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ジャニーズ事務所が民放テレビ局に対して、「新しい地図」の元SMAP3名を出演させないように圧力をかけていた疑いがあるとして、公正取引委員会が注意。ジャニーズ側は否定。

 

こんな報道がポロっと出てくることで「ああ、ジャニー喜多川は亡くなったんだなあ」と実感してしまいます。今後もこういう話が小出しになってくるんだろう。仕方ないことではある。もちろん自分のようなただの一般人が本当に圧力をかけていたのか、いないのか、真相を知る余地など全くない。しかしなんとなくではあるが想像はつく。

 

おそらく圧力は「なかったけど、あった」のだろう。もちろんジャニーズ事務所だってバカではないのだから、各テレビ局に向けて「元SMAPの3人をお前のところのテレビ局に出すなよ!」というお達しを出すわけがない。こんなものがあればたちまち「圧力をかけた証拠」になるわけで、もっと早い段階で暴露されていただろう。

 

しかし一方で「全く3人に対して何のわだかまりもありません。オールフリーです。好きに出演させちゃってください!」てなことを言ったわけでもないだろう。そりゃあこっちも当然言うわけがないですよね。言う必要性が全くないのだから。ただ、もし仮にこのようなウエルカムですよ文書が各テレビ局に配布されていたとしても、「圧力はなかった」となるのは難しい。「ない」ことを証明するのは難しいのだ。いわゆる悪魔の証明である。

 

そしてその「ない」を証明するのが難しいのと同様に「無形のものを“ある”と証明するのも難しい」だろう。たとえば3人が独立した直後に、テレビ局のプロデューサーが笑顔で「これからもジャニーズ事務所をよろしくお願いします!」といつも以上に丁寧にマネージャーから挨拶されたら、これは圧力なのだろうか。マネージャーは「そんなつもりはない」とそりゃあ言うだろう。しかしプロデューサーは考える。「これは、こういうことだよな」と。これが現場レベルで200回くらい繰り返されれば「状況証拠」となるだろうが、そうでもなければもうこれは圧力と言い切るのは無理だ。

 

おそらくではあるが、公取委が調べた上で「注意」にとどまったのは「たぶんまあこの手の無形の圧力はあったんだろうけども、それを正確に証明すべくもないので、とりあえず注意はしとく」という意味なんじゃないだろうか。簡単にいえば「どうしようもない」だ。

 

そしてこれはメディアという衆目に晒される場所での話だから話題になるけども、一般社会ではもうごく当たり前に行われている話だろう。もちろん独占禁止法レベルでの話ではなく、上司や取引先の無言の圧力なんて、どこにでも転がっている話だ。それがいいことだとは全く思わないけども、そういうものを全てひっくるめて「うまくやる」のが社会だろう。

 

別にジャニーズを擁護するわけではない。そして「新しい地図」だって、ある程度の締め出しは覚悟していたのではないか。もっとドライな言い方をすれば「テレビ局は今後の利益を考えたとき、元SMAP3人を採るよりジャニーズとの関係を採った」ということでしかない。だからこそジャニー喜多川の死後に降って沸いたようなこの話は「何で今更こんな事言い出してくるのかいな」とは思う。

 

んでまあ朝のワイドショーでどう取り上げるのかいな、とザッピングして見ていたが「スッキリ」は最初のトピックで触れず、「モーニングショー」は報道の中身だけを伝えコメンテーターには一切しゃべらせず、そして「とくダネ」はいじめ問題やってる。ああ、「ビビット」見るの忘れてた。ジャニーズ司会の本丸じゃないか。まあやらなかったんだろうけど。これはジャニーズの圧力というよりテレビ局の「気遣い」だ。大口の取引先に気を遣うことは、割と普通なことだと思うのだけど、どうなんだろう。取り上げないことは視聴者に不自然に映ることは映るが、かといって「全く取引先を気遣わない」とジャニーズ側に映るのも困る。

 

個人的に「新しい地図」の3人を弱い立場として捉えるのは、若干「乗せられている」感がある。難しいところですね、とお茶を濁して終わらせておこう。