仁義なき戦い

AKBの総選挙、面白かったです。まあマジメに見ていたわけではないんだけど、ひとつアイドル史に残る事件が発生した。それは選挙で20位に入った須藤凛々花さんが唐突に結婚を発表したことである。


「恋愛禁止」を建前にしているAKBグループのアイドルが唐突に結婚を発表した、というだけでもそれなりにインパクトがある事件かもしれない。まあそれでも今となっては別に大した驚きがあるわけではないだろう。じゃあなぜここまで大騒ぎになるかというと、一つは「AKBグループがファンに投票をお願いする、つまりはファンから“お金”という信頼を注ぎ込んでもらって上位に食い込むというイベントにおいて、その注ぎ込んでもらった信頼を一瞬で裏切るかのような発表を物凄い掌返しを行った」ということ。


この件に関して思い出すのは、オールドハロプロファンにとっては忘れようとしても忘れることの出来ない「飯田圭織ファンクラブバスツアー事件」だろう。ファンクラブ限定のバスツアーが施行される前日に飯田ができちゃった結婚を発表。バスツアーに参加するくらいの猛者どもの心を完全にへし折るそのタイミングに加え、貧相すぎる食事に巨大迷路という酷過ぎる内容も相俟って、アイドル史において燦然と輝く地獄絵図として記憶されている。今回の所業もこれに近い。いや、それ以上の破壊力だ。


ではなぜこんなファンを皆殺しにするようなタイミングで結婚を発表することになったのか。どうやら週刊文春がスクープとして須藤の交際を掴んでいたらしい。文春砲としてスクープを飛ばされる前に自分で発表してしまったほうがいいと判断したのだろう。あまりに、あまりに自分勝手で浅はかな判断だ。そこにあるのは「保身」以外の何物でもない。彼女が守ろうとしたのは、AKBという組織でも、そして選挙のために金を注ぎ込んだファンでもなく、当然のように自分(とその相手)だけだった。500歩譲って交際していたことを許しても、このタイミングで発表することを許せるファンなんているのだろうか。無観客発表で唯一良かったことじゃないだろうか。


もし仮に、仮に彼女が交際していたこと、結婚することに多少の後ろめたさがファンに対してあったならば、絶対にここで発表しない。そして絶対にファンに謝らなければいけないんだよね。それが出来なかったのは根本的にこの選挙という制度及びファンを最初から舐めてかかってるとしか思えない。許されると思ってるんだよな。峯岸のときにも思ったけど。AKBという組織に支えられてきたのに、根本ではその組織をナメきっている。もし自分が彼女らのファンだったらやっぱり心が痛いと思うんだ。ファンじゃないからちっとも痛まないけど。


その対極にあったのが今回2位で卒業を発表した渡辺麻友だろう。今までAKBをノースキャンダルで支えてきた一人であり、今回の選挙でも巨大すぎるマネーに支えられた指原に太刀打ちできなかった悲劇の武将。勝っても負けてもここが自分の舞台になるはずだったものを色々とぶち壊された気持ちはそりゃ当人にしか分からないんだが、自分は今後ひそかに応援したいと思う。そんな気分にさせられますよね。あと大島優子が結婚発表に関してなんか言ってたみたいですけど、オマエも北島三郎最後の紅白で唐突に引退を発表してサブの花道に冷や水ぶっかけて今回の事件と大差ないことをしたのをこっちは忘れてないからな、と言いたい。


自分の応援しているアイドルの結婚も素直に祝えないのか、的な発言をしている人もいるんでしょうが、ただのバカですよね。結婚を恋愛を祝う祝わないのレベルではなく、信頼を裏切る行為をこれ以上ない形で行っていることが問題ですから。控えめに言って畜生なんですから。小出恵介の20倍くらい畜生ですよね。


大体こういう話題になると「アイドルにマジになってる奴キモい」と、事の本質をズラされて終わってしまうのだけど、そのマジになってる奴の気持ちを根こそぎぶち殺していくような行為は恋愛どうこう関係なしに非難されるべきものなのでは、と思ってしまう。アイドルが恋愛禁止を守れないのはもう仕方ないが、それにしてもファンに対して仁義も何もあったもんじゃないだろう。須藤がもしファンに襲われることがあっても、ちゃんと情状酌量はしてもらいたいものだ。