前置きだけやたら長い話

あなたが「見切りをつけるとき」ってどんなタイミングですか?

 

人間というのは自分勝手な生き物ですから、心変わりするものです。もちろん心変わりするのが悪いということではなく、それは人間に備わった能力なので、ごく当然に起こること。ひとつのものに執着することも必要だけども、うまく心変わりが出来ないとストーカーとかになったりしてしまうので、スパッと切り替えることも大事なのである。

 

心変わりっていうのは、ある日突然起こるわけではない。ただ、必ず心変わりするときには何からのきっかけがあるわけです。例えば恋人が「好き」から「好きではない」に変わる瞬間がある。ふとした言動、何気ない仕草、あるいは匂い、雰囲気、自分にしか分からない何かがある。それが自分の中で明確なこともあるけども、「気付いたらなんか好きじゃなくなっていた」ということも珍しくはないだろう。

 

自分はかつて「モーヲタ」と呼ばれる人種でした。いわゆるモーニング娘。を愛でる人です。しかし現在は「モノノフ」と呼ばれる人種になっています。いわゆるももいろクローバーZを愛でる人種です。これを自分は「宗派替え」と呼んでいますけども、ひとつの心変わりです。自分の場合モーヲタからそのままモノノフになったわけではなく、モーヲタから冷却期間を経てのモノノフなので、厳密に言うと心変わりではないのかもしれませんけど。そして明確に「モーヲタじゃあないな」という瞬間があったわけではありません。熱が静かに冷めていったような感じです。

 

推している側が推すのを辞めるのは本当に些細なきっかけだったりして、強い覚悟を持っているわけではないです。しかし推されなくなる側は、特に理由もなく推されることを止められるわけです。直接「もう推さないよ!」と宣告されるわけではないけど、うっすら減っていく観客がそれを如実に物語る。

 

NHKで「テンゴちゃん」という番組があったんですね。岡崎体育とヤバいTシャツ屋さんがメインを務める生放送の番組。自分も数回見たけども「うーん、NHKが若者向けに作りそうな番組だなあ(要約:あんま面白くない)」という感想のもと、見なくなっていった。1年くらい続けばいいとこかな、くらいに思った。

 

しかし番組は2年続く。NHKとしては彼らをアイコンとして何か確たるものを作ろうとしていたのは間違いない。見ていないのであくまで想像でしかないが、NHKが若者向けに作りそうな番組をずーっと続けていたのだろう。若者のあいだでは盛り上がっていたのだろうか。少なくともその評判が自分の耳に入ってくることはなかった。だから今回「テンゴちゃん」が終わると聞いて、「あー、NHKが遂に見限ったか」と自分は正直に思った。

 

この番組が盛り上がらなかった(という前提で書いてしまうけど)のは、番組として魅力的なものではなかった、というそもそもの話と、NHKがもうちょっと本腰を入れるべきだったんじゃないのか、という面もあるんじゃないか。岡崎もヤバTもミュージシャンとしてそこそこ売れているし話題性もある。だからこその若者向けのアイコンとしての起用だったはずなのに、岡崎もヤバTも全然紅白に呼ばれない。本気で番組を、彼らを盛り上げるつもりがあるのなら、さすがに1回くらい出してやれよとは思っていた。しかし出演できないまま番組が終わる。推しているようでいて結局何者にもしてくれない。これは結構な梯子の外し方だなあ、と少し可哀想な気持ちになる。

 

そして自分は性格がひん曲がっているので「じゃあそんな梯子の外し方をした番組の最終回はどんなもんなのよ」という完全なる野次馬根性で、「テンゴちゃん」の最終回を録画し、そしてさっき見たわけですよ。すると番組の冒頭で

 

「番組の名前が変わってリニューアルします!」

 

だって。ごめんなNHK。自分の考えは浅はかだった。まだ責任を持って推すんだね。偉いと思う。ちゃんと彼らを紅白まで導いてあげてくれ。そんな考えが頭をよぎると同時に、自分は再生ボタンを留めて録画を消去した。そういう話でした。