笑う阿呆に怒る阿呆

ただの山根元会長の話です。

 

年末年始のバラエティに山根明元ボクシング連盟会長がたくさん出ていました。おそらくこれからも出てくるんだと思います。もちろん全て見たわけではありませんが、自分が見かけた山根元会長とそれに関して何か書いてみます。

 

山根元会長といえば「奈良判定」で一躍有名となった人物。分かりやすく「権力を振りかざす人」であり、テレビ的には「これぞ悪の権化」という形で非常にありがたい存在だった。

 

自分ももう少し若ければ、この分かりやすく悪い人に「いやあ悪いよねえ」と言うところなんだけど、残念ながらそこまで若くないので「どうせこの流れでそのうちバラエティに呼ぶんだろ」と思っていた。そして事実そうなっている。先読み自慢ではない。そりゃそうなる、というだけの話だ。

 

世の中は「分かりやすい」を求めている。それは「分かりやすいと分かった気になりやすい」からだ。山根元会長は分かりやすく悪い。悪いのは批判してよい。批判しても自分は悪くならない。だからワイドショーは分かりやすく叩く。もちろん叩かれて仕方ない部分はあったろう。しかし我々はその背景に何があるかを見ようとせずに「悪い」という。もううんざりだ。suchmosくらいうんざりだ。*1そりゃ紅白で「臭くて汚いライブハウスから来た」と言いたくもなる。

 

それはともかく、あれだけ怒りに怒りまくっていたマスコミが、今は山根元会長で笑いを取ろうとしている。最初に自分がバラエティで見た山根元会長は「あらびき団」だった。山根元会長に対して「奥歯ガタガタ言わせ節」でお馴染み(お馴染み?)のふーみんが一喝されて終わるという衝撃映像。これは腹抱えて笑った。フジのお笑い番組「連笑」では「笑わない人」として登場。実際一回も笑わなかった。ハリウッドザコシショウの怒涛の攻勢にも関わらず笑わなかったのは普通に凄い。ただの頑固ジジイなだけだろうが。

 

これに対して「マスコミは本当に節操がない。結局数字が取れればいいのかよ」という批判が出るのは、まあ仕方ないだろう。事実その通りだし。しかし自分はもはや「この批判が出てくるところまでワンセット」とすら思ってしまう。仕方ないよなあ、だって面白いんだもん。「山根元会長が悪い!」と真剣に思っていたのは、所詮ボクシング協会の中の人たちだけで、マスコミを含めた外側の人間は「他人事」なんだもん。

 

その「他人事」の括りの中で、それを最大限に茶化して楽しむのか、自分に都合のいい中途半端な正義と怒りで「自分の」溜飲を下げるのか、の違いだけでしかない。まあ溜飲下げると気持ちいいもんなあ。仕方ないよな。けどその「仕方なさ」は山根会長で笑っていることと同じくらいの価値しかないんだよなあ。

 

以前の自分なら「そっちのほうがしょうもないわ」と、正義ぶっている人間を下に見たんだろう。けどそれは、今述べたように「中途半端な正義と怒り」でしかないわけで、そんなもんやっぱり同類でしかない。だから下げることはしない。下げることはしないけど、等しく「しょうもない」とは思う。どっちもしょうもないんだよ。だったら山根元会長で笑っていたほうが、人生としては楽しい。そういう結論。

 

*1:suchmosの曲「STAY TUNE」の歌詞にそういうくだりがある