そりゃそうだろね

さや侍
実は先週見ようかどうか迷った挙句見なかったのですが、ひょんなことから映画のタダ券をもらったので、これ幸いとばかりに見てきました。以下ネタバレあるようなないような。これから先見る予定のある方だけお気をつけてください。


点数で言えば60点くらいです。前作「しんぼる」を71点くらいと過去に書いたわけですが、点数としてはそれより低くなります。ただこれは「お笑い芸人松本人志が作るお笑いの映画を見に行った」という前提での点数であり、「ふつうの映画を見に行った」んであれば、もうちょっと評価が上がるのかもしれません。いやまあ普通の映画としても大したことはないと思うんですが。


たぶん宣伝の方法が悪いというか、こちらが期待しているものが素直に出てこないのが悪いですよね。野見隆明が笑わせようと必死になる姿やストーリーだけ見れば、そりゃ松本人志がこちらを笑わせにかかってると思うし、そういう姿勢で見に行くわけで。しかし面白くない。劇中でも「面白くない」という描かれ方をしていますが、途中から劇中では「面白くなっていく」描写になります。けどこっちはずっと面白くないまま。で、最後の最後にどうすんのよと思ったら笑わせもせずに切腹して死ぬわけで。おいおい、と思う。それは「プライドの問題」として片づけられるわけだが、そんなことよりしっかり笑わせてくれ。


ただまあこれは自分の感想であって、この映画が「笑わせる」ことを目的に作っていないのであれば正しいのかもしれない。月曜の昼間だったゆえに割と年配の方も多く、最後では鼻水をすする音も聞こえた。それなりに成功している。


しかし自分にはどうしても松本監督が「笑わせにかかってはいないですよー、あくまでこういうストーリーを作っているんですよー」という言い訳のもと、劇中での笑いがスベってもいいように保険をかけているとしか思えないわけで。どうも自分には「マジメに作ってる割には笑わせようとしてるじゃないか」という部分が見えた。


ひとつは托鉢僧こと竹原ピストル(クレジットでは本名の竹原和生)が、さや侍から受け取った遺書を娘たえ(熊田聖亜)に読み上げるところ。読み上げる途中で急に竹原がその遺書を歌い上げるようになる。これがそのままエンディング曲になるわけだけど、自分にはこれがどうしても「コントの最後に急に無駄に歌い上げるオチ」にしか見えなかった。あれって歌で感動する場面か?何急に歌ってるんだよ、と思えてならない。逆にこの「歌いあげオチ」のために2時間延々と引っ張ったなら、それは「大日本人」「しんぼる」のときと同じことをやってるだけなんだけど。


そしてもうひとつはスタッフロールのクレジット。劇中で野見が鼻からうどんをすする芸を披露するのだが、それに関してスタッフロールで「うどん鼻すすり指導 ほっしゃん。」と流れる。この映画最大の爆笑。そりゃそうだろね、と。でもいちいちクレジットするような話か?やっぱりここで笑わせようとしてないか、と思った。


結局笑わせようとはしてないフリをしながら笑わせようとしてたり、あるいは笑わせようとしているのを誤魔化してストーリー化したりと、なんかどっちにふれてもイマイチ満足のいくような出来ではない気がして。それこそ「松本人志監督」であることにさほど興味も関心もないフラットな心持でこの映画を見れる人が、一番「それなりに」楽しめるんじゃないかという気がする。前2作のように完全に松本マニア向けではなくなったが、どこまでいっても松本人志のイメージがつきまとう以上は、この映画をフラットな気持ちで正当に評価しようなんて無理。


個人的な結論を言えば、やっぱり2時間かけて見るようなもんじゃないわな。前2作と違い、この出来なら地上波放送もありうるので、どうしても見たいならば地上波を待つかレンタルで充分。