クイズクソ野郎

高校生クイズ2008」を見る。100点満点中の5点。怒りを覚える酷さ。


今年の高校生クイズのテーマは「知力」のようで、しきりに「最強頭脳日本一」を決めると唱えていた。自分の認識では高校生クイズとは「高校生のクイズ王を決める大会」であり、「最強頭脳日本一」を決める大会ではない。最強頭脳、つまり知力を競うのは「受験」というフィールドで行うべきものであり、決してクイズ王を決める大会でするべきものではないはずなのだが、誰がこんなくだらない放送にしてしまったのだろうか。


自分もクイズ好きですから、クイズ番組で難問が出るのは決して悪いことではないと思っている。難問を解くことがクイズマニアにとっての優越感になることを知っているからだ。しかし、それはクイズマニアに向けたクイズ番組でやるべきことであり、「高校生クイズ」でやるべきことではない。


昨年も同じことを書いたが、「高校生クイズ」は単に「クイズの高校日本一」を決める大会ではないと思っている。ましてや「最強頭脳日本一」を決める大会ではもっとない。高校生クイズの醍醐味はクイズをベースとしつつも出場したチームメンバー3人と力をあわせ知恵や体力を振り絞って、時には運に翻弄されながらも、与えられた様々な形のクイズを乗り越えることで描かれる人間関係、端的に言えば「青春」みたいなものがメインであると思っている。いわば多くの高校生にとっての思い出作りになればいいのだ。


もちろんクイズ好きが満たされる必要もあるのだが、そうでない人間も参加できる(参加して楽しい)からこそ高校生クイズのよさがあるのではないか。最初から実力偏差値主義であれば、出る前から結果が見えているのであれば誰も好き好んで参加しないだろう。今回の知力偏重の放送を見て、「来年参加してみよう」とそこそこの偏差値の高校生は思えるだろうか?


そして高校生クイズは全出場者が主役だ。地方予選の1回戦で敗退した出場者から、決勝に残った2チームまで全てが主役。その扱いに差異があってはいけない。しかし今回の高校生クイズは明らかに「主役となる人たち」にばかりスポットが当たっていた。優勝候補と目された偏差値の高い高校の生徒である。そりゃ今回の方式でいけば偏差値が高いこと(あるいは番組中ではあまり触れられないが、クイズ研究会を擁していること)が絶対的に有利な条件である。注目するのも分からないではない。


しかし、かといっていわゆる高偏差値校ではない地方予選を突破した高校があたかも噛ませ犬のような「その他大勢」の扱いになるのは絶対におかしい。彼らだって立派に予選を突破した紛れもない「主役」なのである。にも関わらず、高偏差値の高校ばかりカメラを向けて、その他の地方の高校が殆ど映らないというのはどういうことなのだろうか。そりゃ50チームもあれば一回も映らない高校はある。それは仕方ない。だが、今回のようなあからさまな扱いの差というのは許しがたい。「その他大勢」となった40数チームをあまりにバカにしてないか。こんなものを見せられたら「来年出てみよう」なんで少なくとも自分は絶対に思わない。


ちなみに北海道予選も酷かった。いくら五輪時期だったとはいえ、オリエンタルラジオラルフ鈴木も北海道に来なかったというのはどういうことか。地方予選にだってわざわざ遠路はるばる出場しに来る高校生だっている。そんな彼らを名前もロクに知らない代理司会の若手アナウンサーに任せるという神経が分からない。自分が高校生の頃はまだ福澤アナだったが、彼が司会のステージに出てくるだけでボルテージは上がったし、福澤アナはそのボルテージに負けないくらいの司会っぷりを見せ付けてくれた。あっさりと敗退はしたが、そのステージが見れただけでも満足したもんである。


司会やメインパーソナリティが不在で代理の人間にクイズを出題されたって、何の面白みがあるというのか。わざわざ遠いところから予選に出ようなんて誰も思わなくなる。地方予選が「ただの予選会」ではなく、予選会というひとつのイベントだということを日テレ側は理解しているのかと真剣に首を傾げたくなる。


クイズという娯楽はそのハマり具合からマニアの嗜みであることは否定しない。しかし「高校生クイズ」というのはマニアの嗜みであるクイズを高校生全般が参加できるような青春の一大スペクタクルに変換したものであり、一部のマニアだけが楽しめればいいものではないのだ。参加した全高校生が楽しめてこその高校生クイズ


しかし今回は明らかに高偏差値の人間のみが楽しめて、その他の高校生は完全に置いてきぼりを食った。参加していた一部の高校生にはめっちゃ楽しかったと思う。そしてその彼らは純粋にクイズが好きな(はずの)高校生であり、彼らに罪はない。しかし彼らのみを楽しませることしか出来なかった今回の高校生クイズのスタッフには大きな罪がある。


「今年はたまたま知力偏重の大会だった。そういう年もある」。好意的に理解すればこうなる。しかし自分は昨年の「ラサールVS浦和」という構図ばかりピックアップしたという流れからも、現在のスタッフが高校生クイズのあり方に関して何か大きな勘違いをしているのではないかという疑念が頭から離れない。知力偏重が決して悪いこととは言えない。知力を純粋に評価してあげるべき場所も必要だ(もっとも自分はそれが「受験」なので、クイズにまで持ち込む必要はないと思うけど)。ただ、彼らばかりを主役扱いにするというやり方はどこをどう頑張っても褒めることが出来ない。


中身に関しても触れておく。ひとつ思ったのは、「88星座を交互に答えなさい」という問題に混じって「Hey! Say! JUMPのメンバーを交互に答えなさい」とか「昨年日本一になった試合の中日のスタメンオーダーを交互に答えなさい」とかいう類の問題が出題されたら、評価も違ったような気がする。これらもすんなり答えたら「やっぱり彼らは凄い」と言われてたのかも。前畑秀子の2着なんて完全にクイズのための知識でしかないんだから、自分は素直に感心は出来ない。