる。

 

今回電車チームが電車の単純な乗り継ぎではなく、タクシーを使ったショートカットを画策した場面があった。結果その乗り継ぎは失敗するのだが、その策(太川は番組中では敬意をもって「奇策」と表現する)に気づいた太川は、こう語る。

 

太川「想像以上にくるもんな、こっちの。それきたか、といつも思わせるもんね。」

 

太川「出来る女だね」

 

相手の策に気づいた自分を褒めることはせず、その策を思いつき実行してくる村井軍曹を賞賛、なおかつ「出来る女」だと褒め称えるシーンは今回のベストシーンだった。相手をリスペクトしてこその勝負。これは人気が出る。基本バカバカしい勝負なのに。

 

そしてこの「出来る女だね」に対して、テレビを見ていた自分は「そうだよな!さすが太川陽介分かってる!最高だよ!」とひとり悶絶した。村井軍曹は出来る女なのである。しかし番組を見ている限りあんまりそういう風に見えない。その報われない感がさらに好きになる。

 

 

この番組のフォーマットも素晴らしいけども、何より素晴らしいのは太川陽介というレジェンドの相手に遜色ない村井美樹を電車チームのリーダーに据えたことだろう。このファインプレーが第6弾まで番組を続けさせている。間違いなく第7弾はあるだろう。次回放送予告が発表されれば、それまで楽しく生きていける。ネットではないテレビがここにあるよ。