贅沢は敵だ

あのニュースで得する人損する人」の特番を録画して見たわけです。


普段は仕事の関係でどうあがいても見ることの出来ない時間の番組。そりゃまあ録画して見るしかないわけですが、通常の番組であれば「録画して見る」ような内容ではない(そもそも見たことがないので面白いかつまらないかもよく分からない)わけで、じゃあなんで今回録画してまで見たのか、といえば「笑点」とのコラボが気になったからだ。


笑点メンバーの私生活を取材しているということで、ちょっと見てみようという気になった。まあ実際見てみたところでそれほど驚きの情報があったわけではないが、それなりに面白く見ることが出来た。番組の後半では司会の桂歌丸笑点とのかかわりを紹介するVTRが流れ、円楽が涙するなど感動的な仕上がりになっていた。でも自分はその感動的な話に今一つ乗り切れない部分があった。


それはなぜかといえば「再現VTRに登場する役者があまりに似ていない」ことだった。


まずはこちらの画像を見ていただきたい。


病床に伏しているのが歌丸、見舞いに来たのが円楽(6代目・楽太郎)である。はっきり言おう。誰だこいつら。


歌丸は「細いじいさん」、円楽は「色黒」というオーダーだったのだろうか。そういう意味では間違っていない。が、歌丸は「ただのじいさん」だし、円楽は「恰幅のいい色黒のオッサン」である。まだ先代の円楽のほうが近い。けどこれは楽太郎のほうの円楽である。なんというか、このVTRを何の説明もなしに歌丸と円楽だと当てられる人はそうそういないのではないか。


最近は再現VTRの再現度がかなり高くなっている。「そっくり」とまではいかなくても、「雰囲気が近い」レベルまでは確実に寄せてくる。なもんで、あまり再現VTRそのものに違和感を持つ機会はないような気がしていた。このVTRを見るまでは。「似せよう」という意図はあるんだろうが、いかんせん発注ミスが過ぎる。再現VTRに出ているほうも「自分が歌丸で(円楽で)いいんだろうか」と思っていたんじゃないのか。


でも自分はこれを機に考えを改めなおすことにした。再現VTRはあくまで「再現」なのだから、あとは各々の頭の中で補完できればそれでいいじゃないか、と。歌丸という、円楽という記号として役者さんが動いてくれればあとはこっちでどうにかする。イマジネーションの問題である。最近我々はそこらへんの作業をサボっているんじゃないか。


下手に似せようとしているから、似ていなかったときに「似ていない」と思ってしまう。そうじゃない。ハナっから似ていないことを前提にして、そこにあるのが卑猥な形の大根だろうがちょっと品のいい馬だろうが、そこから歌丸と円楽を読み取らなければいけないんじゃないのか。


色々なものがリアルに近づいてきて、我々は確実に「見えていないものを見る」力を失った。それは再現VTRの世界でも同じである。石原さとみの再現VTRにアジアン隅田が出てきても、我々はそこに欲情するくらいの力を持たなければいけないのだ。


けど、やっぱり似てないにも程があったな今回は。