ヒステリックブルー

コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」を見る。


感想を先に述べておくと、非常に完成度の高いドラマでした。「医療モノ」+「群像モノ」はフジの十八番であり、「救命病棟24時」で基礎を築き「医龍」で発展させたノウハウをこのドラマは見事に継承している。スピード感溢れる展開といい、このジャンルだと他局ではもう太刀打ちできないだろう。ドラマ全体としてもそうだが、脚本を手掛けているのが「救命病棟24時」の第2シリーズや「医龍」シリーズを手掛けた林宏司なので抜かりはない。


ドラマの中身も新垣結衣戸田恵梨香浅利陽介の3人にそれぞれのストーリーを与えつつも話が進行していく見事な展開であるが、それより何よりこのドラマが素晴らしいのは「主演の山下智久にあまり台詞を与えていないこと」だろう。


このドラマが始まる前の大きな心配事は「軽薄な演技しかしっくりこない山下が、医者の役をどうこなすか」だった。山下の演技次第でこのドラマの評価が決まると言ってもいいくらいだ。そんな心配をこのドラマの制作陣は「あまり喋らせない」という大技でもって難なくクリアしてしまった。もっとも「主演が神懸り的な技術を持った寡黙な男」というのは「救命病棟」の江口洋介しかり「医龍」の坂口憲二しかりと前例を踏襲しているに過ぎないわけで、特別褒められたことではない。前者の二人も下手ではないがワンパターンな演技をしがちな役者であるから、軽薄な演技しかしっくりこない山下も同じように扱っただけなのかもしれない。


ただ江口にしろ坂口にしろ、背が高いのであまり喋らなくても相応の威圧感がカバーしてくれた部分が大きい。山下の場合はこの威圧感に欠けるので髪の毛を伸ばすことでなんとなく誤魔化しているけども、誤魔化しきれていないのは愛嬌だろう。ま、成長を描くドラマなので最初からスーパードクター然とされていても困るからいいんだろうけど。


その代わり、さすがジャニーズとでもいうべきか走るシーンだけは抜群にかっこいい。ドクターヘリに乗り込むときにヘリコプターまで走るシーンがあったが、このシーンのかっこよさだけでも充分に主演の意味がある。というかこのシーンのためだけに主演にしたんじゃないか、つうくらい。セリフの量といい走るシーンのかっこよさといい、このドラマのスタッフは山下の上手な使い方をなぜか熟知している。


山下とは逆に主演群では一番地味な浅利陽介のセリフはやたら多かった。お調子者だという要素を加味しても相当に喋っている。演技力のなさを喋らないことで誤魔化した山下と対照的に、子役上がりで一番演技が達者な浅利にガンガン喋らせてドラマのテンポを軽妙にする役割を任されている気がした。そう考えると演技力とセリフの量が比例しているような気すらする。一本調子のガッキーはあまり喋らせず、戸田恵梨香はそれなりに。比嘉愛未に関しては事務的なセリフが多かったので不明。


あまり貶すところのないドラマではあったが、ひとつだけ難点があるとすれば脇の役者の顔ぶれに新鮮味がない。もちろん上手い役者を揃えると所詮は順列組み合わせの世界でしかないのは心得てはいるけども、それにしてももうちょっと何かあるだろうという感じ。群像ドラマは今まであまり目立たなかった役者にスポットが当たるところにも面白さがあるのに、これでは大して面白みはない。


面白かったのでもちろん継続視聴は決定なのだけども、初回の数字が21.2%とは大きく出たもんだ。今後は15〜17%くらいで推移するんじゃなかろか。て、これまんま「医龍2」の推移をあてはめただけなんですがね。なにせ「医龍2」も初回2時間SPで21.0%叩き出しましたから。結局同じになるんでは、と踏んでます。


最後に、小児糖尿病で入院し右腕切断になった患者を演じていた川島海荷のふてくされ顔は相変わらず天下一品だと思う。そういや「医龍2」にも出てたな、川島。なんかこう書いてたらこのドラマが「医龍」なんじゃないかと思えてきた。それはそれで面白いからいいんだけどさ。