抱かれたい

「全国一斉!日本人テスト」を録画してまで見た。


フジテレビが19時台に並べているクイズ番組(これを「ベルトクイズF&F」と呼ぶんだそうな。なんだそれ。語源となった「ベルトクイズQ&Q」(TBS)に謝れと言いたい)のひとつで木曜に放送中。クイズ好きの自分ですらクイズ番組が氾濫していてげっそりということはここでも何度も書いているし、事実視聴者だってそう思ってるだろう。だもんで特に録画してまで見る必要はない。


にも関わらず録画してまで見たかったのは、野沢直子が「今一番抱かれたい男はジョイマンの高木」という発言をしたというのがテレビジョンに番組情報として掲載されていたからである。自分はこの一言が確かめたいがために番組を録画した。そして確認した結果、たしかに発言していた。


ジョイマンはいわゆる「レッドカーペット芸人」(「爆笑レッドカーペット」によって知名度が上がった芸人)の一組であり、大きく開いた胸元から胸毛が覗くボケの高木が繰り広げる意味不明のラップ(代表作は「2・3本 イ・ビョンホン」だろうか。韓国人の名前が多いと思う。「ウォンビン ビール瓶」とか)が面白い。


かの高木は五厘刈りに黒縁のメガネ、そして大きく開いた胸元から覗く胸毛とお世辞にも「かっこいい」芸人ではない。しかしそれが抜群に面白い。芸人としては面白くて大正解であり、「抱かれたい」というのは「絶賛」のいち方便である。自分も同性に対してですら絶賛を惜しまないときは「抱かれたい」と使う。だからいくら高木に対して「抱かれたい」と言ってもそれは本気ではないことは分かりきっているのだけども、高木に対して「抱かれたい」という言葉を何のてらいもなく言うことの出来る野沢直子はやっぱり天才なのだとしみじみ思う。


野沢直子が日本のテレビから姿を消して今年で17年(無論毎年出稼ぎに帰ってくるので姿は消しちゃいないのだが)。野沢直子が姿を消して以降も女芸人は多数登場したが、未だに野沢直子を越える女芸人は登場していないと思う。しかも、ピークの野沢直子に勝てないのではなく、今現在の野沢直子(45)に勝てないのだ。


自分が物心ついたときはもう野沢直子は第一線で活躍しており、そして姿を消す直前だったのだが、それでもなお野沢直子の破天荒さは強烈なイメージでもって残っており、さらにはそのイメージは褪せることなくしかも毎年帰ってくるたびに面白さを更新して帰っていく。これだけ毎年帰ってきては色んな番組に出てくればさすがに衰えも見せそうなもんだが、まだまだ現役。これが恐ろしい。


未だに野沢直子吉本興業所属である。彼女が渡米のため退社しようとしたけども吉本が「給料を払うから年に一度は日本に帰ってきてテレビに出て欲しい」という条件でもって引き止めたのは有名な話だ(現に今でもそれが続いていることも驚きではある)。そしてその判断が間違いではなかったことを自分はしみじみと感じるわけである。


今活躍している芸人を見渡しても、ネタは面白くても存在そのものが面白いという芸人は殆ど存在しない。女芸人ならば言わずもがなだ。人間は幼少時に記憶したものが後々まで影響するということを差し引いても、自分の中で野沢直子を越える女芸人は今後も存在しないだろうと断言出来る。テレビがつまらないだとか飽きただとか言ってる族は、四の五の言わずに野沢直子で笑っておけと言いたい。


自分も野沢直子に「抱かれたい」と言われる人間になりたい。ジョイマン高木のようになりたいわけではない。