・HERO
番組ミシュランに
「ああ、映画館に観に行くまでもない作品だったな」と確認するために見るべきでしょう。
と書きましたが、事実その通りな作品だったことに安堵しました。興行収入81.5億に見合う面白さの作品では間違いなくないでしょう。
全体を見回したときに思うのが「とにかく豪華。キャストが」ということ。もちろん映画なのだから映画館に足を運ばせるためにキャストは名前の知れた人たちがいるのが望ましいのだけど、もとよりこのドラマはキムタクが主演で脇を固める人たちが豪華な群像劇だったわけで、映画化にあたってキャストを増強する必要はあまり感じられないほどである。しかし映画はこのもとより豪華なキャストに加えてさらに豪華。松本幸四郎、タモリ、香川照之、石橋蓮司、国仲涼子、そしてイ・ビョンホン。チョイ役で古田新太やMEGUMI、岸部一徳なんかも出てる。
有名どころだけでもこれだけ名前が出るし、このレベルでなくても日本のドラマを見ていれば普通に名前が出てくるキャストが多数出演。名前を知らないキャストのほうが少ないのではないだろうか、というくらいの豪華さ。正直、なかなかこんなキャストお目にかかれない。が、そこばかりが目に付いてドラマの内容よりお腹一杯になる。「これが連ドラなら（他のギャラの安いであろう）誰がこの配置にいたんだろう」と考えてしまう。もっと言えば金のかけ方が露骨。
ただ、内容は良くも悪くも連ドラの「HERO」そのものではある。だから酷評するほどつまらないわけでもない。ドラマの筋立てだけはよく出来ている。但しそれは「1時間のドラマ」の場合なら問題ないが、2時間の映画（放送では2時間半）になると、途端にダルくなる。簡単に言えば映画にするべきのほどでもなく、2時間の鑑賞に耐えるにはキツい。
これはおそらく「HERO」という物語のフォーマットが長時間に向いていないのだと思う。細かい矛盾点を見つけて指摘し物語が鮮やかにひっくり返るという分かりやすい起承転結がある大筋に群像劇や恋愛を上手く絡めたのが「HERO」であり、大筋自体が単純であればあるほど、「どんな結末が待っているんだろう」という期待感が増す長時間には向かない。無駄に期待感が上がるだけ、「なんだ、それだけかよ」となるからだ。
あれだけ長く（それこそ無駄に韓国くんだりまで行った）証拠をみつけるべくやったのに、最後の部分で「それだけの矛盾で、しかも最後まで追及せんのかいな」という肩透かしを食らい、しかも最後に誰もが期待していたキムタクと松たか子のキスシーンを置くことで「誤魔化される」（という表現がぴったり）ように終わってしまう。確かにこの映画の重要な枝葉のひとつではあるが、逃げたようにも見える。
だから「映画」としては失敗だろうけど、「連ドラ」（しかも２話分）ならもっと面白かったんじゃないかと。
そもそも自分は連ドラの映画化に否定的である。フジが「踊る大捜査線」の大ヒットにより、ドラマ→映画というテレビ局ウッハウハのフォーマットを会得してしまったために、フジに限らずどのテレビ局も同じようなことをやっているが、概してどの映画も「それは自局でスペシャルで放送しておけよ」という程度の出来でしかない。ということをテレビ放映で確認する。
連ドラが映画になって豪華になるのは「使える金」だけであり、そこに連ドラとは違った映画ならではの面白さがありゃあいいんだけど、大抵は無い。まあそれでも豪華になったぶんだけ面白さに見合っていればまだ「好きな人は見ればいいじゃん」になるけど、今回の「HERO」のように、映画（というか長時間）になることで本来の面白さを削ぐようなことになってしまっては本当に何の意味もない。
たとえつまらなくたって、最低限「映画にする意味」があるのならまだマシだ。松本人志監督の「大日本人」は賛否両論あったものの、個人的にはあの作品を「映画にする意味」（正確に言えば「映画館で見る意味）が自分には見えたので良かった。もちろん松本本人の意識するところに沿っているかどうかは不明だが。
しかし今回の「HERO」はどこにも「映画にする意味」が見当たらない。せいぜい「テレビ局が儲かる」くらいのもんだろうか。最悪「儲かる」だって「観客をきっちり楽しませる」くらいの保証がついていればいいんだけど、この映画ではなく「ドラマ」がその基準を高い位置で満たしちゃっているため、それはやはり「映画にする意味」ではないように感じる。
ちなみに裏番組で放送されていた「只野仁」の新シリーズには放送時間の都合上おっぱいが登場しないらしいが、劇場版では登場する。つまり劇場版の「只野仁」は「大きいスクリーンで只野のカラミシーンが見れる」という「映画にする意味」がある。まあこれは冗談にしても、アクションシーンがあるから映画には向いている。つまりはそういうことなんじゃないかと思うんだけど。
