良かれと思っているのなら

探検バクモン」がちょっとした問題作。


「性をめぐる大冒険」と題されて2週にわたって放送された「探検バクモン」。最近は前後編がデフォルトになっているので、わざと1週寝かせておいて前後編とまとめて観ることにしている、という自分の視聴スタイルはどうでもいいんだが。性、といってもNHKですからもちろんエロが絡んでくる内容ではなく、いわゆる「セクシャルマイノリティ」と呼ばれる「LGBT」をテーマに取り上げた回。新宿二丁目を探検するというもの。


内容自体は至極マジメで、ところどころ考えさせられた。主に「セクシャルマイノリティの人々ですらちゃんと恋愛しているというのに自分ときたら……」ということはとりあえず白状しておこう。堅過ぎず、それでいてちゃんと視聴者に考えさせる内容であり、番組としては非常に出来がいいと自分は思ったわけです。


しかし気になる点がひとつありまして。それは使用されていたBGMである。


爆笑問題がゲイの専門誌の編集部へ訪問し、ゲイの編集長に太田が「田中はどう?」というふうに尋ねると「イヤだ」と断られたシーン。そこで田中は「フラれちゃったよ」という旨のコメントを残すわけだが、そこで流れた曲が槇原敬之の「もう恋なんてしない」のサビの部分だったのだ。思わず自分はここで吹き出してしまった。おいおい、と。


この文章を読んでくれる人ならばすぐさまピンと来るだろうが、マッキーといえばおクスリで捕まったときに「恋人の男性」と同居していた、という報道もあったことからも、LGBTのG(あるいはBかも知れないが)の方であることは割と知られている話だと思う。だからこそのここでの槇原敬之ということなんだろう。気持ちは分かる。しかし、ちょっと自分には不自然とに映ったわけです。


自分の上記の説明で的確に伝わったかは分からないが、ここでのマッキー曲の使用は「けっこう強引な流れ」だったのだ。なぜなら、田中はフラれこそしたものの、別にそもそもゲイの編集長と恋愛をしたいわけではないのだし、一応失恋の曲ではあるものの「もう恋なんてしない」というフレーズが田中に相応しいかと言えば、違うような気がするわけだ。はっきり言って他にもっと相応しい曲はあった。けどここでのマッキー曲。理由は前述のこと以外にあるまい。


いやこれが違和感なく流れていれば、特にマッキーだということを気にしなかったのかもしれない。けど違和感があったからこそ自分はひっかかったし吹き出してしまったわけだ。これを意図的と言わずしてどう処理しようか。同じように特に流す必要のないBGMでQUEENの「We will rock you」が流れたりした。もちろんこれもヴォーカルのフレディが新宿二丁目にも通っていた両性愛者(いわゆるB)であることからの引用なのだろう。


これらの効果というのは、「偉大なミュージシャンたちもセクシャルマイノリティである」というメッセージを意図したことなのかもしれないが、少なくとも槇原敬之はゲイを公言しているわけでもない。そしてやや強引に差し込まれたBGMは「この人がゲイだから流してますよ」という、暴露めいた印象すら与える。番組の作りはもちろん暴露による差別を意図した内容ではなかったので誤解ではあると思うんだが、あまり上手なやり方ではないよなあ。というか下手すぎ。


だって現に自分はこれ見て笑ってしまったんだもん。マジメに見てたのに。捉え方によっては、というよりほぼ間違いなく「割とふざけてやっているようにしか思えない」んだよな。誤解ではあるんだけど、こんなに誤解を招きやすいやり方でやっちゃいかんと思うわけで。このBGMを決めた人たちは「良かれ」と思ったのかもしれないが、これは完全に逆効果だったんじゃないのだろうか。「分かる人には分かる」というやり方は、裏にある意図を誤解される。


番組そのものが悪くなかっただけに、真正面から批判しにくいところではあるんだけど、なんかこういうセンスのない部分を垣間見せられると「本当にお前らがマジメに考えてるの?」と言いたくなってしまう。実に「惜しい」と言えよう。