世にも奇妙な物語09秋

少々遅ればせながら、いつものです。オチなし。

検索する女

井上真央主演。原作及び演出吉田直樹。携帯サイトで便利すぎる検索ページを見つけた主人公(井上)。何事につけても検索をかけて情報を得ることで役立てていた。ある日の合コンでも、名前を聞く度に検索をして、その相手が何者であり、そしてどんな状態なのかを探ることで「上玉」を探していた。目の前に座った男「三宅亮」は検索によると御曹司であるが、同姓同名の男は殺人犯であるという。怖くなった主人公は合コンから抜け出すも、三宅に付きまとわれパニックに。自宅まで帰るも、三宅が同じマンションに現れ、そして凶器をちらつかせたので傘で突き殺すも、逮捕されたのは主人公。というのも、警官たちも同じ検索サイトで検索サイトで「犯人」として検索されているのであった。


正直分かりにくく、そして謎の多い作品である。検索サイトそのものが「奇妙」なものであることは、主人公が犯人の名前で検索していたページが、いつのまにか主人公が犯人としてすり替わっていたこと辺りから推測はできる。しかし漠然と見ている限りでは「単に検索に頼っている現代人が情報に翻弄される」ようにのみ見えるわけで、サイトそのものの不思議さにあまり気が向かないのでは、と思える。もちろん作り手としてはそこらへんの皮肉を含めたかったんだろうが、テーマを盛り込みすぎて話が煩雑になっている気がする。


あと、三宅亮の存在そのものが謎。あの結末では本物の殺人犯なのか、はたまた何も知らない人だったのかは不明。どっちにしても「怪しすぎる」の一点で犯罪者並の扱いをされても文句は言えないわな、という気はした。短時間に含みをもたせ過ぎて結局どっちつかずという、悪い意味でのお手本のような作品だったと個人的に。

自殺者リサイクル法

生田斗真主演。300万円の借金苦から自殺しようとした主人公(生田)は、政府の裏組織によって捕えられ「自殺者リサイクル法」の名のもとに、ぞんざいに命を扱われる命令を複数こなすようになる。そのうち自分の命が惜しくなった主人公は脱走を図るも、脱走を図った先が建物の上階だったため、また飛び降り自殺をするような形になってしまい再び捉えられる。そしてまた同じように自殺者リサイクル法の枠内に組み込まれるハメに……


中身は滑稽でハチャメチャで突っ込みどころ満載ではあったけども、オチがシニカルでマル。脱走からの飛び降りは自殺じゃないんだけど、という点はともかく「一度捨てた命はどう使おうと政府の勝手」というのはなかなかの帝愛イズム(「カイジ」)に溢れていて面白い。年間3万人以上の自殺者が出る日本において、徒に自殺してしまう人がいてもおかしくない。だからこそ生かされた命を「惜しい」と思う人はいるかもしれないが、そこで救いの手を差し伸べないあたりにこの脚本を書いた人間の底意地の悪さが垣間見える。


あと、「サイコロの色が出た服の人は臓器提供者になってもらう」というくだり、さきの衆院選において北海道比例ブロックで立候補していた政党「新党本質」のスローガン「どうせ自殺するなら臓器提供しようよ!」と同じで笑ってしまった。新党本質が本当に本質を突いているのか、それともこのスローガンがドラマで茶化されるレベルなのかは言及しないでおきたい。

理想のスキヤキ

伊藤淳史主演。原作泉昌之。彼女の実家へ結婚の挨拶に訪れた主人公(伊藤)。そこで出されたのはスキヤキだが、人一倍スキヤキに対してこだわりを持つ主人公は、彼女の一家の無軌道なスキヤキの食べ方に我慢がならない。しかしシメとして出された謎の物体に困惑。数年後、主人公の「理想のスキヤキ」には、この謎の物体をシメとして出された温かな家庭があった。


この不条理さ、まさに「世にも」。途中食に対して異常なこだわりを見せる伊藤の姿も素晴らしい。原作が食べ物マンガを多数手掛けている泉昌之、とくに久住昌之だと知って納得の出来映えであります。文句なしの面白さ。あと自分はつくづく岩佐真悠子という女優が好きなんだなあと感じました。タイプじゃあないんですけど。

呪い裁判

釈由美子主演。呪いで人を殺したという犯人が被告人となっている、通称「呪い裁判」の裁判員に選ばれた主人公(釈)。呪いの存在に疑問を持つ裁判員たちだったが、裁判に関わる人が次々と呪いの餌食になっていく様子を見て判決は「無罪」になる。しかし同時期に体調を悪くした息子に呪いがかけられたのではないかと疑う主人公は容疑者の元を訪れるが「呪いは別の人間がかけたのであり、自分はかけていない」と主張。その呪いをかけていたのは主人公の旦那と不倫関係にあった息子の幼稚園の保母であり、主人公は彼女に呪いを「かける」立場へと変わるのであった。


今回のホラー担当であり、駄作。よくもまあこんなものを放送したな、と。いつのまに「呪い」の存在をあっさり認めちゃっているわけ?そこが焦点じゃなかったのかい?だからこそ主人公は呪いに懐疑的な「元弁護士志望」の人だったんじゃないのかい?それが「子供が原因不明の熱でうなされているから」という程度であっさり呪い信じてるし、元容疑者のところへ乗り込んでいけちゃうのかい?そっちのほうがよっぽど呪いより気味が悪いわ。で、主人公がそうしたように呪いがそんなに簡単にかけられるんなら、別に裁判起こした人じゃなくても簡単に呪い殺せるんじゃないのかい、と。


「呪いで人が死ぬ」という命題は使い古しであるわけだが、それを新しさを出そうとして無理やり流行りの裁判員制度に絡めさせてみましたよー、というだけのもの。しかも上手く絡んですらいないという哀しさ。もうね、月並みな言い方ですが、こんな作品を恥ずかしげもなく公開してしまう奴らが呪われてしまえと思います。

夢の検閲官

石坂浩二主演。ある女性(紺野まひる)の安眠をもたらすために夢を検閲するのが仕事の主人公(石坂)。あと1週間でその仕事も退官するわけだが、悩みの種は女性の息子が自殺したことで、彼女に安眠がもたらされないこと。そのためには自殺した息子が夢に出てくるのが一番なのだが、安眠法によって自殺した子供は半年間夢に出てはいけないと決められていた。堅物で融通の利かない主人公だったが、退官の日に夢の中の息子に「母親は君を愛していた」ということを伝え、そして夢に出る許可を与える。


今回の感動担当。まあ可も不可もない作品ですわね。深くもなく浅くもない、「丁度イイ話」です。2丁拳銃です。なんというか、シナリオライター教室のお手本となるような作品とでも言うのでしょうか。いやシナリオライター教室に通ったことないですけど。作品の出来云々よりも、紺野まひるがいい感じにくたびれて色っぽくなってきたことのほうが収穫です。やはり人妻になったからでしょうか。



全体で見れば「理想のスキヤキ」が抜群の出来で、あとは出来不出来に多少の差こそあれ、あまり変わり映えしない印象です。ここ数回調子が良かっただけに、今回は一旦小休止くらいな感じでよろしいのではないでしょうか。また来年春に期待です。