原点回帰

チェイス国税調査官
江口洋介主演のNHKのドラマ。


今いちばん面白いドラマをつくるのはどの局か、と問われれば自分は間違いなく「NHK」と答えるだろう。なぜならドラマに費やす「時間」をかけることができるから。「視聴率」「お金」という、いまの民放にはネックでしかないものもあまり気にする必要はないのだが、最近のNHKは両者とも意識しがちなので当てはまらないと思う。それより何よりやはりドラマの制作に時間をかけることが出来るのは強みである。「1クール3ヶ月」という縛りがないことが大きい。


今回「チェイス」が放送されている土曜21時の枠はそれが顕著で、ここ5年の間に「ハゲタカ」「フルスイング」「ジャッジ」「リミット〜刑事の現場」など、数々の名作を生んでいる。全話が5〜6話という短さもいい。もはや民放もこのスタイルを踏襲する時期に来ているのではないだろうか。


チェイス」は江口演じる国税調査官の春馬と、「カリブ海の手品師」と呼ばれる脱税の天才村雲(ARATA)の攻防を描いた作品。ジャンルとしては「公務員」「金融」モノである。「ハゲタカ」「監査法人」あたりの流れを汲んだ作品である。んでまあ、これが期待を裏切らない面白さ。ARATAがいい。無駄に怪しくていい。佐藤二朗はいつも通り胡散臭くていい。


自分はここらへんの「公務員」モノや「金融」モノにハズレがないと思っており、今回もかなり楽しみにしていた。裏の「のだめ」とどちらを録画して見るか迷った挙句、「のだめの映画後編は映画館で見ないから」という理由で、のだめを諦めこちらを録画。結果的に正解だ。江口洋介が好き、という理由もあるんだが、それより何より「多江さんと麻生久美子の共演」という、自分にはかなり見逃せない要素が録画決断の後押しとなった。


木村多江麻生久美子も自分の「好きな顔」の女優である。二人とももはや既婚ではあるんだが、この二人の共通点として「押し付けがましくない色っぽさがある」というところ。奥ゆかしいエロスとでも言うのか。とにかく、たまらんのです。初回の麻生久美子も無駄にエロかった。


しかし何より多江さん。江口の妻役だったのだが、仕事一筋で旅行にもいけない可哀相な立場の妻。でもいつも笑顔で旦那のことを思って明るく振舞うなんて出来た妻。こんな嫁さんいたら仕事なんかせずに真っ直ぐ家に帰るよ!とはたぶんテレビの前で自分含めた23人くらいは呟いていたと思う。


だが、あっさり死んだ。


いや正確に言えば「死んだと推察される」。江口と一緒に行くはずだった海外旅行に一人だけ行ったわけだが、その乗った飛行機が墜落するという事態に。よくよく考えれば死亡フラグはドラマの随所に立っていたわけだが、「多江さん美しいなー、こんな嫁さんほしいわー」と完全に骨抜きになっていた自分は、そのフラグに全く気付くことなく急な死亡を見届けたわけです。


そう、最近ではすっかりアカデミー賞女優になってしまったから忘れていたけど、本来の多江さんというのは「不幸を一身に纏う女」だったのだ。そりゃ飛行機も墜落する。同じ枠で多江さん主演の「上海タイフーン」やってたから油断していたということもある。しかし多江さんは不幸でなんぼ、死んでなんぼの女優なのだ。初回でいきなりフェードアウト(もちろん死んでおらず再登場の可能性がなくはないが)してしまうのは悲しいが、むしろ多江さん的にはパーフェクトと言ってしまおう。


多江さんは死んだが次回以降も見逃せない「チェイス」。ARATAの髪型も見逃せない。ちなみに「新参者」はあれだけ「面白そう」と言っていたのに、初回を見逃してしまいました!とりあえず2話以降頑張ります。