汚れちまった哀しみに

週刊少年マガジンで掲載された読み切りマンガ「SEKAI NO OWARI物語(前編)」を読みました。自分はなんだか哀しくなりました。


SEKAI NO OWARI」は今売れっ子のバンドです。バンドメンバー4人が共同生活をしているという点でも特異ですが、バンドの世界観もかなり特異です。簡単に言うと「ネバーエンディング中二病」です。新曲の「Dragon Night」は中2が語る「ファンタジーRPGの世界」です。自分が中2のときに「エロいRPGがあったら」というお題で同級生でワーキャー盛り上がっていましたが、その時にクラスメイトのKくんが「エロティカソード」という絶妙なダサネームを発案して一気に冷めた記憶があります。しかし「Dragon Night」の歌詞にこっそり「エロティカソード」を混ぜても違和感ありません。

ドラゴンナイト 今宵、僕たちは友達のように歌うだろう

ムーンライト スターリースカイ エロティカソード

今宵、僕たちは友達のように踊るんだ


とっても自然ですね。当時のKくんは(間違った意味の)中2病で、SEKAI NO OWARIも現在進行形中2病です。


自分は中2病を別に否定しませんし、大人になるにつれて「恥ずかしい」という感情に勝てなくなる中2病を30手前でキープできているのは、これはもう紛れもない才能であり、そして需要もあるのだから、何の臆面もなく堂々と貫けばいいわけです。ただ、いつかどこかで気づいたときの本人たちのダメージは計り知れません。だからこそ自分はこのバンドを密かに見続けたいと思っている。性格が悪いと思われても仕方ない。ファンキー加藤に対するドキドキと似たような感情であることも添えておきたい。


そんな注目すべきバンドがマンガになる。もはや少年でもなんでもないけど、これは読まなければならない。さすがに買うのは躊躇したけども、きっちり立ち読みしました。いい歳こいたオッサンがSEKAI NO OWARI見たさに立ち読みするというのもかなり哀しいのだけど、立ち読みした後にもっと自分を哀しくさせる事実があった。


その事実を説明する前に今回のマンガおよび自分がSEKAI NO OWARIに対して抱く「私的面白ポイント」を列挙しておきたい。

・マンガはボーカルのfukase深瀬慧)ではなく、ピアノのsaori藤崎彩織)目線で進む。いじめを受けていたsaoriの心の支えになったのがfukase。それはどうでもいいんだが(いいのか)、saoriがいじめられる感じはマンガで、しかもsaori目線で語られているにも関わらず「なんとなくわかる」ところ。


・それに伴ってSEKAI NO OWARIの一番深い闇はどう考えてもfukaseではなくsaori。このバンドの名前の由来に関わって「fukaseの壮絶な人生」みたいに語られることが多いが、そんなものどうでもよく(いいのか)、このバンドのドス黒い闇担当saoriが本体。fukaseは傀儡かもしれない。


・彼らの音楽の屋台骨を支えているのはfukaseの同級生であるところのNakajin。実は最重要人物のはずだが、キャラ立ちが弱いせいか、漫画でも割と出番があっさり。仕方ない。saoriが毒々しいから。


・まだ前半なので、DJ LOVEが一切出てこない。

とまあ、細かい部分は実際に読んでみて確かめてほしいのだけど、このマンガを読むだけで「こういう人たち」ってのがなんとなく伝わってくるので、伝記漫画としてはそこそこ成功していると思う。


さて、そんなマンガを読んだ自分を襲った哀しみとは何か。それは、「大した興味も持っていなかったはずなのに、このマンガに書かれているエピソード殆ど知っている」ことだった。自分でもびっくりした。


確かに彼らが特集された「SONGS」は見た。「情熱大陸」も見たかもしれない。別に熱心に追いかけていたわけではないし、完全に興味本位の接し方ではあったのだけど、いつの間にかほんのり詳しくなっていた。もちろんホンイキのファンからすれば全然詳しくはないと思うが、彼らの見どころを自分なりに説明出来てしまっている時点で既に自分も「OWARI」に近づいているのかもしれない。汚れちまったな。


そんなわけで後編も楽しみです。後編を読んでから自分も色々owariにしたい。